ヘッドライナー|車室の静粛と断熱を高める天井材

ヘッドライナー

ヘッドライナーは自動車の天井面に装着される内装部材である。表皮生地、吸音層、基材(キャリア)を積層・成形したパネルとして構成され、意匠性の付与、断熱・吸音によるNVH低減、頭部接触時の緩衝、電装品の固定・配索スペースの確保など多機能を担う。近年は軽量化のためにPP系発泡シートや不織布キャリアが用いられ、PURホットメルトなどでの積層接着が一般的である。サンバイザー、グラブハンドル、ルームランプ、マイク、アンテナ、エアバッグカーテンのクリアランスなど、多数の取り合いを満たす設計力が要求される。

構成要素と材料

本部材は「表皮」「クッション・吸音層」「キャリア(基材)」の3層が基本である。表皮にはニットやトリコット、起毛布、合成皮革が用いられ、触感と耐摩耗・耐汚染性を両立する。クッション層はPUフォームや不織布で、微細孔により吸音を担う。キャリアは熱可塑性のPP、PET、不織布積層体、あるいは紙ハニカム・発泡コアなどが使われ、剛性と軽さのバランスを取る。これらをホットメルトやPUR系接着剤で積層し、熱圧縮で三次元成形する。

  • 表皮:意匠・触感・耐光性・汚染拭き取り性
  • 吸音層:中高周波帯の吸音、頭部緩衝
  • キャリア:面剛性、クリップ保持力、軽量化

製造プロセス

ヘッドライナーの量産は、材料裁断→積層→熱圧縮成形→トリミング→開孔加工→副部品(ブラケット・ダクト・配線クリップ等)取り付け→外観検査の流れである。温度・圧力・時間の条件管理が外観(しわ・白化)と寸法安定性を左右する。開孔はマップランプ、サンバイザー、ルームミラー、サンルーフ開口部などの機能部に合わせて行う。

  1. 積層接着:各層を仮貼りし、ズレと気泡を抑制
  2. 熱圧縮:金型で三次元成形、R部の座屈を回避
  3. トリミング:外周・開孔の高精度化
  4. 副部品装着:クリップ台座、ハーネス溝、ダクト

取付構造と取り合い

ルーフパネル側の骨格やサイド・センターピラーとの取り合い、ウェザーストリップ端末処理、ハーネスの逃げが重要である。固定にはメタル/樹脂クリップ、ベルクロ、スクリュー台座などを使い、取り外し性とガタ防止を両立する。サイドカーテンエアバッグの展開域は不可侵領域として、基材の切り欠きや薄肉化で干渉を回避する。

  • 固定点:クリップ間隔の標準化と荷重分散
  • 周辺部品:ハンドル・バイザー・ドームランプ・ミラー
  • ハーネス:配索溝とクランプ一体化で省工数

NVH・熱・安全機能

ヘッドライナーはキャビンの残響を抑え、風切り音や雨打音の体感を低減する。材料の損失係数・空隙率・厚みの最適化により目標周波数帯の吸音量を確保する。断熱面では夏季の放射熱遮蔽、冬季の保温に寄与する。安全面では頭部接触時の減衰特性が重要で、局所的にクッション層を増すなどで衝撃を緩和する。

デザインと機能統合

近年はアンビエントライトや間接照明の拡散、ビルトインスピーカー、アシスタント用マイク、ルーフアンテナ用同軸の導きなど、機能統合が進む。表皮のパンチング加工で吸音と意匠を両立し、縫製ラインの見せ方やエッジの面取りで上質感を演出する。サンルーフ車ではシェードレールとの段差・隙間の見切りが評価を左右する。

品質不具合と対策

典型不具合は「垂れ」「しわ」「剥離」「白化」「コーナー割れ」「ギシギシ音」である。成形条件の再現性、金型の微小面修正、接着剤塗工量の管理、クリップ荷重の最適化で予防する。VOC/臭気は素材起因が大きく、選定段階での試験とエージングで安定化させる。

  • 外観:面ひずみ・色差・艶ムラの抑制
  • 機能:クリップ抜け、共振、擦過音の是正
  • 耐久:耐光・耐熱サイクル・たわみ耐性

設計指針

ヘッドライナーの基準として、総厚みは車格に応じておおむね4〜8mm、面密度は1.5〜3.0kg/m²を目安に軽量化と静粛性を両立させる。最小曲げRは基材の曲げ限界を超えないよう設定し、R部の応力集中を避ける。クリップのスパンはねじり剛性と脱着性から標準ピッチを定め、サービス時の再装着でガタが出ないよう保持力を管理する。

  • 開口補強:ミラー台座・ランプ部は局所補強を付与
  • 段差管理:トリムとの段差・隙間の公差設計
  • 作業性:左右入替え防止の形状キーと誤組防止

サンルーフ車の要点

大開口化に伴い周縁剛性とシェード摺動部の摩擦騒音が課題となる。周縁部にリブや高密度不織布の局所積層を施し、ガイドとの干渉を避ける。結露対策として水切りの逃げと表皮の波打ち抑制が必要である。

EV特有の留意点

パワートレイン騒音が低いEVでは高周波の風切り・路面音が相対的に目立つ。吸音ピークのシフト、ルーフ配線の固定強化、軽量化と遮音のバランス最適化が重要である。高電圧系ハーネスとの離隔・固定ルートも初期段階で確定する。

環境・規制・調達

内装の難燃要求やVOC規制に適合させつつ、リサイクルPP/ポリエステルやバイオ由来表皮の活用で環境負荷を低減する。部材点数の削減や副資材一体化によりLCAを改善し、グローバル調達では温湿度環境差を見越した材料同等性評価を行う。これらを満たすことが、量産性・品質・コスト・意匠を統合したヘッドライナーの最適解につながる。