ボンネット|エンジンルームを覆う開閉外板

ボンネット

ボンネットは自動車のエンジンルームを覆う外板であり、走行風・飛来物から機関部品を保護しつつ、整備時のアクセス開口を提供する部品である。英語では「hood」「bonnet」と呼ばれ、意匠面(スタイリング)・安全面(歩行者保護)・機能面(冷却・遮熱・防音)を同時に満たすことが求められる。構造はアウターパネルとインナーパネルの二重構造が一般的で、ヒンジ・ラッチ・セーフティラッチ・ダンパーなどの機構部品によって開閉する。

定義と役割

ボンネットは車両前部の開閉式外板であり、主要役割は①機関部の保護、②メンテナンスアクセスの確保、③空力・冷却・遮音といった性能の担保、④車両フロント意匠の形成である。近年は歩行者頭部保護規制への適合が重要となり、衝突時に変形・後退しやすい設計が採用される。

構造と主要部品

ボンネットは薄板外皮であるアウターパネルと、補強骨格のインナーパネルをヘム曲げで一体化した殻構造である。周縁にはウェザーストリップを介してフェンダーやフロントエンドと取り合い、フードラッチとストライカーで確実に閉鎖する。

  • ヒンジ:車体側に固定され、回動中心を規定する。後退機構付きが用いられる。
  • ラッチ/セーフティラッチ:二段保持で不意の開放を防止する。
  • ダンパー/ガススプリング:開閉荷重を低減し、保持角を確保する。
  • インシュレーター:吸遮音材でNVHを低減、エンジン音の透過を抑制。
  • 遮熱シート:排気系・ターボ付近の熱を外板から隔離する。

材料と製造プロセス

材料は冷延鋼板や亜鉛めっき鋼板が汎用で、軽量化にはアルミ合金やCFRPが採用される。外板品質には面ひずみ・オレンジピール抑制が重要で、深絞り性と塗装外観の両立が求められる。

  1. プレス成形:アウターは深絞り・張出し、インナーはビーディングで剛性確保。
  2. トリム/穴明け:ヒンジ・ラッチ・ダンパー取付穴を加工。
  3. ヘム加工:周縁を巻き込み、アウターとインナーを一体化。
  4. 接合:スポット溶接や構造用接着で面剛性と耐食性を両立。
  5. 塗装:電着後に中上塗りを施し耐候・外観を確保。

安全性能と規制対応

ボンネットは歩行者保護の観点から、衝突時に頭部基準点下のクリアランスを確保し、エネルギ吸収性を高める。ヒンジ後退機構、変形容易なリブ割付、ラッチ周りのクラッシュマネジメントが鍵となる。高級車では衝突検知で瞬時に跳ね上げるアクティブ型(ポップアップフード)が導入され、頭部加速度ピークを低減する。

NVHと熱・空力マネジメント

NVHでは板厚・ビード配置・接着線設計による曲げ/ねじり固有値の最適化が重要である。熱では排熱経路と遮熱レイアウト、空力では流入/流出ダクトやパネルギャップ制御が効く。

  • フードインシュレーター:高周波域の透過損失改善。
  • エアシール:ラジエター上部の漏れ流れを抑え冷却効率を安定。
  • アウトレットルーバー:エンジンベイの負圧排気を補助。
  • ギャップ/フラッシュ:風切り音と見栄え品質に直結。

整備性とユーザビリティ

ボンネットはサービス性の起点であり、開角・操作力・保持力・開閉速度のチューニングが必要である。二段ラッチの操作性、手挟み防止のクリアランス、プロップロッドの視認性や収納性も評価対象となる。

  • 開角:ヘッドライト・補機へのアクセスを規定。
  • 開閉荷重:ダンパーレートとラッチ摩擦で決まる体感品質。
  • 防汚:シールと水切りで整備時の被水を低減。

設計パラメータと評価手法

設計では軽量・剛性・安全・外観のトレードオフを最適化する。CAEで静剛性(中心押し・コーナー押し)、固有値、衝撃吸収、熱変形を解析し、試作段階で面性状・隙間段差・開閉耐久を検証する。

  • 曲げ/ねじり剛性:開閉時のビビりや風圧変形を抑制。
  • 局部剛性:指触れ・洗車時のへこみ感を抑える。
  • 質量目標:アルミ/CFRPの採用で前軸荷重を低減。
  • 耐食:ヘム内の水残り対策とシーリング設計。

種類とデザインバリエーション

ボンネットの意匠は車種特性を強く表す。パワーバルジはエンジン上のクリアランス確保と視覚的パワー感を両立し、エアスクープ/ルーバーは熱・空力を補助する。フェンダーまで一体化したクラムシェル型はパネル継ぎ目を減らし、高級感を演出する。

  • クラムシェル:外周継ぎ目を減らし面質を強調。
  • パワーバルジ:高さ確保と意匠アクセント。
  • エアスクープ:吸気・排熱用途の機能開口。
  • ルーバー:雨仕舞と排熱の両立設計が肝要。
  • アクティブ型:衝突時に瞬時作動する安全志向。

商用車のボンネット型とキャブオーバー型

トラックでは前突の整備性や衝突性能を重視する「ボンネット型」と、荷台長や取り回しを優先するキャブオーバー型がある。前者はエンジン上に長いフードを持ち、冷却・静粛・前面剛性で利点がある一方、全長が増す。用途や法規、車両パッケージに応じて最適解が選ばれる。

関連部品とのインタフェース

ボンネットはフェンダー、ラジエターグリル、ヘッドランプ、フロントクロスメンバー、ウェザーストリップ、ストライカー/ラッチ、ヒンジ、ダンパーと取り合う。各取付剛性や公差設計、熱膨張差、塗装厚みを考慮し、ギャップ均一性と面ズレ抑制によって外観品質と耐久性を確保する。