モノレール
モノレールは一本の軌道桁(ガーダー)を用いて車両を支持・案内する都市交通システムである。通常の鉄道が2本レールに鋼輪で乗るのに対し、モノレールはコンクリートまたは鋼製の桁にゴムタイヤで跨乗(ストラドル)または懸垂して走行する。高架化に適し、占用幅が小さく、急曲線・急勾配に強い一方、分岐構造や増結柔軟性、相互直通の難しさが課題となる。
方式と構造
モノレールの代表方式は跨座式(ALWEG系)と懸垂式である。跨座式は箱桁の上に車体が跨がり、走行輪と側方案内輪で支持・案内する。懸垂式は桁下に車体を吊り下げ、上部フレーム内の走行装置が走る。いずれも地上障害物の回避に強く、道路上空に設置しやすい。
軌道桁と支持構造
モノレールの軌道桁は中空のプレストレストコンクリートが多く、標準スパンは20〜30m程度である。桁断面は走行輪の荷重分散と案内輪の接触面確保を両立させる形状をとる。支柱は道路中央帯や歩道境界に設置し、用地の細長い占用で済むのが利点である。
走行装置と案内方式
跨座式モノレールは空気入りゴムタイヤの走行輪で鉛直荷重を受け、水平力は左右の案内輪でとる。ゴムタイヤは粘着係数が高く、発進・勾配克服に有利である。懸垂式は上部機器箱内に輪軸を収め、横風時の振れをダンパで抑制する。
電力供給と駆動
モノレールの電力は側桁内の給電レールや集電靴から受電する直流方式が一般的で、VVVFインバータ制御の誘導電動機または永久磁石同期電動機で駆動する。加減速はゴムタイヤの高い粘着により高性能で、回生ブレーキで省エネルギー化を図る。
分岐装置と運用
モノレールの分岐は「可動桁」を用いる。軌道そのものをスライド・回転させて接続替えを行うため、装置は大型で保守箇所が増える。転換時間を要するため、本数の多いダイヤでは渡りや待避の設計に配慮が必要になる。
輸送力・速度の目安
- モノレール(跨座式):編成4〜8両、設計最高速度60〜80km/h、ピーク時輸送量は片方向で1〜2万人/時が目安
- LRT:編成2〜3両、40〜70km/h、数千〜1万人/時
- 重軌道型地下鉄:8〜10両、70〜100km/h、2〜4万人/時
曲線・勾配性能
ゴムタイヤの特性によりモノレールは最小曲線半径を小さく取れる(半径100m級例が多い)。設計勾配も4〜6%程度まで許容しやすく、起伏の大きい都市や既存道路沿いの線形条件に適応しやすい。
騒音・振動・環境適合
モノレールは転動音が相対的に小さく、高架橋の遮音パネルや弾性支持と組み合わせて沿道環境に配慮できる。タイヤ摩耗粉の管理、橋脚景観、日照・風環境への配慮など社会受容性を高める設計が求められる。
安全・避難計画
高架区間が多いモノレールでは、桁側方の避難通路、非常用はしご、手動開戸、地上誘導動線の連続性が重要である。地震時には支承の落橋防止とレール締結の冗長化、風荷重時の運転規制基準が整備される。
信号・自動運転
モノレールはCBTCやATOとの親和性が高く、停車精度や発着間隔の安定化に寄与する。ゴムタイヤ車は停止位置保持が容易で、ホームドアとの一体設計に適する。地上設備は桁内に収容されることが多く保守動線が短い。
建設・ライフサイクルコスト
桁・橋脚の連続施工により占用が小さく、交差点の立体化を容易にする一方、分岐装置・特注部材の比率が高いのがモノレールのコスト構造である。輪重は分散され軌道損傷は少ないが、タイヤ・ゴム部材の計画的交換が不可欠である。
適用領域とネットワーク性
モノレールは空港アクセス、湾岸・新都心、丘陵住宅地やテーマパークなどで強みを発揮する。既存鉄道との直通は難しいため、結節点での同一レベル乗換え、運賃制度の一体化、時刻同期がネットワーク価値を左右する。
代表的事例
日本では東京モノレール(跨座式)、大阪モノレール(長編成・長距離)、湘南モノレール(懸垂式)が知られる。海外ではドルトムントやヴッパータール(懸垂式)、重慶(大規模跨座式ネットワーク)など多様な展開がある。
設計時の留意点
- モノレール特有の車両限界と桁断面の標準化
- 分岐・車庫入換え動線の簡素化と冗長化
- 避難・防災・風雨時運転規制の標準整備
- 沿道景観・日影・騒音への総合設計
用語メモ
跨座式モノレール、懸垂式、案内輪、走行輪、回生ブレーキ、可動桁、CBTC、ATO、最小曲線半径、設計勾配といった用語が基本セットとなる。