加速度センサモジュール|振動・傾き・衝撃を高精度測定

加速度センサモジュール

加速度センサモジュールは、物体の加速度や傾きを電気信号として出力する小型の計測ユニットである。内部に加速度検出素子、信号調整回路、必要に応じてマイコンやレギュレータ、インターフェース回路を一体化し、基板へ実装すれば直ちにデータ取得を開始できるのが特徴である。スマートフォン、ウェアラブル、産業機械の状態監視、ロボットの姿勢制御、車載セーフティ、家電のジェスチャ入力など、幅広い分野で用いられる。

定義と構成

加速度センサモジュールは、一般に三軸(X/Y/Z)の加速度を計測する。中心要素はMEMS加速度計であり、微細加工された可動質量と固定電極の静電容量変化や、圧電素子の電荷出力などにより慣性力を電気信号へ変換する。モジュールには増幅器、A/D変換(ADC)、温度センサ、レジスタ制御、割り込み(INT)端子、FIFOバッファなどが実装され、外部MCUとの接続を簡易化する。

動作原理

加速度検出はニュートンの第二法則に基づく。MEMS静電容量方式は、可動梁の変位に伴う容量差を検出し直流(DC)から低周波まで測れるため、重力成分を用いた傾き推定に適する。圧電方式は電荷出力が主で高周波振動に強く、機械の振動監視や衝撃計測に有利である。ひずみ抵抗(ピエゾ抵抗)方式はブリッジ回路で検出し温度補償と組み合わせて広いレンジを狙える。

方式の特徴

  • 静電容量式:DC応答可、低ノイズでスマホ・IMU用途に主流。
  • 圧電式:AC応答中心、広帯域・高gの衝撃や振動解析に適する。
  • ピエゾ抵抗式:堅牢で応答性良好、温度補償設計が重要となる。

出力とインターフェース

  • アナログ出力:差動/単端の電圧出力。外部ADCで分解能・帯域を設計できる。
  • デジタル出力:I2CまたはSPIを備える。レジスタでレンジ(±2 g〜±16 g等)、出力データレート(ODR)、フィルタ、割り込み(タップ検出、自由落下、モーション)を設定する。
  • 電源:多くは1.8 Vまたは3.3 V。内部LDOやレギュレータ搭載品もあり、ノイズ対策として0.1 µF+10 µFのデカップリングを近接配置する。
  • 機能:FIFOでバースト読み出し、時刻スタンプ、自己診断、温度出力などを備える製品がある。

主要仕様の読み方

  • 計測レンジ:±2/±4/±8/±16 gなど。小レンジほど感度が高く微小加速度に強い。
  • 感度・スケールファクタ:LSB/gまたはmV/g。レンジ切替で動的に変化する。
  • ノイズ密度:例として100 µg/√Hz級。帯域を狭めるほど実効ノイズは低下する。
  • 帯域・ODR:25 Hz〜1.6 kHzなど。アンチエイリアスのためODRの半分以下に信号帯域を制限するのが基本である。
  • ゼロgオフセット:0 g時の出力偏差。温度ドリフトと併せて補正対象となる。
  • クロスアクシス感度:他軸影響の混入率。姿勢推定や振動計測の誤差要因である。
  • 衝撃耐性:2000〜10000 g級の耐衝撃を持つ型もあり、落下・実装時の破損を抑える。

ノイズと帯域幅

出力ノイズはノイズ密度に観測帯域の平方根を掛けた値が目安となる。したがって必要帯域を最小に絞るローパス設定が有効である。デジタル品では内蔵FIR/IIRを活用し、アナログ品では外付けRCで帯域設計を行う。

実装と回路設計

  • 電源/グランド:センサ近傍にデカップリング、GNDプレーン連続性を確保しリターン経路を短くする。アナログ/デジタルの分離は過度にせず、単一点での接続を意識する。
  • I2C:プルアップ抵抗値はバス容量に合わせて選定し、立上り時間を仕様内に収める。SPIはクロック/データのペア配線長を揃える。
  • EMI/ESD:ESD保護素子の挿入位置に注意し、保護後の容量が帯域に与える影響を評価する。
  • レイアウト:センサ直下の多層スリットや大きなビア密集を避け、実装歪みを低減する。筐体と基板の固定は剛性と減衰のバランスをとる。
  • 実装方向:重力1 gでの校正を考慮し、製品姿勢に合わせて軸定義を明確化する。

キャリブレーション

  1. 6面校正:±X/±Y/±Zの静置でオフセットとスケールを推定する。
  2. 温度補償:温度チャンバで複数点を取り、一次/二次の温度係数をモデル化する。
  3. 整列補正:軸ズレやクロスアクシスは3×3行列で補正し、姿勢演算の精度を上げる。
  4. 動的検証:シェーカでサイン掃引またはランダム振動を与え、感度周波数特性を評価する。

データ処理とアルゴリズム

加速度センサモジュールのデータは、ローパスで重力成分を抽出すれば傾き推定、高域成分を解析すれば振動監視に使える。さらにジャイロや地磁気と組み合わせたIMU構成では、コンプリメンタリフィルタやKalman/Madgwick法でセンサフュージョンを行い、姿勢・動作推定の安定性を高められる。振動解析では時間波形からFFTでスペクトラムを求め、共振・アンバランス・ベアリング異常などの兆候を抽出する。

用途例

  • モバイル/ウェアラブル:画面回転、歩数、ジェスチャ入力、転倒検知。
  • 産業設備:モータ/ポンプのCBM(状態基盤保全)、予知保全。
  • ロボット/ドローン:姿勢安定、航法補助、衝突検知。
  • 車載:エアバッグトリガ、横滑り検知、テレマティクスのイベント記録。
  • インフラ/建築:地震・揺れ監視、構造ヘルスモニタリング。
  • 家電/IoT:洗濯機バランス制御、開閉検知、異常振動アラート。

選定のポイント

  • レンジとノイズのトレードオフ:目標信号の最大gと最小検出gを同時に満たす設定を選ぶ。
  • 帯域/ODR:対象現象の周波数上限の少なくとも2倍以上のODRを確保する。
  • 消費電力:常時監視は低消費モードとハードウェアイベント(ウェイクオンモーション)活用が有効。
  • サイズ/実装:LGA等の小型パッケージか、基板・コネクタ含む完成モジュールかを用途で選ぶ。
  • 環境条件:温度範囲、湿度、衝撃、振動レベル、長期安定性(ドリフト)。
  • ソフト資産:レジスタマップ、ドライバ、評価用GUIやログ機能の有無。

信頼性・規格

車載向けはAEC-Q100やPPAPを要求される場合がある。環境規制はRoHS/REACHへの適合が基本であり、製品寿命を左右する実装ストレス、落下衝撃、温度サイクル、湿熱試験などの結果を確認するとよい。トレーサビリティの確保や校正記録の管理は、不具合解析や品質保証に直結する。