型鍛造
型鍛造とは、上下の金型(ダイ)で加熱または常温の素材を挟み、所定のキャビティへ充填させて塑性変形させる成形法である。閉式鍛造や印象型鍛造とも呼ばれ、自由鍛造に比べて形状の再現性と量産性が高い。鍛流線が製品形状に沿って配向するため、引張強さ・疲労強度・靭性に優れ、機械加工代を抑えたニアネットシェイプ化にも寄与する。自動車のクランクシャフト、コンロッド、ギヤブランク、工具、ボルト頭部などで広く用いられる。
熱間・温間・冷間の区分
型鍛造は温度域で大別される。熱間は再結晶温度以上で行い、充填性に優れ複雑形状に適する。温間は中温域で加工硬化と寸法精度のバランスを取る。冷間は常温付近で行い、寸法精度と表面粗さに優れるが成形荷重が大きい。鋼では熱間・温間が主流、アルミ合金では温間・冷間が多い。材料、形状複雑度、生産タクト、後工程の熱処理方針を総合して温度域を選定するのが型鍛造設計の基本である。
プロセスの流れ
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素材準備:棒材・丸鋼・ビレットを切断し、酸化・脱炭を抑えるため端面整形や表面処理を行う。型鍛造では素材寸法のばらつき管理が重要である。
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加熱:誘導加熱が一般的で、鋼の熱間は約1,050–1,250℃、温間は約600–900℃の範囲が目安となる。
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潤滑:黒鉛系やガラス系潤滑剤を金型・素材へ塗布し、摩擦低減と金型寿命延長を図る。
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予備成形:プリフォーム型で体積配分を整え、最終キャビティへの充填性を高める。
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仕上げ成形:仕上げ型で最終形状へ変形させ、バリ(フラッシュ)を形成するのが一般的な型鍛造のシーケンスである。
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トリミング:バリ抜き型で不要部をせん断し、必要に応じて矯正やショット処理を行う。
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熱処理・機械加工:焼入れ・焼戻し等で所要特性へ調整し、仕上げ加工で公差内に追い込む。
金型設計の要点
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型割とパーティングライン:充填性、フラッシュ発生位置、抜きやすさを左右するため、型鍛造では形状の対称性と分割方針を整合させる。
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抜き勾配・フィレット:離型性と応力集中緩和の両面から、適正な勾配とRを付与する。
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体積設計:プリフォーム段階で体積を過不足なく配分し、アンダーフィルや折れシワ(ラップ)を抑制する。
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金型材と熱処理:熱間ダイ鋼を用い、窒化や表面処理で耐ヒートチェック性を向上させる。
鍛流線と機械的性質
型鍛造品では金属組織が流動し、鍛流線が応力経路に沿うよう配向する。これにより方向性強度が得られ、疲労起点となる介在物の影響が緩和される。一方で異方性が生じるため、荷重方向と鍛流線の関係を考慮して設計する。たとえば回転曲げを受ける軸部品やボルト頭部では、鍛流線の切断を最小化する形状遷移が望ましいのが型鍛造の設計指針である。
欠陥モードと抑制策
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アンダーフィル:素材体積不足や温度低下、潤滑不良が原因。ビレット温度管理とプリフォーム最適化で対処する。
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折れシワ(ラップ)・コールドシャット:過大な流れの合流や死角流動で発生。フィレット拡大、充填経路の見直しで抑えるのが型鍛造の定石である。
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バリ戻り・寸法超過:トリミング条件や型剛性不足が起因。型剛性・クリアランスと荷重の整合を取る。
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脱炭・酸化:雰囲気管理、短時間加熱、適切な潤滑で軽減する。
材料と熱処理
炭素鋼や合金鋼(例:S45C、SCM系)が主材料で、アルミ合金、チタン合金にも型鍛造は適用される。熱間後は正規化、焼ならし、焼入れ・焼戻しにより靭性・強度を両立させる。アルミは溶体化・時効硬化で所要強度を得る。鍛造比(断面縮小率)を確保して中心偏析や粗大化組織を改善するのが品質安定の鍵である。
設備と生産システム
型鍛造ではクランクプレス、スクリュープレス、油圧プレス、エアハンマーが用いられる。量産では誘導加熱→プリフォーム→仕上げ→トリミングを直列化したトランスファライン化が有効で、金型の温度制御や自動給材・離型剤スプレーと組み合わせてタクトを安定させる。荷重・エネルギ監視と金型温調の見える化により、金型寿命と寸法安定性を高めるのが型鍛造の運用である。
寸法・公差・仕上げ
型鍛造品の設計では、機械加工代の配分、抜き勾配、コーナR、分割線の段差制御が要点となる。仕上げ後の寸法公差は材料・温度域・装置剛性で変わるため、工程能力に即した公差設計を行う。トリミング後のバリ面処理、バリ取り方向と鍛流線の関係にも注意し、疲労強度低下を避ける。
シミュレーション活用
近年は型鍛造の充填解析や荷重予測にCAEを用いる。摩擦係数、熱伝達、ビレット初期温度分布をモデル化し、アンダーフィルやラップの予兆を事前に抽出する。金型の応力・温度サイクル評価を行い、ヒートチェックの生じやすい箇所にR付けや表面処理を検討する。試作回数の削減と立上げ期間短縮に有効である。
検査と品質保証
型鍛造では外観検査、寸法検査(CMM等)、硬さ試験に加え、PT・MT・UTによる内部欠陥の有無を確認する。ロットごとのビレット成分・温度記録、荷重・エネルギトレース、トリミング荷重の統計管理を組み合わせ、工程能力指数の維持向上を図ることが品質保証の実務である。
安全衛生の留意点
高温材のハンドリング、金型割損、トリミング時の飛散など型鍛造固有のリスクがある。遮熱手袋・フェイスシールド等のPPE、金型クランプの点検、非常停止系の定期試験、離型剤ミストの局所排気など、設備・作業・環境の三位一体でリスク低減を行う。