レーザー加工機
レーザー加工機はレーザー光を集光し、材料表面に高エネルギー密度の熱・光化学作用を与えて切断、穴あけ、溶接、マーキング、微細加工などを行う工作機械である。CO2、ファイバー(Yb:YAG)、グリーン、UVなど光源と波長の選択により金属から樹脂、ガラス、セラミックスまで広く対応し、非接触・高精度・高再現性を特長とする。CNC制御とCAMによるパス生成、アシストガスによる溶融物排出、ガルバノスキャナやXYガントリによる走査を統合し、量産から試作、カスタム製造まで柔軟に適用できる。
原理と構成
レーザー加工機は発振器(CO2、ファイバー、ディスク等)、伝送系(ミラー/光ファイバー)、集光系(コリメータとFθレンズ)、加工ヘッド(ノズル・高さセンサ)、駆動機構(ガルバノ/リニア/ボールねじ)、制御器(CNC)、冷却器、排気・集じんで構成する。発振器は電源と冷却で安定化し、ビーム品質M2と出力安定度が孔径や切断面粗さに直結する。焦点位置はキャパシタンス式高さセンサで板厚ばらつきに追従し、ノズルからのO2/N2/airで溶融物を排出してドロスを抑制する。
方式の種類
-
レーザー切断:連続波(CW)で鋼板・ステンレス・アルミを高速切断する。O2は酸化反応で厚板速度向上、N2は無酸化切断で美観重視に適す。
-
レーザーマーキング/刻印:パルスで表面の酸化・発色・アブレーションにより2Dコードやシリアルを付与する。
-
レーザー溶接:キーホール・コンダクションにより低ひずみ接合。リモート溶接はガルバノで高速多点を実現する。
-
穴あけ/トレパニング:タービンブレードのクーリングホール等に用い、パルス幅とフルエンスでバリ・リキャストを抑える。
-
微細加工:ピコ秒/フェムト秒で熱影響を最小化し、ガラスのクラック抑制やポリマーのバリ低減に有効である。
光源と波長の特徴
CO2(10.6μm)は樹脂・木材・アクリルに吸収が高く滑らかな切断が得られる。ファイバーレーザー(~1.06μm)は金属吸収が良好で薄板高速切断や高反射材(Cu, Al)の加工安定性に優れる。グリーン(532nm)は銅配線の溶接・微細回路加工で熱拡散を抑える。UV(355nm)はアブレーション閾値が低く、樹脂・ガラスの微細マーキングに適す。MOPA構成はパルス幅・繰返し周波数の可変範囲が広く、発色刻印や黒色マーキングのコントロール性が高い。
加工品質と主要パラメータ
-
出力/パワー密度:スポット径とともに溶融域を規定し、厚板はkW級、微細はμJ〜mJパルスが有効である。
-
パルス幅/周波数:ns→熱拡散が大、ps/fs→アブレーション主導。繰返しは曝露量と熱蓄積に影響する。
-
走査速度/重ね率:線エネルギーを決定し、焼け/ドロス/段差を左右する。角部は減速と出力補正で角落ちを防ぐ。
-
焦点位置/ノズル間隙:カーフ幅とテーパを支配。薄板は表面近傍、厚板は板厚中央に焦点を置くのが通例である。
-
アシストガス:O2は反応熱で速度向上、N2は無酸化・白色切断、Airはコストと品質の折衷である。
適用材料と用途
鉄鋼・ステンレスの板金、アルミ・銅の筐体、チタンの医療部材、SiウエハやITOガラスのパターニング、樹脂シートのトリミング、アクリル看板の鏡面切断、木材のデコレーション、セラミックスの溝加工などに広く使われる。試作短納期、小ロット多品種、トレース性マーキングなど、レーザー加工機の非接触・段取り簡易性が工程短縮に寄与する。
安全・環境・メンテナンス
レーザー加工機はClass 4の管理が基本で、囲い・インターロック・遮光窓のOD確保が必須である。加工時にヒューム/微粉が発生するため、適切な排気・HEPA/活性炭ろ過と可燃性粉じん対策が必要である。光学系はレンズ・保護ガラスの汚れで透過率が低下するため、定期清掃と消耗品の交換周期を管理する。冷却水の導電率・pH管理、パージガスの露点、ノズル同軸度調整も品質安定の要点である。
導入時の選定ポイント
-
対象と板厚:薄板高速はファイバー、厚板切断は高出力機+高圧N2、樹脂はCO2が有利である。
-
ワークサイズ/レイアウト:定盤サイズと搬送(シャトルテーブル、自動倉庫)を考慮し、段取り時間を最小化する。
-
ヘッド/スキャナ:2Dガントリ、リモート(ガルバノ)、3D五軸、パイプ・形鋼用チューブレーザーを用途で選ぶ。
-
ソフト連携:CAD/CAMのネスティング、タブ設定、マイクロジョイント、MES/バーコード連携で生産性を高める。
-
TCO:電力、ガス、消耗品、保守契約、稼働率、段取り・教育コストを合算し、試作〜量産の負荷変動に耐える構成とする。
規格・評価・用語
安全はJIS C6802/IEC 60825-1およびISO 11553に準拠する。切断品質はISO 9013(粗さ・テーパ・バリ評価)が参照され、ビーム特性はISO 11146でM2やビームウエストを規定する。マーキングの耐久は表面処理や母材組成に依存し、RoHS/REACHや医療機器の洗浄耐性も考慮する。これら規格を理解し、検査治具や外観評価規準を整備することがレーザー加工機の量産適用に不可欠である。