ボックス
ボックスは配線・配管・機器を保護し、結線・分岐・機器収容・操作を行うための筐体である。電気設備ではジャンクションボックスやアウトレットボックス、制御ボックス(盤)、端子ボックスなどが用いられ、機械設備ではセンサやアクチュエータの中継点、化学プラントでは腐食・粉じん・爆発雰囲気からの保護を担う。材質・防護等級・寸法・熱設計・電磁環境・施工性を総合的に満たすことが要件である。
用途と分類
代表的な用途は①結線・分岐(ジャンクションボックス)②器具取付(アウトレットボックス)③制御機器収容(コントロールボックス)④ケーブル端末(端子ボックス)⑤計装・通信(フィールドボックス)である。設置環境は屋内・屋外・腐食性雰囲気・粉じん・水噴霧・防爆など多岐にわたり、据置型・埋込型・吊下げ型に大別される。
構造と材質
材質は鋼板(SECC/SGCC)、ステンレス(SUS304/316L)、アルミ、ABS・ポリカーボネート・FRP等の樹脂が主流である。金属は剛性・遮蔽性に優れ、樹脂は軽量・耐候・無錆で屋外や通信向けに適する。蓋はねじ止め・スナップ・ヒンジ・クイッククランプなどで、パッキン(EPDM/NBR/シリコーン)により気密を確保する。
防護等級(IP/IK)
外被の防塵・防水性能はIP等級(例:IP65、IP66、IP67)で示され、耐衝撃はIK等級で評価する。屋外噴流水にはIP66、短時間浸水にはIP67、粉じん環境にはIP5X以上が目安である。選定時は清掃方法(高圧洗浄の有無)や飛来粒子のサイズも併せて検討する。
規格と適合
参照規格はIEC/JISを基本に、用途によりUL/NEMA、ATEX/IECEx(防爆)、RoHS等が関与する。ねじ・貫通部はケーブルグランドやコンジット、ブッシングで適合をとり、アース用スタッドやPE端子を備える。透明窓付や計器取付用パネルなどの派生仕様も多い。
寸法と容量設計
有効容量は端子台・機器・配線曲げ半径・放熱クリアランスを加味して決める。ケーブル充填率は配線ダクト断面に対して約40~50%以下を目標とし、最小曲げ半径(導体外径の4~15倍程度、種別による)を確保する。将来増設用の余裕も持たせる。
熱設計と結露対策
発熱要素(電源、インバータ、リレー等)の合算損失から内部温度上昇を見積り、許容温度差に対し表面積・放熱フィン・ファン・ヒートシンク・換気フィルタを検討する。屋外では日射を考慮し、遮熱塗装・二重構造・サンシェードを併用する。結露対策としてはドレン、透湿ベント、ヒータの採用が有効である。
電磁環境(EMC)
インバータや無線装置を収容するボックスでは、シールド連続性(蓋・基台・グランドの360°接続)と導電ガスケットが有効である。樹脂箱でも内部に金属シールドケースを併設し、導入部にはEMCグランドやフェライトを適用する。
導入部と配線アクセサリ
導入はケーブルグランド、コンジット、PF管、フレキ管、ダクトを併用する。引張荷重のあるラインはクランプでストレインリリーフを設け、エッジ部にはブッシングで被覆損傷を防止する。ノックアウトは施工性を高めるが、防護等級低下に留意する。
施工と保守
設置は平面度・防水面の上向き重ね・パッキン圧縮率の均一化を守る。トルク管理、耐緩み対策(ばね座金、ねじロック)、接地抵抗の確認を行う。保守ではパッキン硬化・ひび・圧痕、結露痕、腐食、ねじのガリング、配線の被覆割れを点検する。
防爆仕様
爆発性雰囲気ではEx d(耐圧防爆)、Ex e(安全増防爆)、Ex i(本質安全)などの方式があり、ゾーン・ガスグループ・温度等級に適合させる。導入部・表示器・操作子も同等防爆等級を満たす必要がある。
腐食環境と表面処理
海浜・薬液・高湿環境ではSUS316Lや厚膜塗装、溶融亜鉛めっき、粉体塗装、フッ素樹脂コートを用いる。異種金属接触腐食を避けるため、座金・ボルト材質を合わせ、電位差と電解環境を最小化する。
選定手順(実務フロー)
- 環境条件の定義(温湿度、粉じん、水、日射、腐食、爆発雰囲気)
- 必要防護等級・耐衝撃等級の決定
- 機器構成・配線から寸法と余裕率の算定
- 熱・結露・EMC対策の要否判定
- 導入方式(グランド/コンジット等)・メンテ性の検討
- 規格適合・材料・表面処理・色(識別)の決定
よくある不具合と対策
蓋の撓みでIPが確保できない、未使用貫通部の塞ぎ忘れ、日射で内部温度が想定超過、ケーブル引張で端子ゆるみ、結露で端子腐食、電磁ノイズでセンサ誤動作等が起きる。対策は補強リブ、ブランクプラグ、遮熱・換気、クランプ強化、防錆処理、シールドと接地の適正化である。
寸法・配置の実務指標
配線作業性の観点から、前面空間は蓋開き角・工具挿入長さを確保し、端子列ピッチは表示ラベルが読める余裕を取る。底面・側面のDINレール配置は配線の交差最小化を優先し、ノイズ源と微小信号は距離・シールド・アースで分離する。
用語上の注意
「盤」と呼ぶ制御ボックスは配線ダクトや母線室を含む大型筐体を指す場合がある。一方で小型の結線用は「箱」と俗称されることもあるため、仕様書では機能・等級・寸法を明確化する。
NEMAとIPの対応の考え方
NEMAタイプは防塵・防水に加え腐食・氷結等の条件を含み、IP等級と一対一対応しない。目標性能を要素分解し、実環境に照らして読み替えるのが実務的である。
記録とトレーサビリティ
型式・シリアル・製造ロット・ガスケット交換履歴・締付トルクを記録し、定期点検で更新する。屋外では紫外線・塩害・酸性雨の影響を踏まえ交換周期を短縮する。
チェックリスト(抜粋)
- 等級:IP/IK、温度範囲、耐候性、難燃性
- 構造:蓋方式、パッキン材、アース端子
- 導入:グランドサイズ、ケーブル本数、最小曲げ半径
- 熱:損失合計、換気/放熱、結露リスク
- EMC:シールド連続性、ケーブルシールド処理
- 保守:施錠・封印、表示ラベル、スペア容量
コストとライフサイクル
初期費は小型樹脂が有利だが、屋外・腐食環境ではステンレスや厚膜塗装金属が長期的に有利となる場合が多い。保守交換の容易さ、共通部品化、在庫性を含めて総所有コストで評価する。