単相
単相は単一の正弦波交流を用いる電力方式であり、家庭用配電や軽負荷機器の駆動に広く採用される。配電用変圧器の二次側から2線(または中性線を含む3線)で供給され、電圧は地域や規格により異なる。日本では一般に100V系が標準で、電気温水器やエアコンなどで200Vの単相負荷が使われる場合もある。設計上は実効値、位相角、力率を用いて電力P、皮相電力S、無効電力Qを評価し、導体容量や保護協調を決める。
定義と波形
単相は時間に対してV(t)=√2·Vrms·sin(ωt)の一相のみで構成される。周波数は50Hzまたは60Hzが一般的で、周期T=1/fである。正弦波であることからフーリエ解析が容易で、線形負荷では基本波のみで評価できる。電源と負荷が一対一で結ばれるため、相回転や相順といった三相特有の概念は不要である。
2線式と3線式
単相配電は主に2線式(L-N)と3線式(L1-N-L2)がある。3線式では中心タップ付き変圧器により±V/2の電圧が得られ、100V負荷を左右にバランス配置し、200V負荷をL1-L2間に接続する。中性線には不平衡分電流が流れるため、分岐回路設計では負荷配分と導体断面の選定が重要となる。
RMSと電力
実効値はVrms=Vpeak/√2、Irms=Ipeak/√2で定義される。電力はP=VrmsIrmscosθ、皮相電力S=VrmsIrms、無効電力Q=VrmsIrmssinθである。力率cosθは配電効率と導体損失に直結し、家庭内単相でも力率改善(コンデンサ補償)が有効な場合がある。
位相とフェーザ表現
単相交流はフェーザ(複素ベクトル)で表すと解析が簡潔になる。電圧を基準としたとき、誘導性負荷では電流が遅れ、容量性負荷では進む。回路網計算では複素インピーダンスZ=R+jXを用い、I=V/Zで電流と位相を同時に得る。
負荷特性(R・L・C)
- 抵抗負荷:電圧と電流が同相、P=VIのみが存在。
- 誘導負荷:電流遅れ、無効電力Qが増加、力率低下。
- 容量負荷:電流進み、過度の進みは電圧上昇の要因。
家電ではモータと電子電源が混在し、非線形性により高調波が生じる。単相系では高調波電流が中性線へ重畳しやすく、配線容量や漏電遮断器の選定に配慮する。
配電方式と保護
単相配電では引込線、分電盤、分岐回路、接地系を含む。過電流保護は配線用遮断器(MCB)やヒューズで行い、地絡保護は漏電遮断器(RCD)を用いる。接地方式は系統と機器の安全設計に直結し、規格(JIS/IEC)に従って導体サイズ、遮断容量、遮断時間を整合させる。
変圧器と配電トポロジ
単相変圧器は昇降圧・絶縁・インピーダンス整合に用いられる。住宅街では柱上変圧器から低圧単相を供給し、3線式で電圧・容量の柔軟性を確保する。短絡インピーダンスは故障電流と電圧変動に影響し、選定時の要点である。
モータ駆動
単相誘導電動機は回転磁界が弱いため、コンデンサ始動や分相巻線で始動トルクを確保する。可変速にはインバータ(VVVF)が用いられ、直流リンクを介して単相整流し三相を合成する方式が一般的である。家電や小型ポンプで広く普及する。
三相との比較
同容量なら三相は導体利用効率とトルク脈動で優位だが、配線・機器が複雑でコストも増える。小容量・分散配置・既存住宅の条件では単相が実用的で、単純な敷設とメンテナンス性が利点となる。要求容量が増す場合は単相2台の並列や単相200Vの活用を検討する。
測定とトラブルシューティング
単相系の品質評価では、RMS電圧、電流、力率、THD(総合高調波歪率)、瞬時電圧低下(dip)、フリッカなどを計測する。オシロスコープや電力計で負荷投入時の波形変化を確認し、配線抵抗や接触不良、共通インピーダンス起因の電圧降下を診断する。
高調波とEMC
整流器やスイッチング電源は奇数次高調波を発生し、単相配電で中性線に三次高調波が集中することがある。対策としてラインフィルタ、パッシブ/アクティブPFC、適切な配線ループ最小化が用いられる。EMC規格に適合させることで他機器への妨害を抑制する。
設計指針の要点
- 需要計算:同時使用率を見積もり、単相回路の容量と電圧降下を評価。
- 力率管理:コンデンサ補償やPFCで配電損失を低減。
- 保護協調:遮断容量、トリップ特性、接地故障時の遮断時間を整合。
- 温度上昇:導体・端子の許容温度と配線方式を考慮。
- 維持管理:端子増し締め、絶縁抵抗測定、負荷バランスの定期点検。
地域条件と規格
日本の単相供給は50/60Hzが混在し、移設や機器選定時に周波数適合を確認する。電圧クラスや配線色、接地方式などは規格に依存するため、設計・施工・検査の各段階で該当規格を参照して整合を取ることが重要である。