レーザ変位計
レーザ変位計は、対象物にレーザ光を照射し、その反射光の位置・位相・焦点位置などを解析して変位や距離、厚み、うねり、振動などを非接触で測定するセンサである。接触圧による誤差やワーク損傷がなく、サブµmからnmオーダの分解能と高い応答帯域を両立しやすいのが特徴である。製造ラインのインライン検査、研究開発の精密評価、サーボ制御のフィードバックなど幅広い現場で用いられる。
測定原理と主要方式
レーザ変位計の代表方式は、三角測距、干渉計、共焦点、TOF(Time Of Flight)である。三角測距は投光レンズと受光素子(PSD/CMOS)で反射スポットの結像位置から距離を幾何学的に求め、短〜中距離・高速応答に強い。干渉計は光路差の位相を読み取り、nm~サブnm級の分解能を実現する。共焦点は焦点位置で反射が極大となる原理を使い、鏡面から粗面まで安定しやすく厚み測定にも適する。TOFは飛行時間から距離を得るためレンジが長いが、超高分解能には不利である。
主な仕様と性能指標
基本仕様には測定レンジ、スタンドオフ、分解能、直線性、繰返し精度、応答帯域、スポット径、許容傾斜角、光源クラス(IEC 60825)などがある。分解能は受光ノイズとSNRで律速され、高帯域化ほど有効分解能が低下しやすい。直線性は光学収差や受光位置演算の非線形、表面反射率の変化で悪化する。スポット径は微細形状のエッジ検出に直結し、過大だと平均化誤差が増える。温度ドリフトは光学系・筐体の熱膨張やレーザ波長変化に依存するため、温度管理やリファレンス計測が有効である。
熱影響とドリフト抑制策
アルミ筐体では熱膨張が大きく、ゼロ点が移動しやすい。低膨張材の採用、筐体温調、内部リファレンス面の同時計測、多点平均やソフトウェア温度補正を併用すると安定度が向上する。
三角測距方式の特徴
投受光のベースライン長と結像倍率から距離を解く方式で、粗面や拡散面に強く、ライン用途で多用される。斜面や鏡面では反射ピークが崩れ、受光重心がずれるため傾斜補正や偏光制御が効く。高速化はCMOSラインセンサの読出し最適化と信号処理(ピークフィット、外れ値除去)で実現する。微小スポット化は開口増大で達成できるが被写界深度が浅くなるため、レンジと分解能のトレードオフ設計が要点である。
入射角と反射率の影響
入射角が大きいと実効反射率が低下しSNRが悪化する。表面が異方性(研磨目)を持つ場合、散乱分布が偏るため測定軸に対し研磨目を直交させると安定しやすい。
干渉計・共焦点方式の特徴
干渉計はコヒーレンスと位相の高感度性を活かし、λ/4πスケールの分解能を得る。振動や空気揺らぎの影響が大きいので、防振台、遮風、短光路設計が有効である。共焦点はピンホールと高NAレンズで深さ分解能を確保し、透明体や多層膜の界面検出に強い。クロマチック共焦点は波長ごとの焦点深度を利用し、走査無しでも深さ位置が求まるため厚みや段差測定のタクト短縮に寄与する。
データ処理と信号インタフェース
出力はアナログ電圧、デジタル(EtherCAT、EtherNet/IP、RS-485など)、パルス、トリガ同期を備えることが多い。信号処理ではローパス/カルマンでノイズを抑制し、帯域と遅れのバランスを取る。表面粗さ起因の瞬時外乱にはメディアンや外れ値除去が効く。周波数解析はFFTで振動成分を抽出し、回転体のうねりや同心度評価に用いる。多台数同期では共通クロックと配線遅延補正が不可欠である。
校正とトレーサビリティ
トレーサブルな長さ標準(ゲージブロック、段差標準、干渉計基準)でゼロ点とスパンを校正する。レンジ端のみの2点校正では非線形を見落とすため、多点校正と残差評価が望ましい。環境条件(温度、湿度、気圧)を記録し、校正条件での補正係数を運用条件に適用する。規格はJISやISOの長さ計測・表面性状関連が参考となる。
設置とアライメント
レーザ変位計は機械剛性の高いステージに固定し、測定軸とワーク法線を整合させる。ケーブルは可動応力やEMIの影響を避けるルーティングとシールドを行う。反射が弱い対象にはターゲットマークや拡散反射シートを併用する。振動環境では防振マウント、平均化、同期検出でSNRを確保する。
厚み・形状・振動の応用計測
厚みは対向配置の2台で上下面距離を同時計測し、厚み=上面距離+下面距離−ヘッド間基準長で求める。形状は走査軸と併用してプロファイルを取得し、うねりや面粗さの定量化に用いる。振動は高帯域サンプリングで変位-速度-加速度を微分・積分して周波数応答や共振を評価できる。回転体の振れはエンコーダ同期で位相ロックし、位相毎の同心度と楕円度を抽出する。
デュアルヘッド厚み測定の注意
基準長の温度ドリフトと取付けねじれが厚み誤差を生む。基準長材の低膨張化、温度センサ併用、三点支持でねじれを抑えると良い。
対象表面とスペックル
レーザはコヒーレンスが高く、粗面ではスペックルが発生して受光強度が揺らぐ。平均化時間を延ばす、波長を変える、斜入射を避ける、偏光を制御するなどで変動を低減できる。鏡面では戻り光が飽和しやすいため、NDフィルタや角度オフセットで受光を制御する。
安全と法規
光源クラスはIEC 60825に準拠して表示される。クラス2/3Rでは直視回避、反射物の撤去、遮光カバー、インタロックを徹底する。メンテナンス時は保護眼鏡の選定波長とOD値を確認し、ラベリングと教育を行う。
選定の手順
①対象材質と表面性状、②必要レンジと分解能、③応答帯域とタクト、④許容傾斜角と設置自由度、⑤環境(温度・振動・油煙・粉塵)、⑥インタフェースと演算機能、⑦安全クラスと運用規程、を要件化する。これに基づき三角測距・干渉計・共焦点の各候補をベンチで比較し、ゼロ点安定度、実効分解能、直線性、SNR、温度ドリフトを総合評価すると、用途適合度の高いレーザ変位計を選べる。
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