圧延
圧延とは、対向するロールで素材を挟み、塑性変形により板・帯・棒・形鋼などの断面寸法を連続的に減少させる加工である。熱間と冷間の二形態があり、熱間圧延は高温域で再結晶を伴い大幅な寸法変更に適し、冷間圧延は常温域で高い寸法精度と表面性状を得るのに適する。連続ミルやタンデムミルにより高スループットで生産でき、鋼・アルミ・銅など多様な金属材料に適用される。
原理と基本用語
圧延では、入口板厚をh0、出口板厚をh1とするとドラフトはΔh=h0−h1、圧下率はr=(h0−h1)/h0、真ひずみはε=ln(h0/h1)で表される。ロールと材料間の摩擦により咬み込みが成立し、接触弧内には材料速度とロール周速が一致する中立点が存在する。平均変形抵抗σmと接触面積から圧延荷重が見積もられ、ロール半径Rと接触応力分布からトルクと所要動力Pが決まる。
種類(熱間・冷間)
- 圧延(熱間):オーステナイト域など高温で加工し、動的再結晶・回復により加工硬化が除去され、大きな断面減少と内部欠陥の溶着が可能。表面はミルスケールが生じやすい。
- 圧延(冷間):常温で板厚を精密に制御し、高い平坦度・光沢面を得る。加工硬化により強度が上がるため、焼鈍(連続焼鈍など)で軟化・再結晶させる工程を併用する。
設備とミル構成
代表的なスタンドは2段・3段・4段、さらにバックアップロールを多段化したクラスタミル(例:20段〈Sendzimir〉)である。可逆ミルは往復で圧延し、タンデムミルは複数スタンドを直列化して高生産を実現する。主機は駆動モータ・主減速機・ロール・ベアリング・油圧圧下装置・コイラなどで構成され、ワークロール材質・直径は製品厚みと荷重に応じて最適化される。
プロセス制御と品質
板厚はAGC(自動板厚制御)、形状・平坦度はAFCで制御する。X線・γ線厚み計と形状計を用い、入口・出口テンションや冷却・潤滑を最適化してクラウン・エッジドロップ・板幅スプレッドを管理する。冷間圧延では乳化液や油潤滑により摩擦と発熱を抑え、熱間圧延ではスケール除去の高圧脱スケールが重要である。
代表的な製品と用途
- 熱延板・中厚板・鋼板コイル:造船、建機、配管などの基材。
- 冷延鋼板・表面処理鋼板:自動車外板や家電筐体など、寸法・外観要求が高い部位。
- 形鋼(H形鋼・レール等)の形状圧延:建築・土木インフラ。
- 非鉄薄板(Al、Cu):熱交換器、フィン、電気・電子部品。
設計・計算の要点
圧延荷重Fは概略F≈σm·b·Lで見積もる(b:板幅、L:接触弧長=√(R·Δh)の近似)。トルクTは接触応力のモーメントから、動力P=T·ωで算出する。パススケジュールは各スタンドの圧下配分、板幅変化、テンション、ロールフラットの組合せ最適化問題である。摩擦係数μ、入口温度、ロール熱膨張、弾性フラットネスを含む熱機械連成を考慮すると精度が向上する。
欠陥と対策
- 形状不良(エッジ波・センターバックル・クォーターバックル):クラウン・テンション・クーラント配分・ワークロールベンディングで補正。
- 割れ(エッジクラック・ジッパークラック):過大圧下や不適切潤滑、材質異常に起因。パス緩和・潤滑最適化・材料清浄度向上で抑制。
- 内部欠陥(層割れ・アリゲータリング):鋳片中心偏析や低延性温度域圧延が原因。加熱均熱や最適温度域の選定で回避。
材料学的変化
熱間圧延は再結晶と粒成長により等軸細粒化を促し、靭性バランスを整える。冷間圧延は転位増殖で加工硬化し、焼鈍により再結晶・集合組織(テクスチャ)を制御して深絞り性や磁気特性を調整する。耳(earing)や異方性は集合組織設計で低減する。
安全・環境と保全
圧延ラインは高温・高荷重・高速度であり、スケール飛散、騒音、油煙への対策が不可欠である。用水と潤滑のクローズドループ化で環境負荷を低減し、エネルギーは加熱炉効率化・回生制動で削減する。保全はロールの段差・偏摩耗監視、軸受温度・振動監視、厚み計・形状計の校正を計画的に実施することが重要である。
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