信頼性設計
信頼性設計とは、所定の期間・条件下で製品やシステムが故障せず機能を維持する確率を最大化するための設計体系である。品質(不具合の少なさ)・安全(危害の回避)・コスト(LCCの最小化)・納期の制約下で、要求信頼度の達成とバラつきの抑制を同時に図る。設計段階から故障モードを予見し、部品選定、余裕設計(derating)、冗長化、検証試験、データ解析を統合して、量産時の再現性と保全容易性を担保するのが特徴である。
基本概念と目的
信頼性は「一定時間tで稼働する確率R(t)」で表し、故障率λ(t)や寿命分布と密接に関係する。運用可用性(Availability)、保全性(Maintainability)、安全性(Safety)を含むRAMSの枠組みで、要求仕様から信頼性目標を定量化し、設計・製造・保守のライフサイクルに埋め込む。信頼性ブロック図(RBD)で機能連鎖を可視化し、系列・並列・k-out-of-n構成の弱点を特定する。
主要指標と分布モデル
- 信頼度R(t)、累積故障分布F(t)、密度f(t)、ハザード関数λ(t)の相互関係を用いる。
- 平均故障間隔MTBF/平均故障時間MTTF、平均修理時間MTTR、可用率A=MTBF/(MTBF+MTTR)を基本指標とする。
- 分布は指数・ワイブル・対数正規を用い、ワイブル形状母数βで初期故障(β<1)、偶発故障(≈1)、摩耗故障(>1)を識別する。
設計プロセス
- 要求定義:ミッションプロファイル、使用環境、目標R(t)・A、安全要求レベルを明確化する。
- アーキテクチャ設計:RBDによる機能分解とボトルネック抽出、信頼度配分(apportionment)を実施する。
- 詳細設計:定格の70〜80%で使う余裕設計、熱設計・振動対策・防湿防塵、部品グレードの選定を行う。
- 検証・妥当性確認:解析(FMEA/FMECA、FTA)と試験(環境・寿命・強度)を繰り返し、設計マージンを最適化する。
余裕設計と冗長化
電気・機械のストレス(温度、電圧、応力、湿度)を低減する余裕設計は長期の故障率を下げる。冗長化は並列・待機・ディスパッチ型など構成を選び、フェールセーフ/フェールソフトの設計思想で安全機能を残す。コールドスタンバイは消耗を抑え、ホットスタンバイは切替遅延を抑えるなど運用条件で選定する。
解析手法の体系
- FMEA/FMECA:機能・部品・プロセスの各視点で故障モード・影響・重大度・検出度を評価し、優先度を定める。
- FTA:トップ事象から論理展開し、カットセットと寄与度で設計弱点を特定する。
- RBD/マルコフ解析:復旧や共通原因故障を含む可用性解析に用いる。
- ワイブル解析:寿命データの母数推定、保証期間設定、スペア戦略に活用する。
- FRACAS:故障報告・解析・是正を循環させ、現場知見を設計へ戻す。
データ解析と統計設計
打切り(右打切り、区間打切り)を含む寿命データには最尤推定やベイズ推定を適用し、信頼下限(CL)を保証値として採用する。共変量を伴う寿命回帰で温度・振動・負荷の影響をモデル化し、設計変更の効果を定量検証する。
試験計画と規格適合
ライフテスト、環境試験(温湿度、塩霧、振動、衝撃)、通電ストレスなどを計画し、サンプル数・試験時間・合格判定(c=0等)を最適化する。量産移行時にはスクリーニング(HASS)で初期欠陥を除去し、監視特性(OC)とリスク(α/β)を管理する。規格はJIS/IEC等を参照し、試験条件のトレーサビリティを保持する。
加速寿命と環境ストレス
- Arrhenius:温度依存の活性化エネルギーで加速係数を算出する。
- Coffin–Manson:熱疲労のひずみ振幅と寿命の関係を評価する。
- Eyring:温度・電圧・湿度など複数ストレスの合成効果を表現する。
- HALT/HASS:設計限界探索と量産スクリーニングで用途を分ける。
ソフトウェアにおける適用
ソフトウェアでは物理故障は起きないが、欠陥密度・故障発生率の時間変化を信頼性成長モデルで捉える。静的解析、形式手法、コードレビュー、CIによる自動テスト、フェイルセーフ状態遷移、フォールトインジェクションで異常時の挙動を設計段階から検証する。
保全戦略とライフサイクル
予防保全に加え、状態基準保全(CBM)や予知保全(PHM)でセンサデータから劣化兆候を検知し、最適な交換時期を導く。スペアパーツの在庫最適化と現場交換性(モジュラリティ、工具共通化)を高め、稼働率を最大化する。設計・製造・現場の横断ループで知見を更新し続けることが重要である。
経済性と最適化
信頼性向上はコスト増と表裏であるため、LCC、停止損失、保証費、安全リスクを含む目的関数を定義し、設計マージン・冗長化・検査強度の配分を最適化する。設計初期の小さな改善が後工程での大きな再発防止効果を生むため、上流での解析と試験計画が全体効率を左右する。