ローラーベアリング
ローラーベアリング(ころ軸受)は、転動体に円筒・円すい・球面・針状の「ころ」を用いる転がり軸受である。点接触のボールベアリングに比べ線接触となるため、同外径で高い定格荷重に耐えるのが最大の特長である。重荷重・衝撃荷重・低速〜中速域に適し、減速機、工作機械主軸、鉄道車両、風力発電、鉱山機械などで広く使われる。一方で、許容速度はボール型に劣る場合が多く、潤滑・予圧・内部すきま管理が性能を左右する。
基本構造と働き
ローラーベアリングは内輪・外輪・ころ・保持器(ケージ)で構成される。ころが軌道面上を転がり摩擦係数を大幅に低減する。線接触のため接触面圧を下げられ、弾性変形が小さく、剛性向上に寄与する。ラジアル荷重主体だが、設計に応じてアキシアル荷重も負担できる。
主な種類
- 円筒ころ軸受:ころが円筒で、高剛性・高荷重に強い。内外輪の肩形状により軸方向拘束能力が変わる(NU、NJ、NUP等)。
- 円すいころ軸受:円すいころと円すい軌道で、ラジアルとアキシアルの合成荷重を同時支持。対向配置で両方向アキシアル荷重に対応。
- 自動調心ころ軸受(球面ころ):二列ころで自己調心性を持ち、軸のたわみや取付けずれに強い。重荷重・衝撃に好適。
- 針状ころ軸受(ニードル):細長いころで断面高さが低く、省スペースで高荷重。保持器付き/全保持形がある。
利点と制約
利点は高荷重容量、高剛性、耐衝撃性である。制約として、許容回転速度が低め、スキュー(ころの傾き)による端面接触、潤滑油膜形成の難しさが挙げられる。適切な潤滑と内部すきま設定が必須である。
定格荷重と寿命計算
基準動定格荷重をC、等価動荷重をPとすると、基本定格寿命L10はISO 281に基づきローラ形でL10=(C/P)^{10/3}となる(ボール形は指数3)。重畳荷重、衝撃、汚染度、潤滑状態は補正係数で評価する。剛性やバックラッシュ要求が厳しい用途では、アプリケーション係数を加味し余裕を確保する。
内部すきまと公差
ラジアル内部すきまはC2(小さめ)〜C3/C4(大きめ)などを選定する。圧入による締め代や温度差で運転時すきまが減少するため、組立て前後の変化を見込む。公差はISO/JIS等級(例:P6、P5)が用いられ、工作機械主軸などでは高等級が選ばれる。
潤滑と密封
- グリース潤滑:構造が簡素で保守容易。高回転や高温には適さない場合がある。
- 油潤滑:循環・ミスト・オイルエアなどで冷却・洗浄性に優れる。高速・高荷重に有利。
- 密封:シール付で異物侵入と油漏れを抑える。粉塵環境や圧縮機の吸入口周辺では特に有効。
取付け・予圧と配置
回転側に締め代を設け、荷重方向と温度条件に応じてはめあいを決める。円すいころ軸受は予圧調整で軸方向剛性と振れ精度を高められるが、過大予圧は発熱・焼付きの原因となる。円筒ころのNU形は熱伸び吸収の「自由側」に配置し、反対側で軸方向を拘束するのが定石である。
損傷モードと対策
- フレーキング(疲労剥離):過荷重、油膜不足、異物混入が主因。荷重再配分と潤滑管理、清浄度改善で予防。
- スカッフィング/焼付き:油膜破断や発熱が原因。粘度選定、供給法改善、面粗さの最適化で対策。
- 段差摩耗・端面当たり:ミスアライメントやスキュー。ハウジング精度、剛性向上で抑制。
選定手順
- 荷重条件(ラジアル/アキシアル、平均・最大、衝撃の有無)を定義し、等価荷重Pを算出。
- 回転速度と寿命要求から型式を絞り、CとL10でサイズを決定。
- すきま・公差・はめあい・予圧を決め、潤滑方式を選定。
- 環境(粉塵、温度、振動)に応じ密封、材質、保持器を最適化。
- 試算した発熱・トルク、音響・振動、運転効率を確認し余裕度を検証。
用途例
減速機や圧延機のような重荷重装置、工作機械の主軸、鉄道軸箱、自動車のデフやホイール、風力発電機、産業用タービンなど。断面高さが制限される部位では針状ころ軸受が有効である。流体機械ではラジアル荷重主体であり、油潤滑と冷却の設計が鍵となる。
速度・摩擦と熱管理
許容速度は型式・サイズ・潤滑で決まる。線接触ゆえ発熱は増えやすく、油膜厚さと表面粗さのバランスが重要である。運転温度が上がると粘度低下・クリアランス変化を招くため、摩擦係数・油温・流量の監視が推奨される(ポンプの流量設計が関連)。
規格と呼称
寸法系列はISO/JISに準拠し、呼び番号で外径・幅・系列が表される。円筒ころではNU/NJ/NUPなどの記号が機能を示す。精度等級、内部すきま、シール・シールド、保持器材質(鋼・樹脂・黄銅)などの付加記号で仕様が確定する。