レーザ切断機|高精度で金属を高速切断低歪み省力

レーザ切断機

レーザ切断機は、発振器から出力された高密度エネルギーのレーザビームをレンズで集光し、金属板などの材料を溶融・蒸発させて細幅の切れ目(カーフ)を形成する加工機である。アシストガス(O₂、N₂、空気)をノズルから同軸噴射し、溶融金属や酸化生成物を排出して切断を安定化する。非接触・高精度・自動化適性に優れるため板金加工、機械部品、車体・筐体、サイン・建材など多様な分野で利用される。一般にレーザ切断機はCNC制御によりXYテーブルやガントリを駆動し、CAD/CAMデータに基づくネスティングで材料歩留まりを高める。

方式と主要構成

レーザ切断機の発振方式はCO2(波長10.6μm)、ファイバ/ディスク(波長約1.06μm)が代表である。1μm帯は銅・アルミなど高反射材への吸収が相対的に高く、微細スポットと高電気効率が得やすい。構成は発振器、ビーム伝送(ミラーまたはファイバ)、切断ヘッド(コリメータ・集光レンズ・保護ガラス・ノズル)、アシストガス系、CNC駆動部、排気・集塵、安全筐体から成る。近年はオートフォーカス、ビームシェーピング、可変ビーム径、スマートセンサを備えるレーザ切断機が普及している。

加工原理とガスの役割

材料表面の光吸収により温度が上昇し、熱伝導・相変化を経てカーフが形成される。軟鋼でO₂を用いると酸化反応の発熱が加わり切断能力が向上する一方、エッジは酸化膜で暗色化しやすい。N₂は不活性で溶融金属をブローアウトし、ステンレスやアルミで光沢エッジを得やすい。フォーカス位置、ビーム品質(M²)、パワー密度、ガス圧、ノズル同軸性は切断安定性とストリエーション(条痕)、ドロス(溶融付着)の発生に直結する。高出力時はキーホールモード、薄板や微細形状ではメルト剪断を狙う設定が用いられる。

性能指標と適用板厚

レーザ切断機の指標には平均出力(kW)、ビーム品質、焦点径、位置決め精度・繰返し精度、最大送り速度、加速度、最小カーフ幅、立ち上がり時間(パルス)などがある。一般論として、軟鋼はO₂併用で20~25mm級、ステンレスはN₂で15~20mm級、アルミは12~16mm級までの切断事例が多い。薄板(~3mm)では高加速度と小スポットを活かした微細切断が行われ、厚板では高出力と適正ガス・ノズル選定によりドロス低減と通り穴の安定化を図る。

プロセスパラメータと段取り

主な設定は出力、デューティ(パルス時)、送り速度、フォーカス位置(表面上・内部)、ノズル径とスタンドオフ、ガス種・圧力、リードイン/リードアウト、マイクロジョイント、コモンライン切断などである。ピアッシングはブラスティング、段階圧力、パルス制御などを使い分け、厚板での溶融噴出やスパッタの保護ガラス汚染を抑える。CAMではネスティングで材料歩留まりを最適化し、熱蓄積を避けるための切断順序・飛び移りも重要である。

メリットと設計上の留意点

レーザ切断機は金型不要で形状自由度が高く、細幅カーフ・小R内角・小穴加工に強い。熱影響層が比較的狭く、二次加工(曲げ・溶接)前工程としての寸法再現性にも優れる。留意点として厚板でエッジ傾斜が出やすい、反射材の戻り光対策、保護ガラスの汚染管理、排気・集塵・火花対策などがある。製品設計では切断最小幅、最小穴径、ブリッジ幅、スリット間隔、熱による歪みを考慮し、必要に応じて後工程の面取りやタップ下穴、ボルト用スロット寸法を織り込む。

安全・保全と品質管理

レーザはクラス1(筐体で閉じ込め)化が主流であるが、点検時はクラス4相当の管理が必要である。インターロック、非常停止、煙霧・粉塵の排気、可燃物管理、反射防止内装、適切なPPEを徹底する。保全ではノズル同芯、レンズ・保護ガラスの清掃と交換、ガス配管漏れ点検、ビームアライメント、フォーカスキャリブレーション、アシストガスの露点・純度管理が要点である。品質はエッジ粗さ、ストリエーション、ドロス量、寸法偏差、カーフ幅の均一性、ピアス痕の位置・形状で評価する。

トラブルシューティング

ドロス増大はガス圧不足、ノズル摩耗、フォーカス深過ぎ、送り過多が典型因子である。条痕の荒れはビームモード不安定、保護ガラス汚れ、焦点外れ、振動・共振が疑われる。貫通不良はピアス条件不適や板の酸化スケール、被切断材の表面処理起因の反射が要因となる。エッジ酸化が問題ならN₂へ切替、あるいは混合ガスやエアカットを検討する。スパッタ付着はピアス方法やスタンドオフ、吸引流量の見直しで抑制できる。

自動化・データ活用

レーザ切断機は自動倉庫やロードアンロード装置と連携し、多品種少量から連続生産まで対応する。生産実績・設備状態・ガス消費・保守履歴の記録によりOEEや原価を可視化し、AIによるパラメータ最適化、予防保全、板取り自動化が進む。エッジ品質やスパッタの画像検査、加工音・光のセンサ監視でリアルタイムに異常検知する取り組みも一般化している。

材料ごとの勘所

軟鋼はO₂で高能率、仕上げ優先ならN₂を選ぶ。ステンレスはN₂で光沢エッジ、厚板は出力・ノズル径を上げる。アルミは熱伝導が高く反射も強いため高出力・高速域での安定条件が有利。銅や真鍮は1μm帯ファイバが適性を示しやすいが、反射戻り光保護を厳格に管理する。表面皮膜や塗装は吸収・蒸発挙動を変えるため、前処理や条件の再最適化が必要である。

設計・生産準備のチェックリスト

  • 最小スリット・穴径・文字幅と板厚の整合
  • 材質別ガス選定(O₂/N₂/エア)と供給圧・流量
  • ピアス方式・リード形状とカーフ補正値
  • ネスティングと熱だまり回避の切断順序
  • ノズル・レンズ在庫、保護ガラス清浄手順
  • 排気・集塵・火災対策と安全教育