ベンディング
ベンディングとは、外力により材料を曲げて所望の角度・半径を与える加工であり、板金・棒材・管材・形鋼など広範な素材に適用される。一般に初期は弾性変形、続いて塑性変形が支配的となり、除荷後にはスプリングバックが生じる。設計者は最小曲げ半径、ベンドアローワンス、穴や切欠きの位置、繊維方向や集合組織の影響を踏まえ、製造側はダイ開口、パンチ半径、加圧力、当て板やバックゲージの条件を最適化することで、割れやしわ、面内伸びの偏りを抑制するのである。
原理:弾塑性曲げとスプリングバック
曲げの外表面は引張、内表面は圧縮応力場となり、板厚方向に中立軸が存在する。負荷時は応力–ひずみ応答に従い、降伏後は外側に塑性伸びが蓄積する。除荷時、弾性成分だけが回復するため、目標角度より戻るスプリングバックが生じる。高強度鋼やオーステナイト系ステンレスはヤング率が高く降伏比も高いため戻りが大きく、アルミ合金は降伏応力が低めでも弾性率が小さいため別の挙動を示す。対策としては過剰曲げ(オーバーベンド)、ボトミングやコイニングによる塑性拘束、パンチ半径やダイ開口の最適化がある。
基本用語:中立軸・K係数・ベンドアローワンス
展開長の算出では、板厚内で伸びがゼロとなる中立軸の位置が重要である。中立軸位置と板厚の比を表すのがK係数であり、K係数と曲げ半径・角度から曲げ部の増加長(ベンドアローワンス)を得る。実務では材質・板厚・Rとダイ条件によりK係数は変化するため、社内標準表を保持し試作結果で逐次補正するのが有効である。
中立軸と伸びのイメージ
- 外繊維:主に引張塑性変形が蓄積し板厚減少が起きやすい
- 内繊維:圧縮変形が支配、しわ・座屈の起点になりうる
- 中立軸:面内長さが保存される仮想層で展開の基準となる
K係数と計算の要点
- K係数は0.3〜0.5程度を起点に材質・R/t・ダイ条件で調整する
- 曲げ角が大きい、R/tが小さいほど塑性域が増えK係数は小さくなりやすい
- 実測角度と展開誤差をフィードバックしてテーブルを更新する
代表的な工法
- エアベンド:パンチが底付かず、角度は加圧力で連続的に制御する。汎用性が高い。
- ボトミング:パンチがダイ肩近傍まで押し込み、角度安定性が高い。
- コイニング:高圧で板材を型に押し込み、スプリングバックを最小化する。
- ロールベンド:3本ロール等で大半径曲げを連続付与する。
- ドローベンド/回転ベンディング:管材・型鋼を成形ローラで引き回す。
- ワイプベンド:フランジを当て金で押し当て、曲げ縁を形成する。
設計指針(DFM観点)
最小曲げ半径は材質と板厚に依存し、R/tが小さすぎると割れを誘発する。曲げ縁付近の穴やスリットは、曲げ線から板厚の2〜3倍以上離すと安定し、止まり穴には逃げ(リリーフ)を設ける。L字連続の曲げ順序は干渉を避け、反りを抑えるため対称配置を優先する。曲げ方向は圧延方向を考慮し、割れ感受性を低減する。
工具・設備:プレスブレーキと金型
プレスブレーキではパンチ先端R、Vダイ開口幅、バックゲージ、クラウニングが角度と直線性を左右する。ダイ開口は一般に板厚の数倍を用い、過大な開口は角度ばらつきと面粗さ悪化につながる。ロール曲げではロール間隔と押し込み量を段階的に調整し、端部の耳(フラット)を小さくする。管曲げではマンドレルやワイパーの有無が皺・楕円化を抑制する。
品質と検査
- 角度精度:角度ゲージ・レーザ測定で全長のばらつきを管理する
- 直線性・反り:クラウニング調整と押し当て位置で矯正する
- 表面性状:型傷・カジリは保護フィルムや工具研磨で低減する
- 寸法:展開長と実長の差分を統計管理し再現性を評価する
材料別の留意点
アルミ合金は加工硬化指数が低くR最小値がやや大きくなる傾向にある。ステンレスは反発が大きいため過剰曲げ設定を増す。高張力鋼は割れ防止のためR/tを大きめにし、端部の微小バリや傷を除去して応力集中を避ける。銅・黄銅はRが小さくても追従しやすいが表面保護が重要である。
欠陥モードと対策
- 割れ:R拡大、面取り、繊維方向最適化、ボトミングやコイニングの採用
- しわ:当て金の調整、ビード・ビードプレート、引張側のテンション付与
- 角度戻り:過剰曲げ、ダイ開口の最適化、クラウニングと荷重分布の均一化
- 面粗さ悪化:型面研磨、潤滑、保護フィルム
- 楕円化(管):マンドレル・ワイパー導入、曲げ半径の緩和
見積もりの勘所
必要加圧力はおおむね材料強度、板厚の二乗、曲げ長さに比例し、ダイ開口幅に反比例する。安全率を見込みつつ、実機の能力(kN)とストローク、金型の強度限界を勘案する。また段取り回数、角度補正の試し曲げ、型替え時間、刃先交換や研磨といった間接作業も原価に織り込むべきである。
デジタル化:CAM・シミュレーション
板金CAD/CAMは展開長を自動算出し、K係数表・材質データベースを参照してNCデータを生成する。CAEでは弾塑性解析によりスプリングバック量や板厚減少、局所応力を予測し、型条件の感度を比較できる。実測角度とシミュレーション結果のギャップを継続的に学習し、ルールベースからデータドリブンへ更新することで、ベンディングの初回合格率(FTY)を高められる。
安全と規格
フットペダルやライトカーテン、非常停止などの安全装置を常用し、挟み込みリスクを低減する。金型は摩耗や欠けを点検し、定期的にセンタリングと平行度を確認する。用語や寸法の定義はJIS・ISOの該当規格に準拠し、社内標準書・作業手順書に反映して運用する。