差圧
差圧は2点間の圧力差を示す量であり、配管・装置の状態把握、流量推定、フィルタの目詰まり監視、タンク液面の間接測定などに広く用いられる。単位はPa(kPa、MPa)やmmH2O、inH2O、psiが使われ、定義はΔp=p1−p2で表される。絶対圧・ゲージ圧とは概念が異なり、差圧は基準2点を同一系内にとる点が特徴である。測定ではダイアフラム方式のトランスミッタが主流で、微小な膜の変位を電気信号に変換して出力する。
定義と基礎式
差圧Δpは、2地点の圧力p1とp2の差で定義する(Δp=p1−p2)。符号は運用上の取り決めに依存するため、測定点の「高圧側(H)」と「低圧側(L)」を明確にする。計算や仕様書ではSI単位Paを基本とし、kPaへの換算、または水柱換算(mmH2O)を併記する。流体密度ρと重力加速度g、位置ヘッド差Δhを用いれば、静止流体ではΔp=ρgΔhで表すことができる。
ヘッドとの関係
静止液体における差圧は液柱高さ差Δhに比例する。水(約ρ=1000kg/m³)なら、約9.8kPaが1mH2Oに相当する。実務では微差圧の換算にmmH2OやinH2Oが便利で、タンク液位やダクトの微小な圧力損失評価に用いられる。
計測方式とセンサ
差圧計測の中心はダイアフラム式変換器で、ひずみゲージ型、静電容量型、ピエゾ抵抗型などがある。膜に生じる微小変位・応力を電気信号へ変換し、温度補償・線形化を施して4–20mAや各種デジタル通信で出力する。静圧の影響を小さく抑える構造、耐食・耐圧の材質選定が重要となる。
一次要素(流量用)
流量推定では、流れによる差圧(動圧差)を生じさせる一次要素を用いる。代表例はオリフィス、ベンチュリ、ノズル、ピトー管で、計測差圧からベルヌーイの関係式や規格式を通じて体積・質量流量を算出する。レンジ拡張には低β比要素やマルチレンジ化が有効である。
二次変換と信号処理
差圧トランスミッタはゼロ・スパン調整、温度ドリフト補正、フィルタ(一次遅れ)などの機能を持つ。出力は4–20mA、HART、Modbus、Fieldbus、EtherNet/IP等が用いられ、上位で演算・記録・監視を行う。
主な用途
- 差圧式流量計:オリフィスやベンチュリで生じる圧力降下から流量を導出。
- フィルタ監視:入口・出口の差圧上昇を目詰まり指標とする。
- タンク液位:底部と上部の差圧から液頭を推定(ガス封入時は上部圧も補正)。
- ダクト制御:空調ダクトの微差圧を保ち、クリーンルームの圧力区画を維持。
- 熱交換器:入口・出口の差圧で汚れや閉塞を診断。
選定指針
差圧レンジは測定対象の通常運転域と最大過渡を含めて決め、ターンダウン(レンジアビリティ)で小流量の感度も確保する。静圧・耐圧、プロセス温度、湿気・凝縮の影響、振動・パルセーション、材質適合(SUS、ハステロイ等)、防爆・保護等級、出力インターフェースなどを総合的に評価する。
配管・設置の要点
差圧配管ではインパルスラインの取り回しが精度を左右する。液体はガス溜まりを避けて下り勾配、気体は液溜まりを避けて上り勾配とし、ドレン/ベントでエア抜き・排液を行う。三方・五方マニホールド弁を用いてゼロ調整・遮断・等圧化を安全に実施する。粘性流体や高温媒体にはリモートシールやキャピラリ充填を使い、温度由来のゼロシフトを抑える。
誤差・トラブル対策
- 温度ドリフト:断熱、遠隔シール、適正な補償仕様で差圧の零点漂移を抑制。
- パルセーション・ウォータハンマ:スナバーやダンパで過渡差圧の突入を緩和。
- 詰まり・凝縮:セパレータ、ドレンポット、定期パージでインパルス系の健全性を保持。
- 設置姿勢:ポジション効果でゼロが変わるため、姿勢固定後にゼロ調整。
校正・検証
差圧校正は基準圧源(デッドウェイトテスタ、精密レギュレータ等)でゼロ・スパン・直線性・ヒステリシスを確認する。トレーサビリティのある標準器を用い、不確かさを見積もる。現場では等圧バランス法でゼロ確認を行い、定期点検周期をリスクベースで設定する。
安全と規格
危険場所ではEx ia/ib等の防爆要件を満たす機種を選び、圧力機器・配管コード、JIS/ISOの適合を確認する。SILやIEC 61508/61511に基づく機能安全設計では、差圧スイッチのトリップ設定値、診断間隔、誤動作時のフェイルセーフ方針を明確化し、P&ID・手順書に反映する。
計算とデータ処理の注意
密度が温度・組成で変動する場合、差圧から流量・液位へ換算する計算は補正テーブルやオンライン演算を併用する。ゼロ点・スパンのデジタル調整は記録を残し、ローパスや移動平均でノイズを抑えつつ、応答遅れが制御安定性に与える影響も評価する。
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