ワッシャ
ワッシャは、ねじ締結部に介在させて荷重を分散し、当たり面の損傷や沈み込みを抑える座金である。軸力を安定化し、緩みの一因となる座面の塑性変形や微小すべりを低減する効果を持つ。一般に並形・小形・大形の寸法系列があり、平座金、ばね座金、歯付き座金、シール座金、絶縁座金など機能別の種類が用意される。材質は炭素鋼、ステンレス鋼、銅合金、樹脂などが代表的で、表面処理や硬さの選定によって、腐食、摩耗、電食、電気絶縁といった設計要件に応える。
定義と基本機能
ワッシャの主機能は、接触圧の分散、締付け軸力の保持、座面保護の3点である。座面が柔らかい母材(アルミや樹脂、溶融亜鉛めっき鋼板など)の場合、座金なしでは座面がめり込み、初期軸力が低下しやすい。座金を介在させることで有効受圧面積が増え、面圧p=F/Aが低下して沈み込みを抑制する。また座面の平滑化により摩擦係数のばらつきが減り、トルク管理の再現性が向上する。
標準規格と種類
平座金はJIS B 1256で寸法系列が整備され、呼びMに対して内径・外径・板厚が規定される。ばね座金(スプリングワッシャ)はJIS B 1251が代表で、割りばね形状の弾性により戻り力とすべり抵抗を付与する。歯付き座金は外歯・内歯の突起で座面に食い込み、振動下でのすべりを抑える。シール座金は金属とゴムを一体化し、ボルト貫通孔の漏れを防ぐ。絶縁座金は電気回路の絶縁・電食対策として用いられる。
寸法・材質・硬さ
呼びM8なら内径はおおむね8.4 mm程度、外径は並形・大形など系列で変わる。板厚は座面の面圧と剛性に影響するため、沈み込みが懸念される場合は厚めや大形系列を選ぶ。鋼製は強度とコストのバランスがよく、表面は溶融亜鉛、電気亜鉛、ダクロなどの処理が用いられる。ステンレスは耐食性に優れるが、相手材とのかじりを避けるため面粗さや潤滑に配慮する。硬さは相手の締結部品より十分高いことが望ましく、HV値やHRCで管理される。
設計・選定の要点
- 面圧設計:受圧面積A(環状面)に対し許容面圧を超えないよう外径・板厚を選ぶ。
- 母材保護:軟質材には大形・厚肉や座ぐりプレートを採用し、沈み込みとフレッティングを抑える。
- 軸力保持:緩み止めは座金単独に依存せず、適正トルク、ねじロック、二面幅管理、座面仕上げを組み合わせる。
- 位置:ヘッド側・ナット側のいずれにも配置できるが、座面状態の悪い側へ優先配置する。
- 表面:潤滑有無で摩擦係数が変わる。トルク換算は仕様に応じて再計算する。
施工上の注意とトラブル対策
割り形ばね座金は切欠き部の角を上側に向ける慣行があるが、最重要は均一な当たりの確保である。歯付きは相手面を傷つけるため仕上げ要求や再使用性を考える。過大トルクでは座金自体が塑性変形し、初期軸力が却って失われる。微小すべりによるフレッティングには高硬度の平座金や固体潤滑膜を併用する。液密を要する場合はシール座金を使い、締付け後の圧縮量を設計に反映する。
計算の勘所
受圧面の環状面積AはA=π/4(Do2−Di2)で近似できる。許容面圧σallowに対し、F/A≦σallowを満たす外径・厚みを選ぶ。摩擦係数μの不確かさは締付け軸力のばらつきに直結するため、座面材質・処理・潤滑状態を揃え、試験片でトルク係数Kを実測しておくとよい。座金追加で総ばね定数が変わり、緩み感度が下がる場合がある一方、部品点数増で誤組付けリスクは増すため、効果と現場性を両睨みで判断する。
製造方法と品質管理
ワッシャは板材の打ち抜き・穴明け後、バリ取り・面取り・平面矯正・熱処理・表面処理の工程を経る。打ち抜き方向で入出側のバリ性状が異なるため、座面の向きを設計・工程票で統一する。平面度、内外径公差、板厚、硬さ、表面粗さは受入れ検査で確認し、抜き勾配やドロス付着は外観限度見本で管理する。シール座金ではゴム硬さ、圧縮永久ひずみ、接着強度が重要となる。
使用シーンと実務ポイント
- 機械構造:軸受ハウジング固定やブラケット締結で、座面の座屈・座繰り防止に平座金を用いる。
- 配管・油圧:開口部の漏れ対策に金属+ゴムのシール座金を使い、再使用は避ける。
- 電気:絶縁座金で導通経路を分離し、逆に接地が必要な箇所では歯付きで確実な接触を得る。
- 屋外構造:耐食を優先しステンレスや重防食処理を選ぶ。異種金属接触は防食スペーサで緩和する。
関連部品との関係
ワッシャはボルト、ナット、座ぐり、スペーサと組み合わせて機能する。特に座面精度が悪い鋳物や塗装面では座金が面の均質化に寄与し、トルク管理のばらつきを抑える。高力締結では高硬度の平座金を用い、面圧・座面粗さ・潤滑条件を合わせ込み、締付けの再現性を確保する。
用語の補足(座金/ワッシャ)
工業用語としては「座金」が正式であるが、現場では英語由来のワッシャが広く通用する。図面や手配書では表記を統一し、規格番号・材質記号・表面処理・硬さを併記して誤出荷や誤組付けを防止することが望ましい。