ヘリウムリーク|トレーサーガスで微小漏れ検知

ヘリウムリーク

ヘリウムリークとは、トレーサガスとしてヘリウム(He)を用い、密閉系や真空機器の漏れ量を高感度に検出・定量する手法である。ヘリウムは化学的に不活性で分子量が小さく、空気中濃度が約5ppmと低いためバックグラウンドが小さいという利点をもつ。質量分析方式のリークディテクタ(リークテスター)により、漏れ量は一般にmbar・L/sやPa・m3/sで表示され、微小欠陥やシール部、溶接部、ねじ接合(例:フランジのボルト締結)などの漏れ評価に広く用いられる。

原理と単位

ヘリウムガスを系内に加圧して外部へ滲み出す、または外部から系内へ吸い込まれる流れを検出し、質量数4に同調した質量分析計でイオン電流として測定する。漏れ量qは圧力降下法の定義と対応づけるとq=Δp・V/Δt(Pa・m3/s)で表され、1 mbar・L/s ≒ 1×10-1 Pa・m3/sの換算がよく用いられる。ヘリウムリークでは10-9〜10-12 mbar・L/s級の微小漏れ検出が可能である。

測定方式(真空法とスニッファ法)

  • 真空法(インテグラル法):試験体を真空排気し、外側からヘリウムを吹き付け、吸い込まれたヘリウムを直結したリークディテクタで検出する。全体漏れ感度が高く、密封容器や真空チャンバの検査に適する。
  • スニッファ法(局所検知):試験体内部をヘリウムで加圧し、外表面を探査プローブでなぞって漏洩点を局在化する。加圧配管、熱交換器、冷媒回路など現場適用が容易である。

代表的手順

  1. 校正:既知の校正リークを用いて装置応答を確認する。
  2. 前処理:乾燥、脱脂、ベーキングでアウトガスと付着水分を低減する。
  3. 試験:真空法では排気・到達圧力の確認後、外側から噴霧。スニッファ法では内圧設定後、継手や溶接線、ガスケット周りを走査する。
  4. 評価:応答曲線とベースラインを考慮して定量し、規格値と照合する。

装置構成

リークディテクタは前段にロータリーポンプ、主排気にターボ分子ポンプを備え、質量分析部は四重極または磁場型を用いる。入口側はキャピラリやバルブで流量を制御し、高濃度ヘリウムでの飽和やメモリ効果を抑える。真空法では試験体と直接接続し、スニッファ法では検出プローブと長尺ホースを組み合わせる。

感度と応答

最小検出漏れ量は装置のベース圧力、ポンプ速度、バックグラウンド、試験体の内部容積に依存する。検出応答は流路容量や配管長、バルブ開度の影響を受け、過渡応答の立ち上がり遅れを補正して評価する必要がある。高感度測定では環境ヘリウムの滞留や作業者の呼気由来の影響も考慮する。

検出限界を左右する要因

  • バックグラウンド:室内残留Heや先行試験の残留がベースを押し上げるため、換気とフラッシングが重要。
  • 透過・拡散:エラストマーはHe透過が大きく、長時間試験で見かけ漏れが増大する。
  • アウトガス:水分・溶剤・油分はイオン源の安定性に影響するため前処理が有効。

試験体の設計留意点

フランジ、ガスケット、ねじ接合部は微小隙間が生じやすい。トルク管理と表面粗さ、ガスケット材の選定、締結用ボルト本数・配列の最適化が重要である。溶接部はポロシティやクレータ割れがリーク源となるため、溶接条件と後処理(浸透探傷等)を併用する。

試験法のバリエーション

  • スプレー法:外表面にHeを局所噴霧し、応答ピークで位置特定。
  • フード法:広い面をフードで覆いHeを満たして積分漏れを測る。
  • ボンビング(加圧注入)法:密封体をHe雰囲気で加圧保持後、真空中で放出するHeを計測。
  • アキュムレーション法:密閉容器内に蓄積したHe濃度上昇から漏れ量を間接推定。

判定基準と品質保証

製品規格や社内基準により許容漏れ量(例えば10-6 mbar・L/sなど)を設定し、合否判定を行う。量産では治具化と自動走査、データロギング、トレーサビリティの確保が不可欠である。治具の漏れ込みをブランク測定で差し引く手順を設けると安定した判定が得られる。

他法との比較観点

ヘリウムリークは圧力降下法やバブル法に比べ高感度・高速応答・定量性に優れるが、装置コストとHe消費が課題である。微小欠陥の初期流れや温度依存性評価にはHe法が有利で、一次シール開発や真空装置の初期立上げに適する。一方、粗漏れのスクリーニングには簡易法を前段に置く二段運用が効率的である。

安全・環境・運用

  • 安全:ヘリウムは不活性だが置換による酸欠に留意し、換気と濃度管理を行う。
  • 環境・コスト:回収・再充填システムの導入で消費を抑え、供給逼迫時のリスクを低減する。
  • 保全:真空シール、Oリング潤滑、配管の脱脂清浄化、定期校正により感度の再現性を維持する。

応用分野

半導体製造装置、真空チャンバ、極低温機器、医療機器、熱交換器、冷媒回路、自動車燃料系などでヘリウムリークは不可欠である。特に真空装置では初期ポンプダウン後の漏洩探索、配管設備では量産ラインでのスニッファ走査が一般的である。締結部のボルト再締付けやガスケット交換と併用することで不具合再発を抑制できる。

実務上のヒント

  • 事前にベースラインを安定化し、ベーキング後に校正リークで感度確認する。
  • 探査は下方から上方へ、風の影響を避け、疑わしい箇所は再現性を確認する。
  • 濃度希釈やパージでメモリを除去し、応答の飽和・遅れを避ける。
  • 必要に応じて圧力降下法のデータと突き合わせ、製品許容値への換算根拠を明確化する。