光ファイバ伝送
光ファイバ伝送とは、ガラスやプラスチックなどの光ファイバを介して、レーザ光などの光信号を送り、大容量かつ高速でデータを伝達する技術である。光は電磁波の一種であり、ファイバ内部で全反射を繰り返しながら減衰を最小限に抑えて遠方まで伝搬する。近年、インターネットやクラウドなどの普及に伴い、膨大な情報を効率よく送る需要が急増しており、長距離かつ高信頼度の通信を実現する光ファイバ伝送が不可欠なインフラとなっている。
ファイバの構造と原理
光ファイバは中心にコア、その周囲にクラッドという層で構成される。コアの屈折率をクラッドより高く設計することで、光が境界面で全反射を起こし、損失を抑えながらコア内部を伝わる。シングルモードファイバ(SMF)ではコア径が小さく、単一モードのみが伝送されるため分散が少なく長距離伝送に適している。一方でマルチモードファイバ(MMF)はコア径が大きく、多数のモードが同時に伝搬するが、大きな距離ではモード間分散が増大し、高速長距離通信には不向きとなる。
長距離伝送技術
大規模通信ネットワークでは光信号を数百km以上送る必要があるため、伝送損失や分散を補償する技術が欠かせない。エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)は波長1.55μm付近で光信号を直接増幅し、中継装置の数を削減してシステムの簡素化を可能にした。また、分散補償ファイバ(DCF)などを組み合わせて波形の広がりを抑制し、ビット誤り率(BER)の上昇を防ぐ技術も広く採用されている。このような高度な補償技術の導入により、海底ケーブルなどの超長距離伝送が現実のものとなった。
多重化技術
大容量化を図るために用いられるのが波長分割多重(WDM)である。複数の異なる波長の光信号を一本の光ファイバに同時に乗せることで、実質的な伝送速度を大幅に増やすことが可能となる。また、時分割多重(TDM)や符号分割多重(CDM)といった方式を併用し、さらなる大容量化を目指す事例も存在する。これらの多重化技術が確立したことで、インターネットバックボーンや幹線ネットワークは莫大なトラフィックを支えられるようになった。
システムを構成する要素
- 光送信器: レーザダイオード(LD)を用いて所望の波長を生成
- 光ファイバ: 減衰や分散を低減するために最適化された材質と構造を採用
- 光受信器: フォトダイオード(PD)やアバランシェフォトダイオード(APD)で光を電気信号に変換
- ネットワーク機器: ルータやスイッチによるパケット処理、誤り制御など
利点と課題
- 広帯域・大容量: 電線と比べはるかに高い周波数帯を使うため、一度に運べる情報量が膨大
- 低損失: 光ファイバは減衰係数が非常に小さく、長距離でも信号品質を保ちやすい
- 電磁干渉なし: 光信号は電気的ノイズの影響を受けないため、クリアな通信が可能
- コスト・敷設上のハードル: 光ケーブルの配線工事は初期投資が大きく、設置環境によっては負担が大きい
アクセスネットワークとFTTH
近年は一般家庭や企業へ直接光ファイバを敷設するFiber To The Home(FTTH)が普及し、高速ブロードバンドサービスを享受できる環境が整いつつある。PON(Passive Optical Network)によって分岐器を用い、スプリット配信を効率的に行う手法がよく用いられる。これにより、従来の銅線ケーブルでは困難だったギガビット級・テラビット級の帯域を家庭やオフィスにもたらせる可能性が高まり、遠隔医療や大容量映像配信などの応用範囲が拡大している。
新たな動向と実用化
マルチコアファイバや空間分割多重(SDM)など、ファイバ内部の空間領域を複数に分けて同時伝送容量を増強する研究が進んでいる。これまでのWDMとの組み合わせで、1本のファイバが扱う情報量をさらに数倍から数十倍に拡大できる。また、高次変調方式(QAM)やデジタルコヒーレント伝送技術が実用化し、大幅なスペクトル効率向上が図られている。こうした革新的な技術革新によって、未来の通信ネットワークはさらなる大容量化と低遅延を同時に追求できるようになる。