マイクロ波
マイクロ波はおよそ300 MHz〜300 GHzの電磁波で、波長は1 m〜1 mmである。直進性が強く回折が弱い、誘電体を選択的に加熱する、空間路損が大きい、といった特性を持つ。用途はレーダ、通信、センシング、加熱に及ぶ。ISM帯(2.45 GHz、5.8 GHz)が整備され、電子レンジや無線LANに普及した。高周波では回路が分布定数として振る舞い、導波路・同軸線・マイクロストリップが重要となる。マイクロ波は非電離で、化学結合は切らないが、誘電損による発熱に注意する。
周波数範囲と波長
UHF上部〜EHF下部がマイクロ波とされ、L/S/C/X/Ku/Ka帯の区分がある。X帯は約8〜12 GHz、Ku帯は約12〜18 GHzである。波長λはλ=c/(f√(εrμr))、自由空間ではλ≈c/fで近似できる。10 GHz級ではミリ寸法が電気長に相当し、寄生成分が無視できない。
電磁波の基礎式
マイクロ波解析は波動方程式を用い、位相速度v=1/√(με)、波動インピーダンスη=√(μ/ε)で表される。金属では表皮効果により表皮深さδ≈√(2/(ωμσ))となる。回路特性はSパラメータ(S11,S21)で評価し、VNAを用いる。
伝搬特性
自由空間ではマイクロ波は見通し支配で回折が弱い。自由空間路損はFSPL(dB)=32.45+20log10(f [MHz])+20log10(d [km])で近似する。大気吸収は22 GHz付近の水蒸気、60 GHz帯の酸素が顕著で、雨減衰も無視できない。
導波路と共振器
矩形導波路の基本モードはTE10で、カットオフ周波数はfc=c/(2a)(aは広辺)である。共振器は高Qのフィルタや発振器に用いられる。方向性結合器やハイブリッド等の受動素子はマイクロ波回路の定番である。
半導体デバイス
マイクロ波用の能動素子にはGaN HEMT、GaAs HEMT、SiGe HBT、PINダイオード、バラクタがある。送信段は高出力高効率のGaN、受信段は低雑音のpHEMTやSiGeが主流である。MMICは増幅器やミキサをチップ化し、雑音指数や1 dB圧縮点が主要指標となる。
レーダとセンシング
- FMCWとパルス方式が主流で、距離分解能は帯域幅に比例する。
- ドップラー効果で速度、位相差で到来角を推定する。
- 合成開口(SAR)は高分解能画像を得る。
- 気象レーダは降雨分布を観測する。
通信応用
- 衛星通信はKu/Ka帯を用い、スポットビームで周波数再利用を図る。
- 無線LANは2.4/5 GHz帯を用い、IEEE 802.11が規格化する。
- 移動通信は5GのmmWave(28/39 GHz)で超高速を実現する。
- 固定マイクロ波リンクはバックホールに用いられる。
安全性と規制
マイクロ波は非電離であるが誘電加熱により生体が過度に吸収すると危険である。国際指針(ICNIRP)は電力密度やSARの限度を定める。シールド筐体や金属メッシュで漏洩を抑え、ISM帯(915 MHz、2.45 GHz、5.8 GHz)や免許帯の規定に従う。
測定と評価
評価にはスペクトラムアナライザとVNAを用いる。前者は占有帯域やスプリアス、後者はSパラメータを校正(SOLT/TRL)して取得する。SMAやNなどのコネクタはトルク管理が再現性を左右する。電力計や熱画像計測はマイクロ波加熱の実験で有用である。
材料と相互作用
誘電体の複素比誘電率ε*=ε′−jε″がマイクロ波損失を決め、損失正接tanδ=ε″/ε′で評価する。水は2.45 GHzで強く吸収する。低損失基板としてPTFE系やセラミック複合材が用いられる。電波吸収体は磁性損失・誘電損失で反射を低減する。
設計上の留意点
インピーダンス整合(λ/4トランスやL型)、基板の寄生成分、ビアとグラウンドの一体化、不要放射の抑制、熱設計が要諦である。電磁界シミュレーション(FDTD、FEM)はマイクロ波構造の最適化に有用で、試作と測定で検証する。
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