差圧計|プロセス配管の差圧を高精度測定

差圧計

概要と役割

差圧計は二点間の圧力差を測定する計器である。フィルタの目詰まり監視、ダクトの風量推定、オリフィスやベンチュリによる流量計測、タンクの液面計測(密閉槽でのヘッド差)など用途が広い。測定素子は隔膜・ベローズ・スプリング管などの機械式から、半導体ゲージや静電容量式の電子式まで多様で、信号出力は現場指示、4-20mAやデジタル通信まで対応する。設置では高圧側・低圧側の取り回し、ドレン処理、パージや三方弁の組み合わせが重要であり、プロセスの安全性と保全性に直結する。

測定原理

差圧計の基本は、二つの圧力を可動隔膜などで受け、その変位を力学的・電気的に検出する仕組みである。静電容量式は隔膜と固定電極の容量変化を読み取り、ピエゾ抵抗式は歪みゲージの抵抗変化をブリッジ回路で検出する。機械式はリンク機構で指示針に伝える一方、電子式はセンサ信号をA/D変換し温度補償を施して出力する。マノメータ型は液柱差を利用し、シンプルで校正が容易であるが、応答性と携帯性に制約がある。

代表的な形式

  • 隔膜式:薄膜隔膜で差圧を受ける汎用型。微小差圧に強く、クリーンルームやフィルタ監視に適する。
  • ベローズ式:蛇腹の体積変化で感度を稼ぐ。指示式や警報用として用いられる。
  • 静電容量式:高分解能・低ドリフトで長期安定。電子式トランスミッタの主流。
  • ピエゾ抵抗式:広レンジで堅牢。コストバランスに優れる。
  • 液柱式(U字管):構造が単純で校正原器としても有用。現場常設には不向き。

流量計測との関係

オリフィス・ベンチュリ・ノズルでは差圧と流速の二乗が比例するため、差圧計で得た信号に平方根演算(スルー・スクエアルート)を適用して体積流量や質量流量を算出する。配管径、β比、流体密度・粘度、レイノルズ数、取り付け直管長などの前提が重要で、誤差予算の大半を占め得る。蒸気やガスでは圧力・温度補償を併用し、質量流量の安定化を図る。

仕様・性能の指標

  • レンジとターンダウン:電子式は広い可変レンジを持ち、1:100のレンジアビリティを実現する機種もある。
  • 精度・直線性・ヒステリシス:総合精度は±0.075% of span級が一般的で、高精度用途では±0.04%級もある。
  • 静圧定格と過圧保護:差圧は小さくとも静圧は高い場合があるため、隔膜保護やリミット器を確認する。
  • 応答時間:フィルタやインパルスライン容量で遅れが増す。ダンパやデジタルフィルタ設定で最適化する。
  • 耐環境性:温度係数、耐振動、IP保護等級、耐食材質(SUS、ハステロイなど)を選定時に確認する。

設置と配管の要点

差圧計は高圧側(H)と低圧側(L)を確実に識別し、インパルスラインの勾配とドレン/ベント処理を適切に行う。蒸気はコンデンセートポットを両側に同高さで配置し等水頭とする。液体は気泡だまりを避け、気体は液溜まりを避ける勾配とする。三方弁/五方弁マニホールドでゼロ点合わせ、パージ、保守の隔離を容易にする。差圧発生素子の上流・下流には推奨直管長を確保する。

信号と通信

現場送信は4-20mA二線式が主流で、自己診断や設定はHARTで行う。プロセスバスではFOUNDATION FieldbusやPROFIBUS PA、近年は統合制御や解析目的でのデジタル活用が進む。電子式差圧計は温度補償、静圧補償、スクエアルート演算、アラーム判定などの機能を内蔵し、アセットマネジメントと連携して予知保全に寄与する。

校正・トレーサビリティ

校正は基準圧力源(デッドウェイトテスタ、基準トランスデューサ)と比較し、ゼロ/スパンを調整する。マノメータ液柱は一次標準として有用で、密度・重力加速度・温度補正を反映する。JISやISOに基づく校正手順と不確かさ評価を記録し、差圧計のドリフト管理、レンジ見直し、使用条件の変化(流体、温度、静圧)を含めて周期を設定する。

誤差要因と対策

  • 密度・温度変動:ガス密度変化や封入液の膨張はゼロ点シフトを生む。温度補償と配管条件で緩和する。
  • 振動・脈動:機械振動やポンプ脈動は指示の不安定化を招く。ダンパ/スナバや平均化で対処する。
  • 取付姿勢:隔膜の重力影響はゼロ点に現れる。姿勢を固定し、ゼロ調整値を手順化する。
  • 詰まり・汚れ:インパルスライン閉塞は致命的で、ブロー/パージや口径選定、シール液の選択が有効。
  • 漏れ・混入:継手の気密と材料適合性を確認する。腐食や拡散による長期変質にも注意する。

安全・規格・防爆

危険場所ではEx ia/Ex dなどの防爆要件を満たす機種を選ぶ。プロセス接液部の材質、最大許容圧力、温度分類、電気保護等級を確認し、ループ全体の安全評価を行う。SILに基づく機能安全では、差圧計の故障確率、診断カバレッジ、試験間隔を設計仕様に組み込むことが求められる。

選定ポイント

  1. プロセス条件:流体の相・温度・圧力・腐食性・粘度。
  2. 必要性能:レンジ、精度、応答、長期安定性、ゼロ点の温度係数。
  3. 設置自由度:取り合い寸法、マニホールド、シールダイアフラムの要否。
  4. 信号方式:4-20mA、HART、デジタルバス、診断機能。
  5. 保全:校正容易性、現場表示、自己診断、交換性。

応用例

クリーンルーム差圧監視では微小レンジの電子式差圧計を用い、空調の正圧維持を担保する。濾過工程では入口/出口差圧の上昇を目安に保全計画を立てる。ボイラや配管の流量は一次差圧素子と組み合わせ、平方根出力をDCSで受ける。密閉タンクではガス封入側をL、高圧の液ヘッド側をHとして液位を算出し、密度変動には温度補償を適用する。