原子核
原子核とは、原子の中心部に存在する極めて微小な領域である。原子は電子によって取り囲まれた構造を持ち、その核の部分には陽子と中性子が集まっている。陽子と中性子を総称して核子と呼び、それぞれが持つ電荷の有無や質量の性質により、原子全体の化学的振る舞いが決定される。原子核のサイズはおよそ10^-15メートル程度と非常に小さく、電子が存在する空間に比べても桁違いに密度が高い。ここでは原子核の構造や安定性、エネルギーの概念について大学生レベルの知識をもとに概説する。
構造
原子核は陽子と中性子の組み合わせによって成り立つが、それらは量子力学的な相互作用によって特定のエネルギー準位を占めて存在している。核子同士がどのように配置されるかは、主に陽子の数と中性子の数によって決まり、核子が満たす軌道構造は殻モデルなどで説明される。各殻が満たされると安定な配置になり、特定の陽子数・中性子数で特に安定度が高くなる魔法数という概念も見いだされている。
陽子と中性子
陽子は正の電荷を持ち、中性子は電荷を持たない。陽子数が原子番号として定義され、元素の種類を決定する。例えば陽子が1個ならば水素、陽子が2個ならばヘリウムというように分類される。一方、中性子数が変化することで同じ元素でも質量数の異なる同位体が生じる。陽子同士が電磁気力で反発し合うため、原子核が安定を保つには中性子の存在が欠かせない。中性子は陽子と同じ程度の質量を持ち、それらが協調して核力のもとでまとまっている。
核力
原子核をまとめているのは電磁気力とは異なる強い相互作用、すなわち核力である。核力は陽子や中性子同士を強固に結びつけるが、その作用距離は非常に短い。したがって核子が密集していれば強い結合を示す一方、核子数や比率が不適切になると一部の核子がこぼれるように崩壊してしまう。核力の詳細は量子色力学の枠組みで理解されるが、大学レベルでは有効的なポテンシャルを導入して説明されることが多い。
結合エネルギー
核子が集まって原子核を作り上げる際には、質量欠損と呼ばれる現象が起こり、その分だけエネルギーが放出される。これが結合エネルギーであり、この値が大きいほど核が安定していると考えられる。鉄やニッケル付近の核種が最も大きな結合エネルギーを持つため、核融合と核分裂の境目で効率的にエネルギーを得ることが可能になる。質量とエネルギーはアインシュタインの有名な方程式E = mc^2で関係づけられており、核反応で微量の質量が変化するだけでも膨大なエネルギーが得られる。
放射性崩壊
核子のバランスが崩れた原子核は放射性同位体となり、安定核に近づこうと放射線を放出しながら崩壊する。一般的にはα崩壊、β崩壊、γ崩壊などがあり、α崩壊ではヘリウム原子核、β崩壊では電子や陽電子、γ崩壊では電磁波が放出される。これによって核種が別の元素へと変化することもあり、自然界ではこうした現象によって同位体が循環している。放射性崩壊の過程と速度は核物理学の研究対象であり、地球上の放射能分布や年代測定などに応用されている。
核反応とエネルギー
- 核融合:軽い原子核同士が結合して重い核になる反応。太陽などの恒星内部で進行している主要なエネルギー源である。
- 核分裂:重い原子核が中性子の衝突などを契機に分裂し、より軽い核種へと変化する反応。原子力発電や核兵器の原理として利用される。
これらの核反応を制御することで、大量のエネルギーを人類は取り出すことが可能になった。しかし放射性廃棄物や安全管理の問題もあり、社会的な課題として議論が続いている。