形状設計
形状設計は、製品が果たすべき機能・性能を満たす外形・寸法・幾何特性を定義し、製造・組立・検査まで見据えて形状を合理化する工学的プロセスである。使用環境、荷重条件、材料特性、加工方法、測定可能性を同時に満たす必要があり、機能要求を基準とした寸法体系と公差付与、特徴形状(リブ・ボス・フィレット等)の設計、さらに品質・コスト・納期の最適化を統合的に行う点が特徴である。設計記号や図示法は国際規格に準拠し、3Dモデルと図面を整合させてデータの一貫性を担保することが重要である。
目的と位置づけ
形状設計の目的は、機能の実現と製造容易性の両立である。力学的性能(剛性・強度・振動)、熱的性能(熱膨張・放熱)、流体抵抗、耐久性、保守性、意匠・触感などの要求を、加工制約とコストの範囲で満足させる。上流の仕様策定と下流の生産技術・品質保証の橋渡しを担い、プロダクトの価値を直接規定する中核工程である。
基本概念
寸法、公差、幾何特性(平面度、真円度、位置度、輪郭度など)を体系的に定義する。基準(データム)を明確化し、寸法チェーンを見える化することで、組立後の機能寸法が所定公差内に収まるよう配分する。規格は JIS と ISO の GPS(幾何製品仕様)体系に依拠し、記号・指示法を厳密に運用する。
GD&Tの要点
- 機能基準の設定:データムを機能面・取付面から選定
- 幾何公差の適用:形状・姿勢・位置・振れの区別を厳守
- 公差域の形状:円筒・平行六面体・ゾーンの意味を把握
- 修飾子:MMC/LMC/投影公差/自由状態の使い分け
プロセスとワークフロー
要件定義→概念設計→レイアウト→詳細設計→試作→検証→量産移管の順で進む。各段階で設計審査を行い、基準系・臨界寸法・組立順序・測定方法を合意形成する。3Dと2Dの差異は早期に解消し、管理番号とリビジョンで変更履歴を追跡する。
公差設計と配分
機能寸法に対し、Worst Case、RSS、統計的公差などで配分する。工程能力(Cp、Cpk)を踏まえて目標公差を再設計し、コストと合格率の最適点を探索する。
解析と評価
CAE により強度(静・動・座屈・疲労)、熱、流体、振動の観点で形状を検証する。トポロジー最適化や形状最適化で軽量化と剛性向上を両立し、固有値解析で共振リスクを低減する。解析モデルはメッシュ品質・境界条件・材料モデルの妥当性を満たす必要がある。
公差解析の代表手法
- スタックアップ計算:寸法チェーンの線形和
- モンテカルロ:ばらつき伝播の確率評価
- 3Dトレランス解析:位置度・姿勢誤差の空間評価
製造性と組立性
DFM/DFA の視点で、加工法(切削、鋳造、板金、射出成形、AM)ごとの最小肉厚・ドラフト・抜き方向・工具到達性を満たす。組立時間短縮のため部品点数削減、左右対称化、位置決め一義化を図る。ばらつき源(治具、熱変形、弾性回復)を考慮し、実現可能な公差値を設定する。
特徴形状と加工配慮
- フィレット・面取り:応力集中と安全性の両配慮
- リブ・ボス:剛性向上と肉厚均一化
- アンダーカット回避:型構造の簡素化とコスト低減
材料と強度
材料選定はヤング率、降伏強さ、疲労限、熱膨張、比重、耐食・耐摩耗性を基準に行う。表面粗さ・表面処理(硬化、被膜)は疲労強度と摩擦係数に影響する。形状は断面二次モーメントを活用して応力と変位を制御する。
軽量化と剛性設計
荷重経路を短くし、中空化やサンドイッチ構造で曲げ剛性を確保する。リブ配置は主応力方向に沿わせ、座屈安全率を確保する。
計測と検証
CMM(三次元測定機)や光学スキャナで幾何特性を検証し、MSA/ゲージR&Rで測定系の信頼性を評価する。測定基準は設計のデータムと一致させ、測定点配置とフィッティング手順を明確化する。
初期流動と品質保証
FAI/PPAP などで初品承認を取り、管制図で量産の安定性を監視する。臨界寸法は抜取りではなく 100% 検出や工程内測定を検討する。
デジタルエンジニアリング
CAD/PLM により部品・アセンブリを一元管理し、MBD(Model Based Definition)で PMI を 3D に保持する。BOM と図面、仕様書を紐付け、下流の CAM・検査とデータ連携する。
データ連携と変更管理
ECR/ECN 手順を定め、影響解析(部品、治具、在庫、手順書)を伴う変更のみ適用する。属性情報(材質、処理、仕上げ、質量、基準)を更新し、トレーサビリティを確保する。
安全と信頼性
FMEA/FTA で故障モードを洗い出し、フェールセーフ・フールプルーフを形状に組み込む。シャープエッジの除去、指挟み回避、遮蔽・ガードなど安全要求を図示する。
リスク低減の実務
- 角部Rで応力集中を緩和
- スロットやキーで位置決め一義化
- 誤組立防止の非対称化
よくある不具合と対策
干渉・当たり、クリアランス不足、そり・ねじれ、取付基準の不整合、寸法チェーン誤算が典型である。対策は基準再定義、部品の再配列、クリアランス・逃げの付与、剛性の確保、測定法の整備などである。
レビュー・チェックリスト
- 機能の定義が寸法・公差に直結しているか
- 基準(データム)が一貫し測定可能か
- 組立順と寸法チェーンが整合しているか
- 加工・検査の実現性と工程能力を満たすか