ポリエチレン管
ポリエチレン管は、熱可塑性樹脂であるポリエチレンを原料とする圧力管であり、水道、ガス、排水、通信線路保護など多用途に用いられる配管である。耐食性と靭性に優れ、軽量で可撓性が高く、継手の融着により管路を一体化できることが特長である。設計は長期強度に基づく等価応力管理とし、寸法系列は外径・肉厚で規定される。圧力等級はSDRやPNで表され、材料等級はPE80やPE100のようにMRSで分類される。施工では突合せ融着や電気融着を用い、漏水・漏洩の少ない管網を構築できる。
材質と分子構造
ポリエチレンは飽和炭化水素系の高分子であり、半結晶性の結晶層と非晶層からなる。高密度型HDPEは結晶化度が高く弾性率と耐応力亀裂性に優れる一方、中密度MDPEは耐応力割れや低温衝撃に強い傾向がある。材料の長期強度はMRSで表され、PE80(8.0 MPa相当)、PE100(10.0 MPa相当)といった等級を用いて設計応力を決める。温度上昇でクリープが増大するため、許容圧力は温度補正を行うのが通例である。
製造法と基準
ポリエチレン管は押出成形で製造し、冷却・校正により外径と真円度を確保する。直管とコイル巻きがあり、現場搬入長に応じて選定する。屋外耐候にはカーボンブラックを分散させた黒色が多く、用途識別に色帯を施す場合がある。寸法・外観・圧力試験・耐亀裂性などの検査項目が規格で定められ、製品はSDR、外径、材質等級、製造ロットなどの表示を有する。
寸法とSDR
寸法比SDRは外径Dと肉厚tでSDR=D/tと定義され、数値が小さいほど肉厚が厚く高圧に適する。薄肉円筒のフープ応力はσh=pD/(2t)で表せ、許容応力以下となるようSDRを選ぶ。一般にPN(常用圧力)はSDRと材質等級に依存し、同じPE100でもSDR11は高圧、SDR17は中圧の目安となる。継手部は母材同等の性能を満たす必要がある。
力学特性と可撓性
弾性率は金属より低いが延性に富み、地盤沈下や地震動に追従しやすい。最小曲げ半径はおおむね20~30D程度を目安とし、屈曲による座屈やしわを避ける。衝撃に強く、低温でも靭性を維持しやすいが、長期荷重下ではクリープ変形が支配的となるため、支持間隔や埋設条件を適切に設計することが重要である。
耐食性・化学耐性
ポリエチレン管は電気化学的腐食を受けず、土壌環境での耐久性が高い。多くの酸・アルカリ・塩類に耐える一方、強酸化剤や高濃度の有機溶剤には注意を要する。水道用途では残留塩素や二酸化塩素との相互作用を考慮し、温度と時間の関数として酸化劣化を管理する。内面は滑らかで付着物が生じにくく、粗度が小さいため送配水のエネルギー損失を抑えられる。
接合方式
- 突合せ融着: 端面を加熱板で可塑化し、所定圧力で圧接・冷却する。長尺布設に適する。
- 電気融着: 継手内蔵コイルへ通電し融着する。更新や狭隘部に有効でトレーサビリティ管理もしやすい。
- ソケット融着: 小径管向けの加熱插入方式で、施工が簡便である。
- メカ継手: 金属スリーブやクランプで機械的に接続する。異材接続や仮設に用いる。
施工と敷設
軽量で可撓なため、開削布設のほかHDDなどの非開削工法にも適する。埋設では均質な砂基礎と側方支持を確保し、鋭利物や大塊混入を避ける。温度伸縮は金属より大きいので、地中拘束と継手一体化で管理する。低温時の取り扱いは衝撃を避け、融着は温度・圧力・時間の管理記録を残すことが望ましい。
水理性能
内面粗度が小さく、ダルシー・ワイスバッハの摩擦係数が低い。ハゼン・ウィリアムズ係数も高水準で圧力損失が小さい。管壁の弾性により水撃圧が緩和されやすく、バルブ操作時の過渡圧力を低減しうる。長期運転での内面劣化は小さいが、高温流体や薬液では粘度・レオロジー影響を確認する。
用途
- 上水・工業用水配水本支管: 漏水率低減と耐震性向上に寄与。
- 都市ガス・LPガス配管: 延性と電食非感受性を活かす。
- 排水・下水更新: インバート補修や管更生に使用。
- 農業灌漑・スプリンクラー: 軽量で敷設が容易。
- 電線・光ケーブル保護: 可撓性と耐摩耗性を活用。
他材料との比較
PVC管に比べて低温衝撃と曲げ追従に優れ、溶剤接着ではなく融着で一体化できる。鋼管やダクタイル鋳鉄に比べて耐食・軽量で、地震や地盤変状に強い一方、高温・高圧の限界は金属に及ばない。ライフサイクルでは漏水低減と施工省力が強みであり、総所有コストの面で有利となる場合が多い。
設計上の注意
屋外露出では紫外線対策とたわみ管理を行う。油類の浸透や臭気透過が懸念される環境ではバリア層材との複合やルート変更を検討する。ガス配管では非金属ゆえの探査性確保のためトレーサワイヤを併設する。圧力試験は段階昇圧と安定保持で実施し、継手ビードの外観と寸法を確認する。
検査と維持管理
ポリエチレン管の維持管理は融着記録のトレーサビリティ、漏洩点検、外力・変位のモニタリングが中心である。高応力集中や傷からのSCG(遅延亀裂)を防ぐため、施工時の傷防止と適切な埋戻しが重要である。必要に応じてCCTVで継手部や内面を点検し、更新時はスリップライニングや破断更新を適用する。