リワーク
電子実装におけるリワークとは、量産後に発見されたはんだ不良や部品違いなどを是正し、製品を規格適合状態へ復帰させる再加工の総称である。量産ラインから切り離された個別作業であり、熱履歴・基板損傷・信頼性の再確保を伴うため、工程設計・設備・検査基準をあらためて定義し直す必要がある。対象はSMD抵抗やICからBGA、コネクタ類まで幅広く、はんだ付け方法・部品形状・基板構造(多層・高Tgなど)に応じた専用手順が要求される。
定義と目的
リワークは不具合の修正を目的とするが、単なる“付け直し”ではない。基板・部品・はんだの三要素に再度熱機械負荷を与える行為であり、熱ダメージ最小化と再現性の確保が最大のテーマとなる。修理(リペア)や改造(リバージョン)と区別し、原設計の性能・信頼性に戻すことをゴールに据える。
適用対象と典型事例
工程フロー
代表的なフローは①評価②除去③ランド整備④再実装⑤検査⑥トレーサビリティ記録である。評価では外観・X線・電気検査で欠陥モードとリスクを把握する。除去はホットエアやIR加熱でプロファイルを作成し、熱量を最小に抑える。ランド整備ではウィックで旧はんだを除去し、フラックス洗浄と平滑化を行う。再実装はペースト印刷またはリボール・プリフォーム採用の是非を判断し、プロファイルを最適化する。最後に外観、X線、必要に応じICT・機能試験で合否を確定する。
温度プロファイル設計
予熱・ソーク・リフロー・クールの各区間を定義する。鉛フリーはんだではピーク230–250℃、ΔTと滞留時間を部品仕様内に保持する。
設備とツール
- ホットエア/IRリワーク装置、下面プリヒータ、温度プロファイラ
- リワークノズル、真空ピック、熱電対・スポット熱源
- はんだウィック、フラックス(RMA/無洗浄)、マイクロはんだごて
- X線検査、実体顕微鏡、引張/シェア試験治具
基板保護
マスキングで周辺部品の再溶融を防ぎ、ソルダレジストの焦げ・クラックを抑える。必要に応じて治具で反りを矯正する。
品質保証と検査
リワークは初回実装より信頼性リスクが高い。外観規格・X線判定・電気特性の合否閾値を工程内で明文化し、ロット・作業者・プロファイル・使用材料を記録する。BGAはX線でボイド率や接合形状を、ファインピッチは錫ひげ・ブリッジ残存を重点確認する。
トレーサビリティ
シリアル・日時・作業手順・測定ログを紐付ける。後段工程での不具合解析を容易にし、過剰リワークの抑止にもなる。
欠陥モードと対策
- ランド剥離:過熱・剥離応力が原因。局所加熱と基板固定で回避し、必要時はパッド補修を行う。
- ブリッジ/未濡れ:プロファイル不適合やフラックス枯渇。塗布量・清浄度管理を強化。
- はんだボール:急速加熱や残渣。ソーク延長と洗浄性の見直し。
- 部品内部クラック:温度勾配過大。下面プリヒータと緩やかな勾配に調整。
BGAリワークの要点
リボールの有無を判定し、スタンドオフとコプラナリティを確保する。X線では辺縁のネック形状とボイド分布を観察する。
材料と工法選定
鉛フリー系ではSn-Ag-Cuの既存合金と整合させ、異種合金の混在を避ける。フラックスは活性度と残渣リスクのバランスで選び、無洗浄時のイオン残渣を評価する。微小チップはマイクロペーストやジェット印刷の併用が有効である。
プロセス設計と生産性
ライン停止の影響を考慮し、判定→仕分け→一括処置→最終検査のセル設計でスループットを最適化する。リワーク限度(回数・温度履歴)を設け、再発品は解析フローに回す。単価は工数と治具段取りで大きく変動するため、標準工数と着手判定基準を整備する。
安全・環境とESD管理
フラックス蒸気・微粒子の吸引管理、はんだ煙対策、作業者の熱傷リスクに配慮する。ESDは接地・導電マット・リストストラップを徹底し、湿度管理と帯電測定で再発を抑える。MSL部品は事前にベーキング条件を検討する。
関連工程との関係
量産側のプロファイル、印刷条件、部材保管を見直すことでリワーク発生率を低減できる。たとえばウェーブはんだ基板の二次実装では、スルーホール周辺の熱履歴差が欠陥を誘発しやすい。シルクの視認性は作業ミス抑止に寄与するため、シルク印刷の設計も影響する。
規格・手順書の整備
社内基準はIPC-7711/7721に準拠しつつ、自社部材・装置・判定閾値に合わせて具体化する。作業者認定制度と定期的なプロファイル監査、設備校正を仕組みに組み込む。RoHSや顧客固有仕様の遵守も併記する。
作業票と写真記録
作業前後の高倍率写真、X線画像、温度ログを作業票に添付して品質監査に備える。教育資料としても再利用できる。
設計段階での予防
リワーク容易性はDFR(Design For Rework)として設計要件に含める。部品間隔、ヒートシンクの熱容量、スルーホールの熱拡散、ランド形状とソルダマスク開口の最適化などが重要である。これらは基板のパッド寸法やソルダレジスト開口設計と密接に関係する。
実装現場のベストプラクティス
- 欠陥モード別の標準プロファイルライブラリを保持
- スクラップ閾値と再実装許容回数の明示
- 試作段階でのリワーク頻度レビューと量産条件へのフィードバック
- 部品ロット差の熱吸収特性を事前評価
教育と技能管理
作業者の技能差は仕上がりのバラツキに直結する。段階的な認定、定期トレーニング、ペア作業やレビュー体制で品質を平準化する。
関連項目
実装品質の体系的理解には、部品実装の基礎となるSMD概念、外形別の実装性であるQFPやQFN、基板の識別性に関わるシルク印刷、表面保護のソルダレジスト、ランド設計であるパッド、はんだ付け工法のウェーブはんだなどを合わせて参照するとよい。