地熱発電|地下熱で安定電源と熱利用

地熱発電

地熱発電は、地球内部の熱エネルギーを地表で取り出し、蒸気タービンやバイナリ循環設備を介して電力に変換する方式である。火山弧に位置する日本は地温勾配が高く、高温熱水・蒸気系のポテンシャルが大きい。高い設備利用率によりベースロード電源として機能し、燃料調達が不要な点が経済・エネルギー安全保障の両面で利点となる。一方、開発初期の探査・掘削にコストとリスクが集中するため、資源評価と適切なリザーバ管理が鍵となる。

原理と資源の種類

地熱発電は、地下の貯留層(リザーバ)に存在する高温流体からエンタルピーを取り出し、熱機関で電力化する。資源タイプは大きく、(1)乾蒸気(Dry steam)—井戸から直接飽和蒸気を得る、(2)フラッシュ蒸気(Flash)—減圧により熱水から蒸気相を分離する、(3)バイナリ(Organic Rankine Cycle・Kalina)—地熱流体と独立した作動流体で低沸点熱源を利用、に分類される。地質学的にはポーラス火山岩、割れ目系、超臨界を志向する深部高温域など多様である。

発電方式の比較と適用領域

  • 乾蒸気方式:蒸気品質が高く配管が簡素で、タービンへの直結が可能。著名フィールドで実績が厚い。

  • フラッシュ方式:200℃級の熱水に適用し、セパレータで蒸気相を分離。二段フラッシュで効率向上が図れる。

  • バイナリ方式:150℃以下の中低温域でも発電可能。ORCは低騒音・小規模分散に適し、油田随伴水や温泉排湯の回収にも展開できる。

地熱発電所の主要設備

生産井からの流体はウェルヘッドで制御され、セパレータで蒸気と熱水に相分離される。蒸気はタービン・発電機で動力化され、復水器と冷却塔で凝縮・冷却される。分離後の熱水および復水は還元井に再注入し、リザーバ圧の維持と持続的採取を両立させる。シリカ析出を抑えるスケール対策、H2S除去、耐食材料選定、固形分対策のストレーナなどが信頼性を支える。

地下資源の評価と掘削

資源評価は地表地質・温泉化学、比抵抗・MT探査、重力・地震探査を重ね合わせ、温度・透水性・キャップロックの連続性を推定する。スリムホール掘削で温度勾配や流体化学を取得し、坑井試験(Injectivity/Productivity)で生産性を評価する。掘削は高温による泥水性状変化や坑壁安定に留意し、ライナー設計とケーシングの耐熱・耐食性を確保する。

運用とリザーバ管理

地熱発電の長期安定化には、注入率・注入温度・注入位置の最適化によるサーマル・ブレイクスルー回避が不可欠である。坑口圧・流量・化学成分・微小地震の常時監視と、数値リザーバモデルによる圧力・温度場の予測更新(ヒストリーマッチ)が有効である。蒸気供給の季節変動は小さいが、坑井のスケール付着や砂噛みは発電量に影響するため、定期的なケミカル洗浄やメカニカル除去を実施する。

環境影響と対策

CO2排出原単位は化石火力に比べて低く、ベースロードとして脱炭素化に寄与する。H2Sや微量ガスは気液分離・スクラバーで処理し、騒音・景観は配置計画と遮音構造で低減する。熱水は原則として全量還元し、地表水系への影響を抑制する。誘発地震は注入管理と微小地震モニタリングでリスク低減を図る。温泉資源との共存には水理学的仕切りの確認と情報共有が重要である。

系統連系と電力品質

高い設備利用率によりベースロードとして地熱発電は電力系統の周波数安定に寄与する。一次・二次調整力はタービン制御とバイナリのインバータ制御で提供可能である。連系に際しては保護協調・系統コード遵守と、発電所—変電所配電の連携設計、受電端の力率・高調波管理、起動時突入の抑制が求められる。系統図表現には単線結線図を用い、連系要件は系統連系基準に従う。再エネ全体の位置づけ理解には太陽光発電水力発電火力発電原子力発電との相補性も参照されたい。

経済性とプロジェクト管理

LCOEはサイト依存性が大きく、CAPEXの比率は探査・掘削が支配的である。早期に「井戸あたり出力(MWe/井戸)」を高精度化し、FEC(Front-End)段階でGo/No-Go判断の質を高めることが投資効率を左右する。EPCでは高温配管の伸び・応力解析、復水器と冷却塔の熱収支、薬注・排気処理の冗長化、スペアパーツ戦略を織り込む。OPEXは坑井維持・スケール抑制・流体処理が主要項目となり、データ駆動の予防保全が有効である。

スケールおよび腐食対策(補足)

シリカ、炭酸塩、硫化物の析出は配管閉塞と効率低下を招く。流体冷却前にpH・過飽和度を制御し、インヒビタ薬注・濾過・高せん断部の回避を施す。材質はステンレス、ニッケル合金、ライニング鋼を適材適所で用い、電食対策として接液部の材質選定と電位差管理を行う。

地域共生と熱のカスケード利用(補足)

発電後の低温側熱は地域熱供給、温室栽培、水産養殖、融雪などに段階的活用できる。観光・温泉との協調には水理・化学データの共有、取水・注入の協定、景観配慮設計が有効である。分散型バイナリは小規模系統や工業団地にも適用可能で、起業的導入から段階拡張する戦略が取りやすい。