リアルタイム検査|ラインを止めずに欠陥を即時検出

リアルタイム検査

リアルタイム検査とは、生産ライン上で流れる部品・製品に対し、センサやカメラ、計測器で取得したデータを即時処理し、合否判定や工程フィードバックをタクトタイム内に完結させる方式である。工程内で不良を止め、ばらつきを抑制し、再加工・手直し・流出コストを最小化できる。従来の抜取検査やオフライン測定に比べ、変動の早期検知、トレーサビリティ強化、ライン停止の未然防止に寄与する。近年はエッジコンピューティングとAIの普及により、画像処理・異常検知・予測保全をライン側で実装できる環境が整いつつある。

目的と効果

  • 不良流出の防止:欠陥品を後工程や市場へ送らない。
  • タクト維持:高速判定でライン停止を回避し、生産性を確保する。
  • ばらつき管理:SPCによる統計監視で工程能力を維持する。
  • 原価低減:再検査・手直し・廃棄のコストを削減する。
  • トレーサビリティ:判定結果・画像・波形をロットやシリアルに紐づけ保全する。

方式とアーキテクチャ

インライン/オンマシン

インラインは搬送中の対象を非接触で連続検査する方式である。オンマシンは加工機や組立設備に計測機能を持たせ、加工直後に合否を返す方式である。前者はスループット、後者は補正フィードバックに強みがある。実際には両者を併用し、工程初期で荒取り、終端で最終保証を行う構成が一般的である。

センシング手法

  • 画像測定:2D/3Dカメラと照明で外観・寸法・位置を高速判定する。
  • レーザー測長・プロファイラ:形状プロファイルや段差・うねりをスキャンする。
  • 接触プローブ:オンマシンでの寸法確認やジオメトリ評価に用いる。
  • X線CT測定:内部欠陥・ボイド・密度ムラの非破壊評価に適する。
  • 音響・振動・電流波形:モータや工具状態の異常検知に活用する。

処理基盤

遅延要件に応じ、FPGA/GPU/CPUを組み合わせたエッジ処理を行う。設備側はPLC/IPCでI/Oと同期し、OPC UAやMQTTでMESへ連携する。遅延予算(センシング→伝送→推論→判定→アクチュエータ)はミリ秒単位で設計し、バッファリングや並列化でジッタを抑える。

適用分野とユースケース

  • 切削・研削・塑性加工:工具摩耗の兆候検知、加工寸法の即時補正。
  • 樹脂・鋳造・プレス:ショートショット、バリ、成形歪みの検出。
  • 電子実装:はんだ濡れ、ブリッジ、部品有無・位置ずれの判定。
  • 組立:トルク・角度波形の監視、シール・圧入の座屈検出。
  • 表面処理:表面粗さや欠陥(ピンホール、クラック、異物)の監視。

性能指標と評価

品質面では検出感度と特異度、見逃し率と過検出率、再現性(R&R)、安定性(ドリフト耐性)を評価する。運用面では稼働率、MTBF/MTTR、スループット、リードタイム、データ完全性(監査証跡)をKPI化する。閾値型は解釈容易、学習型はロバストだがドリフト管理が要点である。

MSA(測定システム解析)

ゲージR&Rで繰返し性・再現性を定量化し、GRR%と工程能力の関係を確認する。マスター・校正片で日常点検を行い、光学系はフォーカス・照度・ホワイトバランスを基準化する。治具は位置決め剛性と再現性を両立させ、熱源からの影響を遮断する。

設計と実装の手順

  1. 要求定義:検出対象、許容差、タクト、設備I/F、データ保持年限を明確化する。
  2. データ収集:代表性サンプルと環境ばらつきを含めて取得・アノテーションする。
  3. アルゴリズム選定:ルールベースかAIかを決め、誤検出コストと説明可能性でトレードする。
  4. 光学・治具設計:照明方式、偏光、シャドー抑制、振動・熱対策を反復最適化する。
  5. 遅延設計:パイプライン化、バッチ/ストリーム処理、リアルタイムOSの採否を決める。
  6. 検証:FMEAで故障モードを洗い出し、最悪ケースで実ライン評価を行う。
  7. 本番運用:ドリフト監視、モデル再学習、レシピ管理、監査ログの保全を行う。

AI/機械学習の活用

深層学習は微小欠陥や複雑パターンに強い。教師あり分類・セグメンテーション、教師なしの異常検知、半教師ありの擬似ラベル化などを使い分ける。エッジでは量子化・蒸留・TensorRT等で推論を高速化し、MLOpsによりデータ収集→学習→配備→監視を回す。ドメインシフトにはデータ拡張と照明・姿勢の多様化で耐性を高める。

信頼性・保全設計

フェールセーフ(安全側停止)とフェイルソフト(性能低下で継続)を用意し、ウォッチドッグ・冗長電源・二重化ストレージで可用性を確保する。レンズの汚れ検知、自己診断、温湿度監視を組込み、校正スケジュールを点検表に落とし込む。ネットワーク遅延やパケットロスに対してはQoSと再送制御を設計する。

コンプライアンスと標準

品質マネジメントはISO 9001やIATF 16949に整合させ、記録の完全性と追跡性を担保する。医薬・食品ではGxPを意識し、監査証跡、電子署名、権限管理を厳格化する。安全・EMC・機械指令等に適合し、変更管理と妥当性確認をルール化する。

よくある課題と対策

  • 照明変動:定電流駆動・エンクロージャで外乱光を遮蔽し、自動露出を固定化する。
  • 段取り替え:レシピ・モデルのバージョン管理と誤適用防止のポカヨケを実装する。
  • 偽陽性過多:二段階判定(粗→精)、センサフュージョンで確信度を高める。
  • ライン停止リスク:検査バイパス、隔離コンベヤ、WIP上限で影響を局所化する。
  • データ氾濫:必要最小限の保存粒度を定義し、要約メタデータで検索性を担保する。

費用対効果の算定

費用対効果は、不良削減(社内・社外)、工数削減、材料ロス低減、ライン停止短縮、要員配置最適化などの効果を年額で算出し、設備費・開発費・保守費と比較してROIを求める。導入初期はスモールスタートで対象欠陥を絞り、PoC→パイロット→全体展開の段階導入とする。これによりリアルタイム検査は品質と生産性を同時に高める実践的な手段となる。