二酸化シリコン
二酸化シリコンは、ケイ素(Si)と酸素(O)が1対2の割合で結合した化合物であり、自然界では石英や珪砂などの形で広く存在する。別名としてシリカ(silica)とも呼ばれ、ガラスや光通信に用いられる光ファイバ、半導体の絶縁膜など、先端産業から日用品に至るまで幅広く利用されているのが特徴である。結晶性の石英からアモルファスのガラスまで多様な形態をとり、それぞれの特性を活かして様々な分野で活躍している。本稿では、この二酸化シリコンの基本的性質や製造方法、工業材料としての用途、そして半導体プロセスにおける役割について概観する。
基本的性質
天然に存在する二酸化シリコンは、ケイ素原子が四面体構造を形成し、その結合が三次元的に連なって安定した骨格を生み出している。化学的には酸や塩基に対して比較的強く、室温で多くの薬品に侵されにくい性質を持つ。融点は約1,700℃と高温に耐えられるため、高い耐熱性や耐薬品性が求められる領域で重宝されてきた。結晶形の石英は光学的に透明で硬度も高く、精密機械の部品や実験用の光学機器などにも用いられる。アモルファスの場合は分子配列に秩序がなく、ガラス独特の温かみある質感を持つ点が特徴である。
石英とガラス
石英は純度の高い二酸化シリコンが結晶化しているもので、宝石としての水晶や天然鉱物としての石英鉱などが知られている。一方、ガラスは高温で溶融した二酸化シリコンを急冷し、結晶構造を持たない状態で固化させたものである。ガラスは熱膨張率の低さや電気絶縁性の高さなど、結晶化合物にはない特性を発揮するため、電子デバイスや建材、光学機器といった多彩な分野で利用されている。特に光ファイバは透明度に優れたガラスの細長い繊維を通信媒体として用いる仕組みであり、インターネットやケーブルテレビなど、現代の情報通信基盤を支える重要な技術となっている。
製造方法
高純度の二酸化シリコンを得るためには、化学的精製や融解などの工程が欠かせない。例えば半導体プロセスで使用されるシリカガラスは、SiCl4などのケイ素化合物を酸素雰囲気中で燃焼させる方法(フレーム水晶法)や、高純度結晶を電気炉で溶融する方法などが一般的である。いずれの工程でも、微量元素や不純物の混入を極力排除するためのクリーンな環境が求められる。溶融や成形時の温度管理もきわめて重要であり、わずかな熱処理の違いが物性や品質を大きく左右するため、製造現場では高度な制御技術が導入されている。
半導体プロセスへの応用
半導体チップ内のトランジスタ構造には、ゲート酸化膜として絶縁層を形成する際に二酸化シリコンが不可欠とされてきた。シリコンウェハー表面を酸化することで、デバイス内部の電気的特性を最適に制御できるほか、微細加工技術との相性が良いため、長年にわたって業界標準的に用いられてきたという背景がある。近年ではより高誘電率の材料が開発されているものの、依然として高信頼性が求められる回路ブロックでは二酸化シリコンの薄膜を利用する例も多い。ゲート酸化以外にも、保護膜や絶縁膜など、多彩な活躍の場がある。
多様な用途と微粒子化
二酸化シリコンはガラスや石英の形だけでなく、微粒子やコロイド溶液としても応用されている。シリカエアロゲルやシリカゾルなどと呼ばれる超軽量または超微細分散の状態では、触媒担体や吸着材、研磨材、添加剤など多岐にわたる役割を担う。塗料やインクなどに微粒子を混ぜることで光学特性や流動性を改善でき、医薬品の製造では粉末の流動性向上に寄与することもある。こうした機能性材料としての可能性から、ナノスケールまで制御可能な合成技術がさらに進歩しており、各種産業における新しい付加価値創出が期待されている。
先端分野への展開
光通信や半導体だけでなく、人工水晶の育成や太陽電池向けの封止材料など、多くの先端技術が二酸化シリコンをベースに展開している。人工水晶は高純度な溶液から結晶成長させたもので、精密な発振器用の水晶振動子や特殊レンズなどに用いられており、その安定した振動特性や光学特性が評価されている。また、太陽光パネルに用いる封止材としてのシリカベースのガラスは、耐候性や透過率の高さから発電効率を損なわずにパネルを保護する。これらの事例はすべて、ケイ素をめぐる化学構造の豊かさと利用技術の進歩が切り拓いてきた成果であるといえる。