ルーフモール
ルーフモールとは、自動車のルーフパネルとサイドパネル(ルーフレール)との継ぎ目やフロントガラス・リヤガラス周縁の隙間を覆い、外観を整えるとともに防水・防塵・防風性能を補助する細長い外装部品である。雨水の流路を整え、風切り音や走行時の微小振動の発生を抑える役割も担う。材質は樹脂系や金属系が用いられ、断面形状・表面処理・固定方法の設計により、車両全体のNVH、耐候性、整備性、意匠品質(ギャップ&フラッシュ)に大きな影響を及ぼす。量産では車体組立の終盤で装着されることが多く、クリップ嵌合や両面テープ接着、レールへのスライド嵌入などで確実に固定する。
構造と材質
樹脂系ではEPDMやTPE、PVCなどが一般的で、柔軟性と耐候性のバランスに優れる。金属系ではアルミ押出材やステンレス成形品が採用され、薄肉でも直線性とエッジのシャープさを出しやすい。多層(コエクストルージョン)構造により、基材の弾性と表層の耐擦傷・耐汚染・耐UVを両立させる設計が行われる。表面はマット、サテン、ハイグロスなど意匠バリエーションがあり、クリアコートやアノダイズ、フッ素系ハードコート等で耐候性を高める。断面はU字・Ω字などが用いられ、嵌合爪やシール唇を一体化して雨水の侵入を抑える。
機能と要求性能
- 防水・排水:ルーフ側のプレスラインやドリップチャンネルに沿って雨水を後方へ導く。
- 空力・静粛:段差と隙間を隠蔽し、境界層の剥離・渦立ちを抑えて風切り音を低減。
- 耐候・耐久:日射・温度サイクル・オゾン・洗車ブラシに対する退色・白化・ひび割れ防止。
- 外観品質:G&Fを整え、ボディ同色やブラックアウトでデザイン意図を強調。
- 整備性:ガラス交換やルーフサービス時に再装着可能な嵌合・テープ設計。
取り付け方法と製造プロセス
装着方式は大別して、①クリップ嵌合(樹脂クリップやメタルスプリングでレールに押し込む)、②両面テープ接着(アクリルフォームテープ+プライマーで高耐久接着)、③レールスライド(車体側レールに沿って端部から挿入)である。生産では脱脂・プライマー処理→位置決めジグによるセンタリング→端末キャップ圧入→圧着・押さえローラ処理→外観検査の順で進める。テープ方式では貼付温度管理と圧着荷重・時間が信頼性を左右する。
設計上のポイント
断面形状は温度変化に伴う熱膨張差を吸収できる余裕(スロット、蛇腹、自由長)を確保する。最小曲げ半径を満たしつつ、カーブ部での皺・浮き・波打ちを抑えるため、肉厚配分とリブ配置を最適化する。ギャップ&フラッシュは隣接パネルの公差鎖を踏まえた目標値を設定し、端部処理(エンドキャップ/シール剤)で巻き込み水・風の侵入を防ぐ。金属モールでは異種金属接触腐食を避けるため絶縁層や防錆皮膜を併用し、塗装車体との干渉傷を防止する。CAEで風切り音寄与を予測し、試作段階で実車風洞・車外騒音を確認する。
劣化・不具合例と対策
典型的な不具合は、端末の浮き・剥がれ、色褪せ・チョーキング、縮み(収縮)による隙間発生、走行時のヒューヒュー音、洗車でのめくれ、テープ残渣での再装着不可などである。対策として、表層の耐UV改質、可塑剤移行の抑制、テープ幅・端末処理の見直し、レール側の面精度改善、クリップ保持力の最適化を行う。金属材では飛び石・塩害下での白錆・すきま腐食に留意し、コート厚と端面封止を強化する。
関連部品
関連する部位はルーフパネル、ルーフレール、フロント/リヤウィンドウモール、ドア開口のウェザーストリップ、ピラーガーニッシュなどである。固定や補修に際してはクリップ、テープ、プライマー、端末キャップに加え、締結要素のボルト知識が役立つ。意匠面ではブラックアウトトリムやクローム加飾との統一感、機能面では排水経路と泥はね対策、NVH面では風切り音発生帯域の抑制を総合的に検討する。
規格・評価の概略
評価は、耐候(キセノン・ウェザーメータ)、塩水噴霧、温湿度サイクル、付着強度、引張・屈曲、耐摩耗、洗車耐久、石噛み(グラベロ)などを組み合わせる。意匠は光沢・色差・表面欠陥を外観基準で判定し、機能は防水性(浸水・散水)、走行騒音、剛性感を実車試験で確認する。これらの結果を踏まえ、ルーフモールの断面・材質・固定方式をリファインし、量産での安定品質を確立する。