リニアアクチュエータ
リニアアクチュエータは、電気・油圧・空気圧などのエネルギーを直線運動へ変換し、押す・引く・位置決め・クランプといった機械動作を実現する要素機器である。ボールねじ+モータやリニアモータ、ソレノイド、ピエゾ素子、油圧・空気圧シリンダなど多様な方式があり、半導体製造、検査、医療、搬送、包装、建築設備、試験機など幅広い分野で用いられる。設計においては、ストローク、推力、速度・加速度、剛性、精度、環境耐性、保全性、制御インタフェースを統合的に満たすことが要点である。
原理と構成
リニアアクチュエータは、(1)駆動部(電動・油圧・空気圧など)、(2)運動変換機構(ボールねじ、リニアガイド、磁気回路など)、(3)案内機構(直動ガイド、スライダ、ベアリング)、(4)検出器(エンコーダやリニアスケール)、(5)制御器(ドライバ、コントローラ)で構成される。電動ねじ駆動は回転を直線に変換し、リニアモータはコイルと永久磁石の電磁推力で直結駆動する。フィードバック制御により位置・速度・力を高精度に制御できる。
方式の代表例
- 電動ねじ駆動:ボールねじやローラねじを用い、サーボモータの回転を直線へ変換する。負荷支持と自己保持の設計がしやすい。
- リニアモータ:可動子と固定子の電磁力でダイレクトに推力を発生する。機械的バックラッシを排し、高応答な運動が可能である。
- ソレノイド/ピエゾ:短ストロークや微小変位に適し、開閉・微調整・振動励起などで用いられる。
- 油圧・空気圧:シリンダによって推力を得る。環境やエネルギー源の事情に応じ、制御弁と併せて用途を設計する。
主要性能指標
- ストローク(可動範囲)と有効行程端のバッファ余裕
- 推力F(連続・最大)と保持力、可搬質量、モーメント許容
- 速度v・加速度a・応答性(立上り、整定時間)
- 分解能・繰返し位置決め精度・バックラッシ・ピッチ誤差・直進度
- 剛性(軸方向・モーメント)と共振周波数、熱変形
- デューティ比、発熱、許容温度、保護等級(IP)
制御とセンサ
位置決めは、オープンループ(例:パルス指令)とクローズドループ(エンコーダ帰還)の方式がある。一般にPID+フィードフォワードで速度・加速度指令を追従させ、電流(推力)制限で負荷や衝突への耐性を持たせる。リミットスイッチ、原点センサ、ソフトリミットを併用し、原点復帰手順、非常停止(E-Stop)、ブレーキ保持を設ける。リニアスケール採用時は分解能と信号形式、干渉・ノイズ対策(シールド、グラウンド)を設計する。
運動プロファイル設計
加減速プロファイルは台形やS字(ジャーク制限)を用いる。S字は共振励起やワーク振れを抑え、整定時間短縮に寄与する。ステップ列では機械共振が顕在化しやすいため、ノッチやローパス、モデルベースの振動抑制を適用する。プロファイルはサイクルタイム、許容衝撃、負荷固定剛性、ガイド摩耗、ケーブルベア寿命も含めて最適化する。
選定手順
- 要求仕様の明確化:荷重、ストローク、タクト、設置姿勢、環境(粉塵、油、真空、クリーン)。
- 必要推力の算出:F≒m(a+g sinθ)+μm g cosθ+外力(ばね、圧力差など)に安全率1.3〜2を乗じる。
- 速度・加速度と可動質量から駆動定格を仮決めし、占有電力、発熱、冷却方式を検討する。
- 精度項目(繰返し、直進度、ピッチ)と剛性から、ねじ径・ピッチ、ガイド形番、予圧を選ぶ。
- 制御I/F(I/O、Fieldbus)、エンコーダ仕様(分解能、ABZ、絶対値)を統合する。
- 配線経路、曲げ半径、ストローク余裕、端部バッファ、潤滑・防塵部材をレイアウトする。
設計計算の要点
出力PはおおむねP=F·v/ηで見積もる。慣性比J_load/J_motorはサーボ安定性に影響し、減速機やねじピッチで最適化する。転がり要素やねじの寿命L10は等価荷重から算出し、必要寿命(総移動距離・総サイクル)で評価する。熱膨張ΔL=α·L·ΔTは高精度域で無視できず、基準温度、材料係数、熱源配置を反映させる。ガイドのモーメント余裕、座屈、片持ち荷重も確認する。
機械設計上の注意
固定ベースの平面度・直角度は繰返し精度に直結する。ガイドのねじりや並行度ずれは発熱・摩耗・スティックスリップを助長するため、シムや調整箇所を設ける。可動ケーブルは最小曲げ半径と往復サイクル寿命を満たす型式を選び、引張緩衝、ストレインリリーフ、捻れ防止を行う。グリースは粘度・基油・増ちょう剤を環境で選定し、給脂間隔を仕様化する。
信頼性と保全
主な故障モードは、ねじのがた・摩耗、ガイド片当たり、ソレノイドの発熱、磁気吸引による接触、センサ断線、ケーブル屈曲疲労などである。対策として予圧・適正給脂・異物侵入対策(ベローズ、カバー)、ショックアブソーバ、ジャーク制限、端部オーバーラン保護を施す。CBMでは電流波形、温度、振動、位置誤差を監視し、しきい値で予防保全を実行する。
環境対応と衛生設計
粉塵・飛沫環境ではシール、スクレーパ、正圧パージを組み合わせる。クリーンルームでは発塵源(摩耗粉、潤滑蒸発)を抑え、外部給脂化や真空グリースを検討する。食品・医療用途は耐食材、洗浄液耐性、潤滑剤の食品適合性、ドレン抜きなど衛生設計を盛り込む。低温・高温では材料特性やグリース粘度変化に留意する。
安全・規格・適用分野
安全は非常停止、二重リミット、トルク・力制限、機械式ストッパ、ブレーキ保持で層防御とする。リスクアセスメントを行い、保護カバー、光電センサ、インタロックを配置する。規格はISO 12100、ISO 13849、IEC 61508/62061などに適合させ、電気・EMC指針も参照する。適用分野は半導体搬送、精密位置決め、パレタイズ、検査治具、AGV/AMRの昇降、試験・計測、建築設備の開閉・調整など多岐にわたる。
仕様書に記載すべきチェックリスト
- ストローク、可動質量、繰返し精度、最大速度・加速度
- 推力・保持力、剛性、許容モーメント、直進度・ピッチ誤差
- 駆動方式、エンコーダ分解能、制御I/F、電源仕様、デューティ比
- 環境条件(温度、粉塵、油・水、真空・クリーン)、保護等級
- 潤滑方式、保全間隔、予備品、据付基準面の幾何公差
以上の設計・制御・保全の観点を一体で満たすことで、リニアアクチュエータは長期安定かつ高生産性の直線運動を提供できる。