宇宙ステーション
宇宙ステーションは地球周回軌道に長期滞在し、生命維持・実験・観測・技術実証を継続的に行うための有人プラットフォームである。宇宙船のように行って帰る往復主体ではなく、モジュールを結合して拡張しながら常時運用する点が特徴である。代表例が宇宙ステーションとして知られるISSで、微小重力や真空、強い放射線など地上と異なる環境を活用した研究が可能である。
軌道と環境
多くの宇宙ステーションは高度数百kmの低軌道を周回し、約90分で地球を一周する。ここでは10-6程度の微小重力、熱真空、原子状酸素、プラズマ、強い紫外線および銀河・太陽由来の放射線にさらされる。希薄大気抵抗により軌道は緩やかに減衰するため、補給船の推進で定期的に再上昇(リブースト)を行う。
構造とモジュール設計
宇宙ステーションは加圧モジュール、ノード、実験棟、気密ハッチ、外部作業のためのエアロック、トラス(電力・熱流体系の母屋)、ドッキング機構で構成される。与圧船殻は隕微小天体やデブリへの耐衝撃を考慮し多層遮蔽を採る。インターフェースは国際的な互換性確保のため標準化が進み、設計審査や材料・配管・電装の適合には国内のJISや国際のISOが参照されることが多い。
電力供給と熱制御
電力は大面積ソーラーアレイと二次電池で賄う。発生電力は100kW級に達し、配電は直流系で行うのが一般的である。熱制御はラジエータとループ(アンモニアやフッ素系など)で行い、機器発熱を外部へ放散する。冷却回路の設計ではポンプ揚程、配管損失、媒体流量の制御が要点であり、故障時の冗長化と隔離が求められる。
生命維持(ECLSS)と船内環境
- 酸素供給:電解によるO2発生、圧縮ガスの補給を併用する。
- 二酸化炭素除去:分子篩や化学吸収材でCO2を除去する。
- 水・湿度管理:再生水のリサイクルと結露対策を組み合わせる。
- 大気圧・温湿度:地上近似の快適域を維持し、局所熱負荷はダクトで平準化する。
生理学・材料・燃焼・流体の微小重力実験は、重力依存性のない純粋な現象把握に有用である。
姿勢制御・軌道維持
宇宙ステーションの姿勢はCMG(Control Moment Gyro)の反力ホイールとスラスタで制御する。太陽電池の発電効率や熱放散効率のためにトラス方位を最適化し、外乱トルク(大気抵抗差・地磁気・重力傾斜)に対処する。軌道維持は補給船のドッキング後に行うリブーストで対応する。
補給・ドッキング規格
補給は無人補給船や有人船で行い、物資、推進剤、交換部品、実験試料を届ける。ドッキングは機械・電気・流体の結合を同時に満たす必要があり、国際的にIDSS(International Docking System Standard)などの標準が用いられる。地上の試験設備や発射場では高エネルギー電気設備を伴うため、雷害・サージ対策の観点から雷サージの抑制や接地設計が重要となる。
安全・信頼性と運用
宇宙ステーションの運用はフェイルセーフとフォールトトレランスの組合せで設計される。火災・減圧・有害ガス・電気故障・デブリ衝突といったハザードに対して検知・隔離・消火・緊急退避の手順が整備される。船外活動(EVA)では宇宙服の熱・圧力・通信・汚染管理が不可欠である。
関連する基準・規格の位置づけ
材料選定、配線、配管、試験方法、品質保証、リスクアセスメントにはJISおよびISOの一般規格や宇宙分野の指針が参照される。互換性確保は国際共同開発の成否を左右するため、インターフェース管理文書(ICD)と構成管理が重要である。
研究・産業応用の波及
宇宙ステーションで得られた知見は、医薬・結晶成長・燃焼制御・熱流体・ロボティクス・テレメディシンなどへ波及する。高信頼の電力・熱・気密・人間工学設計は地上のプラントや極限環境施設にも応用できる。関連項目として、電磁波曝露の基礎は放射線、表面劣化の理解には紫外線、熱輸送の計算には流量、地上設備設計には雷サージが参考になる。