プリント基板|配線・実装・信頼性を支える基板

プリント基板

プリント基板は電子部品を機械的に支持し、銅配線で電気的に接続する基盤である。ガラス布エポキシ(FR-4)などの絶縁基材に銅箔を貼り、必要な導体パターンを形成する。単層から多層(4、6、8層以上)まで構成があり、高速信号、電源配分、アナログ・デジタル混在などの要件に応じてスタックアップ(層構成)を最適化する。表面にはソルダレジストとシルクを施し、実装方式はSMT(表面実装)とTHT(スルーホール)が併用される。設計では配線抵抗・寄生成分・特性インピーダンス・クロストーク・リターンパス・電源インピーダンスなどを考慮し、製造ではエッチング、穴あけ、めっき、ラミネーションなどの工程管理が重要となる。

役割と基本構成

プリント基板は回路の電気的結線・電源配分・信号品質の担保・熱拡散・機械支持といった多機能を一体化する。基材(コア)とプリプレグ(接着・絶縁層)を交互に積層し、内層・外層の銅箔によりネットワークを構成する。外層は部品パッドと配線、内層はグラウンド(GND)や電源(PWR)のプレーン、差動ペアなどの信号層として使い分ける。

材料とスタックアップ

一般的なプリント基板はFR-4(比誘電率εr≈4、誘電正接tanδが中程度)を用いる。高周波用には低εr・低損失の樹脂(PTFE、ハイドロカーボン)や混合材料が選択される。スタックアップは信号層の上下にリターンプレーンを配置してループ面積を最小化し、特性インピーダンスを安定させる。層間の厚み・銅厚・プリプレグの樹脂流動は、製造ばらつきとインピーダンス目標(50Ω、90Ω差動など)を満たすように設定する。

配線設計と信号品質

プリント基板の配線は線幅・間隔・層配分・リターンパスで決まる。高速差動ペアは長さ合わせ(スキュー低減)と整合終端を行い、曲げは45°または円弧で反射や不要輻射を抑える。スイッチング電源は大電流ループを最短化し、電源プレーンにはデカップリングコンデンサを周波数分割で配置する。ギャップやスリットでリターンパスが分断されるとEMIが増大するため、プレーン連続性を優先する。

ビア技術(スルー、ブラインド、ベリード)

層間接続はビアで実現する。スルーホールビアは貫通タイプで信頼性が高いが、不要スタブが高速での反射源になりうる。ブラインドビア(片側貫通)とベリードビア(内層間)はHDIで用いられ、配線密度を高める。スタブ短縮にはバックドリルが有効である。パッドオンビアやビアインパッド(埋めビア)は実装密度を上げるが、樹脂埋め・銅めっき平滑化など製造難易度が上がる。

表面処理と実装

プリント基板の外層銅は酸化防止とはんだ付け性のため表面処理を行う。代表例としてHASL(有鉛/無鉛)、ENIG(Ni/Au)、ImAg(銀)、OSP(有機皮膜)がある。BGAや微細ピッチでは平坦性と耐食性に優れるENIGの採用が多い。実装はSMTでクリームはんだ印刷→部品搭載→リフロー、THTでフローはんだや手はんだを行う。リワーク性・信頼性・コストのバランスが選定指針である。

製造プロセスの概略

  • 内層形成:銅箔ラミネートを感光・現像・エッチングして内層パターンを作る。
  • 積層・加圧:内層とプリプレグを積み、熱と圧力で一体化する。
  • 穴あけ・めっき:ドリルやレーザで穴あけ後、無電解→電解銅めっきでスルーホール化する。
  • 外層形成:同様にフォトパターンで外層配線をエッチングする。
  • ソルダレジスト・シルク:はんだブリッジ抑制と表示を付与する。
  • 表面処理・分割:ENIG等の処理後、ルータ/パンチで外形加工する。

検査と信頼性

製造後のプリント基板は電気検査(オープン/ショート)、AOI(外観)、X線(BGA接合)、ICT/フライングプローブ(回路検証)などで品質を担保する。熱サイクル、湿度、はんだ耐熱、CAF(導電性陽極フィラメント)対策として材料選定とクリアランス設計を行い、銅厚・ビア径・アニュラリティ(ランド環)を規格に適合させる。

熱設計とEMC/EMI

プリント基板は銅プレーンやサーマルビアで熱拡散を促進する。パワーデバイスにはサーマルパッドを設け、ヒートシンクや筐体に熱を逃がす。EMC対策として、分割プレーンの境界越え配線を避け、入力・出力のフィルタ、シールド、グラウンドの一点/多点接続方針を明確化する。クロックや高速I/Oは近接リターンを確保し、エッジレートとループ面積を管理する。

HDIとリジッドフレックス

小型化が進む中でプリント基板はHDI構造(マイクロビア、ビルドアップ)やリジッドフレックスが主流化している。折り曲げ可能なフレックス部で配線を集約し、筐体スペースと実装点数を最適化する。レーザビアは微細で短いため高周波特性が良好で、BGA下の扇出に有効である。

設計規格とDFM/DFT

設計では一般にIPC系規格(例:IPC-2221、IPC-6012)に準拠し、製造公差を踏まえたDFMを実施する。最小線幅/間隔、ビア径、レジストクリアランス、スタックアップ許容差をガーバーデータと共にメーカーへ提示する。DFTではテストパッド配置、治具アクセス、境界走査(JTAG)などを計画し、立上げ時の不良解析を容易にする。

機構設計と取付

プリント基板の外形・位置決め穴・切欠きは筐体側のボス、スペーサ、ねじ・ボルトに整合させる。クリープや振動対策として支持点を適切に配置し、絶縁距離とクリアランスを安全規格に適合させる。パネル化(面付け)ではブレイクオフ形状や基板端の金指(エッジコネクタ)処理も検討する。

補足:データフォーマットと製造連携

製造移管にはガーバー(RS-274X)、ドリル(Excellon)、部品座標、BOM、組立図など一式が必要である。最近はODB++やIPC-2581など統合フォーマットの活用により、プリント基板の層情報・材料・ネット属性・DFA/DFM属性を損ねずに伝達できる。設計初期からメーカーの設計ルールを取り込み、試作と量産で工程条件をすり合わせることが歩留まりと信頼性の鍵である。

補足:表面処理の選択指針

  • HASL:コスト重視、やや凹凸あり。手はんだやTHTに適する。
  • ENIG:平坦・耐食・細ピッチBGA向け。金属間化合物に留意。
  • ImAg/OSP:平坦かつコスト効率。保管・酸化条件の管理が重要。

補足:高周波設計の要点

  1. 特性インピーダンス管理(線幅・層厚・εr)と差動ペアの整合。
  2. リターンパス連続性の確保とスタブ短縮(バックドリル等)。
  3. 電源インピーダンス低減(近接デカップリング、面インダクタンス最小化)。