定荷重ハンガー|配管の熱変位に追従し荷重一定支持

定荷重ハンガー

定荷重ハンガーは、配管・ダクト・機器などを吊り支持する際、据付後の熱膨張や据付誤差、建屋の相対変位があっても吊り点に作用する荷重をほぼ一定に保つ機構である。ばね力をリンクやカムで整形し、作動ストローク全域で吊り下げ力の変動を最小化する。これにより、支持点近傍の応力集中や曲げモーメントの過大化を抑え、配管の座屈・たわみ・疲労破損を防止する。固定支持と異なり、変位を許容しつつ荷重一定を実現するため、長尺配管や高温配管、振動敏感な機器の支持に用いられる。

原理と目的

定荷重ハンガーは、理想的には吊り荷重Wに対するばね定数kが「見かけ上」0に近くなるよう設計される。実機ではコイルばねのF=kx特性に対し、リンク・カム・レバー比を組み合わせた力学的変換で合力の勾配を打ち消し、ストローク内でW≒一定となるよう調整する。摩擦を低減するために摺動部の表面処理や転がり要素を採用し、ヒステリシスを抑える。またストッパ機構で据付時の仮固定と運用時の自由変位を切り替え、安全と調整性を両立する。

種類

定荷重ハンガーには、一般的なコイルばね+リンク式のほか、カム式、複数ばね直列・並列の合成特性を利用する方式、必要に応じてダンパ併用型がある。ダンパは過渡的な振動や衝撃を抑えるために組み合わされる。材質は耐食性が要求される環境ではステンレス鋼が選定されることが多い。選択は荷重範囲、必要ストローク、周囲温度、腐食環境、点検容易性で決まる。

適用範囲と設計条件

適用の要点は、(1)運転・停止・地震時を含む荷重Wの推定、(2)熱膨張ΔLから算出される必要ストローク、(3)取り付け高さと障害物、(4)配管系の固有値(固有振動数)と励振源の関係、(5)許容偏心である。配管の温度差ΔTと線膨張係数αに対し、ΔL=α·L·ΔTを概算し、装置の作動範囲が十分に収まるよう余裕を持って機種を選ぶ。支持点の自重・保温材・流体重量もWに含める。

選定手順

定荷重ハンガーの選定は次の手順が実務的である。

  1. 系統図とアイソメ図から吊り点候補を抽出し、各点の荷重Wと変位ΔLを見積もる。
  2. メーカーの荷重−ストローク表で該当レンジを選び、許容誤差内でW一定性が確保できる型番を決定する。
  3. 据付空間とボルト・ハンガーロッドの径・長さ、調整代、干渉を確認する。
  4. ダンパ併用の要否を、共振リスクと外乱レベルから判定する。
  5. 耐食環境・温湿度に応じ表面処理や材質を選ぶ。
  6. 検査要領(設定荷重確認、ストローク限界、作動摩擦)を作成する。

据付と調整

据付時はストッパで内部機構を固定し、吊り部材と天井側部材を接続する。ロッド長は設計時の中立位置(ストローク中央付近)に合わせ、運転移行後にストッパを解除して作動域へ移す。微調整はロックナットとねじ長さで実施する。装置側アイやシャックルのねじれは避け、吊り線が鉛直に近い状態を確保する。躯体側アンカーの引抜き・せん断余裕も併せて確認する。

性能評価と検証

定荷重ハンガーの性能は、荷重−変位曲線の平坦度(一定性)、作動摩擦、ヒステリシス、繰返し耐久で評価する。受入・現地試験では、荷重計を介して昇降し、設定荷重が規定範囲内(例±5%)に留まることを確認する。系全体では、支持剛性が変化した場合の配管反力再配分を解析し、固定点への過大反力集中を避ける。必要に応じ、モーダル解析で共振域からの離隔を確認する。

材料・耐食・環境

屋外・化学雰囲気では、主要部品の材質・表面処理が信頼性を左右する。亜鉛めっきや粉体塗装で一般腐食を抑え、海塩粒子や薬品ミスト環境ではステンレス鋼や重防食仕様を用いる。ばねは疲労強度と耐クリープ特性の両立が重要で、ショットピーニング・残留圧縮応力付与で耐久性を高める。潤滑は乾燥被膜材を用い、粉塵付着や油だれを防ぐ。

保守・点検

定期点検では、(1)ストローク端の打音痕や干渉、(2)荷重表示窓の指示ズレ、(3)ばね折損や塗膜はく離、(4)ピン・ブッシュ摩耗、(5)ロックナットの緩みを確認する。異音・高摩擦は一定性を損ない、配管側に不要な反力を発生させるため即時整備する。必要に応じ、荷重計で実荷重を再測定し、設計値との差を補正する。

設計上の留意点

定荷重ハンガーは万能ではない。大変位域での一定性は構造限界で低下するため、ストローク余裕を十分に確保する。また系の固有振動数と励振周波数が近い場合はダンパ、質量調整、支持点の再配置で共振回避を図る。熱断熱厚みの増減や保温の吸湿による重量変化も考慮し、設定荷重にマージンを持たせる。

固定支持・ばね支持との違い

固定支持は変位を拘束して反力を受け持つのに対し、通常のばね支持は「変位に応じて荷重が変化」する。一方定荷重ハンガーは、変位を許容しながら荷重一定を狙う点で異なる。高温配管や機器ノズルの反力管理に適し、系の熱応力を低減する。基礎的なばね設計の理解が選定の前提となる。

関連部品・付属品

ターンバックル、アイプレート、Uボルト、ハンガーロッド、止め金具、緩み止めワッシャなどの周辺部品は、許容荷重・ねじ規格・防食仕様を整合させる。締結には適正トルク管理を行い、二重ナットやばね座金などで緩み対策を講じる。配管系の静的・動的挙動を踏まえ、必要に応じて振動抑制部材を併用する。