冷温水|空調・給湯を支える循環熱媒水

冷温水

冷温水とは、空気調和(HVAC)や産業プロセスで冷却・加熱の媒体として循環させる水の総称である。冷水はチラー等で所定温度に下げ、温水はボイラや熱源機で昇温し、配管・ポンプ・熱交換器・端末機器(AHU/FCU/コイル)を介して熱を搬送する。水は比熱が高く粘度も低いため、同じ配管径で大きな熱量を安定に輸送できるという利点がある。空調では建物負荷に応じて流量や供給温度を制御し、快適性と省エネの両立を図る。

定義と役割

冷温水は熱源と需要家を結ぶ熱媒であり、熱を「貯めずに運ぶ」役割を担う。冷房時は室内の顕熱・潜熱をコイルで水へ移し、温房時は水側から室内空気へ放熱する。冷水・温水ともに閉ループで用いられることが多く、系内の圧力・水質・膨張を適正に保つことで長期の安定運用を実現する。

温度範囲と物性

一般的な空調用途では、冷水の供給温度は約5–7℃、戻りは約12–13℃、温水は供給60–80℃、戻り40–60℃が目安である。水の定圧比熱cpは約4.19kJ/(kg·K)、密度は約1kg/Lであり、ΔTを大きく取るほど必要流量は減る。極低温では凍結リスクがあるため、用途により不凍液や断熱厚の見直しが必要となる。

システム構成

代表構成は、熱源(チラー/ボイラ/ヒートポンプ)、一次・二次ポンプ、熱交換器、配管・バルブ、端末(AHU/FCU)、膨張タンク、空気分離器、薬注装置、ストレーナ、計装(流量・温度・差圧)である。二方弁制御を採用する可変流量方式では、差圧制御とバイパスの最適化が省エネに効く。

主要機器の要点

  • ポンプ:VFD制御で部分負荷効率を確保し、NPSHや配管損失に基づき揚程を設定する。
  • 膨張タンク:熱膨張を吸収し、系圧力を安定化する。
  • 空気分離・汚れ管理:エア抜きとストレーナでキャビテーション・腐食を抑制。

流量と熱量の計算

熱搬送量Q̇=ρ·cp·q·ΔTで評価する(:kW、ρ:kg/L、q:L/s)。例えば500kWの冷房負荷をΔT=5Kで運ぶと、必要流量はおよそ500/(4.19×5)≈23.9L/sとなる。ΔTを最適化すればポンプ動力と配管径の両面で有利になる。

配管材料と断熱

配管は鋼管、銅管、ステンレス、樹脂管(架橋PE等)から選定する。冷水では露点管理と結露対策が最重要で、断熱材の熱伝導率と防湿性能(透湿係数)を確認する。温水では高温・熱伸び・腐食環境を考慮し、保温厚と支持間隔、伸縮継手の配置を検討する。

不凍液の選定

低外気環境や装置保護にはエチレングリコールまたはプロピレングリコールを添加する。濃度上昇は粘度増・熱伝達低下を招くため、凍結点とポンプ動力のバランスで最小必要濃度に抑える。

水処理と衛生管理

閉回路であっても溶存酸素や異物に起因する腐食・スケール・スライムは発生する。防食剤・スケール抑制剤・バイオサイドの適正維持、pH・導電率・鉄分の定期測定、系統洗浄とブローが肝要である。開放部や冷却塔を介する場合は微生物管理を一層厳格にする。

制御方式と省エネ

二方弁+可変流量では差圧センサとポンプVFDを連動し、末端代表点のΔP一定制御で最低必要流量を確保する。三方弁系ではバイパス流量が増えやすく、ΔT崩壊に注意する。外気負荷・時間帯・在室率に応じた供給温度リセット、チラー群管理、凝縮器側の低ΔT対策など、系全体での最適化が重要である。

計測・監視

BTUメータや超音波流量計、温度センサにより回路別の熱量を可視化し、ΔT低下や過大流量を早期検知する。差圧・揚程・電力も常時ロギングし、ポンプBEPIや負荷率別COPで評価すると改善点が抽出しやすい。

設計・運用上の留意点

  1. 水側バランシング:動的バランス弁や自動定流量弁で端末ごとの過不足を是正する。
  2. 騒音・振動:ポンプ基礎、フレキ継手、防振台を適切に選ぶ。
  3. 保全性:ドレンパン勾配、点検スペース、バルブ配置、系統ごとのドレン・エア抜きを確保する。
  4. 拡張性:将来負荷を見込んだバルブブランチやスリーブを計画する。

法規・基準の観点

水質管理や断熱、防火区画貫通部の処理、圧力容器・安全弁の扱いなどは関連法規・JIS・設計指針に整合させる。記録・点検・修繕履歴を体系化し、運用中のデータに基づく最適運用(OPEX最小化)へ継続的に反映することが望ましい。

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