四節リンク|クランクロッカーで所望運動を合成

四節リンク

四節リンクは4本の剛体リンクと4つの回転対偶で構成される最小閉ループ機構であり、回転や往復の運動を所望の角変位に変換する基本要素である。構造は基準リンク、入力クランク、出力ロッカー、連接棒から成り、自由度はGrueblerの式より1である。簡素で剛性・精度・コストのバランスが良く、四節リンクは工作機械、プレス、搬送、車両サスペンションなど多分野で用いられる。

定義と構成要素

4本のうち基準リンクは固定され、他の3本が平面内で相対回転する。入力はクランクとして回転し、連接棒が運動を伝え、出力ロッカーが揺動する。各節の長さと対偶位置が運動特性を決め、ピンはすべりのない回転対偶とするのが基本である。連結順序と基準リンクの取り方で同じ長さでも異なる挙動を示す点に注意する。

運動分類

リンク長の組合せで型式が決まる。Grashof機構では少なくとも1節が360°回転可能で、ダブルクランク、クランクロッカー、ダブルロッカーの3類型が生じる。非Grashofでは全節が揺動し、入出力が有限角で往復する。用途に応じて型式を選び、必要ストロークと位相関係を満たすよう寸法を決める。

Grashofの条件

リンク長を短い順にs≤p≤q≤lとすると、s+l≤p+qなら少なくとも1節が全回転する。等号は臨界で屈曲位相が連続となり、不等号が反転すると非Grashofとなる。初期設計ではこの不等式で回転可能性を即時判定し、以後の寸法探索の探索空間を適切に絞り込むのが有効である。

伝達角と機構効率

伝達角μは連接棒と出力リンクのなす角で、力の伝達効率を表す。一般にμの最小値を50〜70°程度に保つのが望ましく、極端に小さいと偏心力・軸受荷重・摩耗が増える。トグル近傍ではμ→0となり運動が固くなるため、ストッパ位置やストローク設計で回避する。

位置解析

平面閉ループの位置はループ閉鎖で表せる。複素数表示ではr1e^{iθ1}+r2e^{iθ2}=r3e^{iθ3}+r4e^{iθ4}であり、θ1を0に固定すれば既知のθ2からθ3,θ4を解ける。実設計では開姿勢/交差姿勢の2解が生じるため、意図しない枝へ跳躍しないよう姿勢範囲と初期条件を管理する。

速度・加速度解析

閉鎖式を時間微分するとJ(θ)·̇θ=b、さらに微分して̈θを得る。Jが特異に近づくと出力角速度のピークや慣性力が増大する。リンク質量と慣性半径を見積もり、加速度ピークを抑えるプロファイル設計やフライホイールでエネルギ平滑化を行うと動力負荷と振動が低減する。

Freudenstein方程式による寸法総合

関数創成では所望の入出力角関係f:θ2→θ4を近似する。Freudenstein方程式K1cosθ2−K2cosθ4+K3=cos(θ2−θ4)を用い、3点精度なら未知K1〜K3を線形に決められる。多数点は最小二乗で係数を推定し、係数から節長比と対偶配置へ逆算して構造寸法を得る。

公差・クリアランス

ピン径と穴径の差、芯間誤差、面外曲げは運動誤差と騒音の主要因である。系統誤差は軌跡をずらし、クリアランスはヒステリシスを生む。公差解析には公差積上げとモンテカルロの併用が有効で、合わせ組みや選別でばらつきを抑えると四節リンクの再現性が向上する。

トグル機構と力の増幅

トグル位置では機械的利得が極大となり、プレスやクランプで小さな入力から大きな締付力を得るのに適する。一方で速度低下と応力集中を伴うため、停止ストッパ、過負荷保護、材料の疲労強度評価を合わせて設計し、寿命と安全率を確保する。

実用例

ワイパ機構、折り畳み機、包装機、ダブルウィッシュボーンサスペンションなどは四節リンクの応用である。コンパクトな配置で非線形揺動が得られ、空間をさばく自由度が高い。一方で潤滑管理とガタ抑制が性能維持に直結し、定期点検が必要である。

材料・軸受・製造

一般機械では炭素鋼や合金鋼の焼入れピンと焼入れ座金、青銅系ブッシュが定番である。軽量化にはアルミ押出や高張力鋼板のリブ補強が有効で、表面粗さや硬度は摩耗寿命を支配する。ピン圧入、止め輪、カシメなど量産性も同時に検討する。

CAD/CAEと最適化

MBDで運動と荷重を時系列評価し、FEMで連接棒の曲げと座屈を検証する。設計探索には遺伝的アルゴリズムや勾配法を用い、目的関数に伝達角、ストローク、干渉余裕、質量、応力を入れる。制約としてGrashof条件や占有体積、干渉回避を課す。

安全と保全

非常停止時の惰走角、指はさみの危険域、ピン抜け防止などの安全設計が重要である。潤滑周期、摩耗限界、バックラッシュ基準を点検表に落とし込み、定期にピンとブッシュを交換する。保全性は可用性と総所有コストを大きく左右する。

設計手順の要点

  1. 目的定義と入出力角仕様の設定
  2. 型式選択と初期節長比の仮定
  3. Grashof判定と回転可能性の確保
  4. 伝達角とトグル位置の評価
  5. ループ方程式で姿勢範囲を確認
  6. 速度・加速度と機械的利得の算出
  7. 干渉・ストッパ・クリアランスの設計
  8. 強度・疲労・剛性の検証
  9. 公差解析と組立方法の選定
  10. 試作・実測・最適化の反復

用語集

  • クランク: 360°回転可能な節
  • ロッカー: 有限角で往復揺動する節
  • 連接棒: 入出力を結ぶ中間節
  • 基準リンク: 固定された節
  • 伝達角μ: 連接棒と出力節のなす角
  • トグル: デッドセンタに相当する姿勢
  • DOF: 自由度、ここでは1
  • Freudenstein方程式: 関数創成の基本式