リップル(脈動)
リップル(脈動)とは、整流回路や電源回路などで本来一定であるはずの出力電圧や電流が、わずかに変動してしまう現象である。英語ではrippleと呼ばれる。多くの場合、ダイオード整流後の直流電圧に含まれる小さな交流成分が原因で、電源の負荷変動や整流の方式によって発生する。高精度や高安定性が求められる回路では、このリップル(脈動)が性能や品質に大きく影響し、誤動作やノイズの発生源となることがある。特にオーディオ機器や高周波回路では、ちょっとした電源波形の乱れが音質や信号特性を損なうため、十分な対策を講じる必要がある。
発生の原因
整流器とコンデンサを組み合わせて直流を得る基本回路を考えたとき、入力交流波形の頂点付近でコンデンサを充電するが、次の頂点が来るまでにコンデンサの電圧が少しずつ放電してしまう。この放電分の波形差がリップル(脈動)として現れる。フルブリッジ整流かハーフブリッジ整流かなどの整流方式、コンデンサの容量や負荷電流の大きさといった要素がリップル量を左右する。また、スイッチング電源の場合は高周波スイッチングによるパルス出力を平滑化しているため、スイッチング周波数やフィードバック制御の特性が脈動に大きく影響する。
直流回路において、
・リアクトルは電流
・コンデンサは電圧
の脈動(リップル)を抑制する。— りょう8 (@Ryo8_helloween) June 10, 2018
影響と問題点
リップル(脈動)は回路の電源安定性を下げる要因であり、アナログ回路やデジタル回路の動作に悪影響を及ぼす。例えばアンプ回路では、電源に含まれる脈動が増幅されて雑音となり、音質の劣化につながることがある。デジタル回路では電源電圧の変動がクロック信号のジッタ増大を引き起こし、論理回路の誤動作やメモリの書き込み失敗などにつながるリスクがある。さらに、電源ライン全体に不安定要素をもたらすため、システム全体の信頼性に影響する。
測定と評価方法
一般的にリップル(脈動)の評価はオシロスコープやスペクトラムアナライザを用いる。オシロスコープでは直流出力に含まれる交流成分のピークからピークまでの電圧差やRMS値を見ることで、どれほどのリップルが混入しているかを定量的に把握できる。スペクトラムアナライザを用いれば周波数成分を解析し、どの周波数帯で顕著に脈動が発生しているかを知ることが可能である。高精度回路ほど脈動の許容範囲は厳しくなるため、実際の負荷条件下での測定が重要となる。
対策技術
脈動を低減させるためには、以下のような手法が用いられる。
- コンデンサ容量を大きくして放電による電圧降下を抑制
- LCフィルタなどのフィルタ回路を追加し高周波成分を除去
- レギュレータ回路を挿入して出力電圧をさらに安定化
- 負荷分散設計や適切なスイッチング周波数の選定
- グランド配線のインピーダンスを下げノイズ経路を減らす
これらの対策によって、強いリップル(脈動)が原因となる動作不良やノイズ混入を最小限に抑えることが期待できる。
レギュレータとの関係
低ドロップアウトレギュレータやスイッチングレギュレータは強力な電源安定化手段として利用される。しかし、その入力側に大きなリップル(脈動)がある場合、レギュレータ自身にも余分な動作負荷がかかり、効率低下や発熱問題が生じる可能性がある。特に低電圧高電流の回路では、レギュレータの選定や放熱設計が不十分だと、リップル低減を優先するあまりシステムの熱管理が困難になることもある。従って、レギュレータ前段の整流・平滑回路の設計が非常に重要となる。
スイッチング電源におけるリップル
スイッチング電源の原理は、高周波でスイッチングを行いパルス状の電力をトランスやインダクタで制御しつつ整流・平滑化する手法である。効率面では優位性があるが、スイッチング周波数に応じたリップル(脈動)がどうしても発生し、ノイズを伴うことが多い。こうしたノイズ成分や脈動を低減するために、回路設計ではトランスやインダクタの選定、スイッチング素子のドレイン・ソース間の最適なスナバ回路設計、回路レイアウトの工夫などが求められる。
負荷応答特性への影響
スイッチング電源などは負荷が急激に変化したとき、その応答速度に一時的なリップル(脈動)の増大として表れることが多い。負荷の急変に追従できず、出力電圧が大きく振動する過渡現象が生じるためだ。こうした負荷応答特性を改善するには、制御ループ設計やコンデンサの配置と容量選定を見直し、急激な電流変化をスムーズに処理する必要がある。これにより、回路全体の安定性を高めることが可能となる。
高周波回路での影響
- ノイズマージンの低下による誤差拡大
- 変調成分が基準クロックに混入
- デバイス負荷の熱特性を変化