リーマ仕上げ
リーマ仕上げは、下穴をドリル等で加工した後、リーマ(Reamer)を用いて穴径精度と表面粗さを高める仕上げ加工である。微小な切込みで周壁を均一に削り、真円度・円筒度・寸法精度を安定させるのが特徴で、一般にH7クラスのはめあい穴を量産で確保したい場合に選択される。下穴径は仕上しろを見込んで意図的に小さくし、工具の案内面(マージン)で面をなでるように切削・バニシングすることでRa0.4~1.6 μm程度の滑らかな面を得ることができる。
原理と特徴
リーマ仕上げでは、多数刃の外周切刃が小さな切削厚で周方向に平均化して当たり、加工ばらつきを抑制する。スパイラル溝やストレート溝など形状は用途で使い分け、外周のわずかなバックテーパにより尻擦りを防止する。ドリルに比べ切りくずは微細で、機械剛性・芯出し・切削液供給が面品位を大きく左右する。
精度・表面粗さの目安
一般的な機械リーマでIT7~IT8級の寸法精度、真円度・円筒度は数μmオーダーまで狙える。表面粗さは材料・切削油・工具材質で変動するが、量産実務ではRa0.8 μm前後が標準的なターゲットである。より高品位が必要なら、リーマ仕上げ後にホーニングやラッピングで追い込む。
工具の種類と材質
手回し用ハンドリーマ、機械用チャッキングリーマ、わずかに径調整できるアジャスタブルリーマ、偏摩耗を補正するエキスパンションリーマなどがある。材質はSKH(HSS)や超硬が主流で、被削材や生産量に応じてTiN/TiAlN/DLC等のコーティングを選ぶ。貫通穴には右ねじれ、止まり穴には左ねじれを選ぶなど、切りくず排出方向の配慮が重要である。
下穴寸法と仕上しろ
下穴は意図した仕上がり径より小さく加工する。仕上しろ(直径差)の目安は以下が実務的である。
- φ3~6 mm:0.05~0.12 mm
- φ6~12 mm:0.10~0.25 mm
- φ12~20 mm:0.20~0.35 mm
仕上しろが大き過ぎると過負荷や面荒れ、逆に小さ過ぎると擦過主体になり寸法が安定しない。下穴の面取り(0.2~0.5×45°程度)を与えると、刃先の食い付きと面品位が安定する。
切削条件の設定
回転数はドリルより低めから開始するのが無難で、HSSで5~15 m/min、超硬で60~120 m/min程度を目安に最適化する。送りは0.05~0.30 mm/rev程度が扱いやすい領域で、工具径・刃数・被削材で調整する。送りのムラや小刻みな停止(ドウェル)は輪状痕の原因となるため避ける。
切削液と供給方式
面品位と寸法安定を両立するには、潤滑性の高い切削油が有利である。量産ではミストやエマルジョンでも十分だが、面を重視する場合は不水溶性ストレート油が有効である。スルークーラントや側方ノズルでの連続供給により微細切りくずを排出し、刃先かみ込みや擦過を防ぐ。
段取りと心出し
リーマ仕上げは芯ずれに敏感である。フローティングホルダやセルフパイロット機構を用いて、下穴軸と工具軸の同心を確保する。主軸の振れ、チャック把握長、ワーククランプ剛性、送り系のバックラッシュなどを点検し、入射部には適切な面取りを与える。重切削の直後にリーマを当てる場合は、熱膨張による寸法ドリフトにも注意する。
代表的な不具合と対策
現場で多い事例と対策は次の通りである。
- 穴大きめ:仕上しろ過大、回転数過大、工具摩耗。→下穴見直し、回転数低減、工具再研磨。
- 穴小さめ:仕上しろ不足、切削油不足。→下穴拡大、潤滑強化。
- ベルマウス:食い付き不良、芯ずれ。→面取り追加、フローティング保持。
- らせん傷・ビビリ:剛性不足、送り不安定。→把握改善、送り一定化、速度最適化。
- 焼き付き:切りくず停滞。→クーラント増量、排出方向を見直し。
はめあいと検査
H7/h6などの公差体系(ISO 286)で設計された軸受ハウジング等では、リーマ仕上げにより寸法の量産安定性を確保しやすい。検査にはプラグゲージ(通・止)を用い、量産では統計管理でX̄-R管理を行う。刃先は定期的に再研磨・交換し、再研後は試し穴で寸法傾向を確認する。
他工法との使い分け
ボーリングは真直度補正や段付き穴に強く、ホーニングやラッピングは表面粗さの極限と幾何公差の追い込みに適する。一方、リーマ仕上げは段取りが簡便でサイクル短く、量産部品の精密穴にコスト効果が高い。設計要求(公差・面粗さ・生産量)に応じて工法を階層的に組み合わせると良い。
安全と実務上の注意
ハンドリーマでは無理なトルクを避け、切りくずを溜めない。回転工具では手袋巻き込みを厳禁とし、切削液周りを清潔に保つ。段替え時は下穴工具の摩耗・芯ズレを合わせて点検する。再研磨後は背分角・マージン幅の不均一が面に現れやすいため、試作段で条件を再最適化する。
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