レーザ距離計|非接触で高精度・高速な距離測定

レーザ距離計

レーザ距離計は、レーザ光の伝搬特性を利用して対象物までの距離を非接触で測定する計測機器である。パルスの飛行時間を測るTOF(Time Of Flight)方式、連続波の位相差を用いる位相方式、干渉縞の変化を読む干渉方式など複数の測定原理が実用化されており、用途に応じて測定レンジ、精度、応答性の最適解が異なる。近年は半導体レーザとAPDやSPADなどの高感度受光素子、ならびに高速TDC(Time-to-Digital Converter)や強化学習を含む信号処理により、屋内外での高精度測距と小型・低消費電力化が両立している。建築・土木の墨出しや出来形確認、製造ラインでの位置決め・ピッキング、ロボティクスやAGVの障害物検出、ドローンの高度保持、さらには簡易なプロファイリングまで幅広く使われる。

原理と方式

レーザ距離計の中核は光路長の推定である。TOF方式はパルスを発射し往復時間Δtから距離d=cΔt/2を得る。位相方式は変調周波数fの連続波を照射し、戻り光の位相差φからd=(cφ)/(4πf)を算出する。干渉方式はコヒーレンス長が長いレーザで参照光と測定光を干渉させ、フリンジの変化からナノメートル級の変位を読み取る。短〜中距離で高速・堅牢性を重視するならTOF、サブミリ精度を比較的長距離で要するなら位相方式、超高分解能の変位計測なら干渉方式が選ばれやすい。

主要構成要素

レーザ距離計は、発光系(LD/VCSELと駆動回路)、ビーム整形光学(コリメータ、発散角制御)、受光系(PD/APD/SPAD、TIA)、タイミング計測(TDC)、演算処理(MCU/FPGA)、および環境センサ(温度・受光レベル)で構成される。屋外用途ではNDフィルタや狭帯域干渉フィルタで外乱光を抑制し、受光SNRの確保に努める。ファームウェアは多パルス積算、マルチターゲット解像、外れ値除去や確率的トラッキング(例:Kalman filter)を実装し、安定な距離推定を実現する。

性能指標と規格

レーザ距離計の選定では、最大レンジ、分解能、精度(典型±1〜±3 mm)、再現性、応答時間、測距レート、ターゲット反射率依存性、照準の見やすさ、通信I/F(Bluetooth、USB、UART)を確認する。携帯型製品ではISO 16331-1の条件下性能が参照されることが多く、屋外現場ではIP54〜IP65の防塵防滴が目安となる。測定ターゲットの反射率や表面粗さ、角度条件によるスペック変動も重要である。

誤差要因と対策

レーザ距離計の誤差要因は、(1)ビーム発散とスポット径の拡大、(2)ターゲットの低反射・暗色・光沢、(3)入射角の大きさによる有効反射低下、(4)外乱光・フレア、(5)大気の温度・圧力・湿度に起因する屈折率変動、(6)マルチパス反射やエッジ効果などである。対策としてビーム整形の最適化、受光積算・ゲーティング、狭帯域フィルタ、環境センサによる補正、ターゲットマーカーの併用、測定姿勢の工夫が挙げられる。

測定モードと機能

  • シングルショット/連続測定:レーザ距離計の基本機能で、連続時は移動体追尾や位置決めに有効。
  • 最小値・最大値トラッキング:振動や手ぶれ下での真値近傍抽出に用いる。
  • エリア・ボリューム算出:複数点測定を組み合わせて面積・体積を演算。
  • ピタゴラス機能:斜辺と一辺の測定から高さを三角関数で間接算出。
  • データロギング/無線転送:現場帳票やMES連携を容易にする。

安全と取扱い

レーザ距離計はIEC 60825-1に基づくレーザ安全クラスの管理下にある。一般的な携帯型はClass 1またはClass 2であり、直視回避や反射面への不必要な照射禁止、保護メガネの要否確認など基本ルールを遵守する。鏡面やガラスを扱う場合は間接反射による眩惑や測距誤差にも留意する。

応用分野

レーザ距離計は建築・内装工事での寸法取り、土木現場での出来形確認や離隔測定、物流での荷姿計測、治具・設備据付の芯出し、搬送ラインの停止位置決め、クレーンの吊り荷揺れ抑制支援、ロボットの近接検出や自己位置推定補助、UAVの高度保持などに用いられる。反射率の低い対象にはターゲットシートを併用し、測定安定度を向上させる。

選定のポイント

  1. 使用環境:屋外日射・粉塵・水濡れの有無、必要IP等級。
  2. 測距要件:レンジ、精度、測定レート、ターゲット反射率。
  3. 光学・照準:スポット径、可視レーザの視認性、視差。
  4. I/F:データ出力(Bluetooth/USB/UART)、電源方式、バッテリ寿命。
  5. 運用:三脚・治具適合、校正体制、ファーム更新性、保守性。

TOFモジュールとSLAMへの応用

組込み向けのレーザ距離計モジュールは、単点TOFを高速サンプリングしてロボットの距離バリアとして機能させたり、IMUやエンコーダと融合してレンジベアリング観測を補強し、SLAMのロバスト化に寄与する。多重反射が多い屋内ではゲーティングと外れ値除去を強化し、屋外では日射対策として短パルス高ピークと狭帯域フィルタを組み合わせる設計が有効である。

キャリブレーションと保守

レーザ距離計の校正は、既知距離のリファレンスターゲット(高反射板と低反射板)でオフセットとスケールを点検し、温度レンジごとに係数を補正する。光学窓の汚れは散乱とゴーストの原因となるため、溶剤適合を確認したうえで定期清掃を行う。ファームウェアはドリフトや歩留まり統計を内部ログで可視化し、予防保全に活かすと保守性が高まる。