プラズマ切断機
プラズマ切断機は、電極と母材間に転移アークを形成し、高温・高速度のプラズマジェットで金属を溶融・吹き飛ばして切断する熱切断装置である。イオン化したガスをノズルで強く絞り、アークのエネルギ密度を高めることで、軟鋼・ステンレス・アルミニウムなど幅広い材料を高速に切断できる。厚板対応の高出力機から薄板用の精密機、手持ち式トーチからCNCテーブル一体型まで形態は多様で、製造・建設・保全分野で広く用いられている。
作動原理とアーク収束
プラズマ切断機は電源から供給される直流大電流を用い、タングステンやハフニウム電極と母材間にアークを発生させる。トーチ内部では渦流(スワール)ガスがノズルを通過する際にプラズマが機械的・熱的に収束され、温度2万K級の高エンタルピー流となる。パイロットアークにより導電性経路を先行形成し、その後転移アークに移行して本切断を行う。アーク電圧は一般に数十〜百数十Vで、電流と合わせて投入電力が決まる。
主要構成と役割
- 電源装置:定電流特性と急峻な立上りを備える。デューティサイクルは連続加工能力を左右する。
- トーチ:ノズル、電極、シールドキャップ、スワールリングなどの消耗品で構成され、アーク収束とガス流路を担う。
- ガス供給:圧縮空気、N₂、O₂、Ar-H₂などを用途に応じて選定。圧力・流量の安定化が切断品質に直結する。
- 高さ制御(THC):アーク電圧を指標にスタンドオフを一定化し、ケラ幅と面粗さの安定を図る。
- CNCテーブル:軌跡補間、ピアスシーケンス、微小円弧の速度最適化を実行する。
ガス種と切断特性
圧縮空気は汎用性に優れ、コストと取り回しに強みがある。O₂系は軟鋼の切断速度とエッジ品質に寄与し、N₂はステンレスやアルミで安定したアークを実現する。Ar-H₂混合は厚物や高反射材に適し、WIP(水噴流収束)方式はジェットの直進性を高めスラグ付着を低減する。ガス選定は材料・板厚・求める面品位のバランスで決まる。
性能指標と目安
- 板厚能力:公称出力とともに「ピアス可能厚」と「エッジスタート可能厚」を区別して評価する。
- 切断速度:薄板域で高く、厚板域で低下。CNCの加減速最適化が微細形状の品位を左右する。
- ケラ幅とテーパー:ノズル径・スタンドオフ・ガス流の整流に依存し、適正化でテーパーを抑制できる。
- 面粗さ・ドロス:電流・速度・ガス条件の整合が鍵。過大電流や過小速度はドロス増大を招く。
- 消耗品寿命:電極インサートの摩耗、ノズルの開口拡大は品質劣化の主因で、早期交換が有効である。
運用・段取りの要点
ピアスではガス予吹き→アーク点弧→貫通検知→リードインへの移行を確実に実行する。熱入力集中を避けるため、複数パーツでは最短経路よりも熱分散を優先した切断順序を採る。微小円孔では速度低下時の過熱に留意し、コーナーでの電流リダクションや高度な加減速補間を用いると形状忠実度が向上する。
保全とトラブルシューティング
ガス漏れや圧力脈動はアーク不安定・テーパー増大の原因となるため、レギュレータと配管の点検を定期化する。電極のピッティング、ノズル開口の偏摩耗、シールドの焼損は切断面の縞(ストリエーション)やドロス増大として顕在化する。消耗品はロットで管理し、交換後は試験カットで条件を再チューニングするのが望ましい。
安全衛生・環境対策
強烈な可視光・UV・騒音・金属ヒュームが発生するため、遮光面、防炎手袋、防護衣、聴覚保護具、局所排気装置を適正に用いる。切断テーブルにはドライ式のダウンドラフト集塵、またはウォーターテーブルを採用し、粉じんと熱変形を抑える。ガスボンベや圧縮空気系は転倒防止と定期点検を徹底する。
材料適用と活用領域
プラズマ切断機は軟鋼、耐食鋼、非鉄金属に適用でき、船舶・建機・橋梁・配管製作・板金加工・設備保全などで重用される。テンプレート切断、開先加工、グレーチングやダクトの量産、現地改造・解体作業など、現場・工場双方での機動力が高い。ジグ・治具と組み合わせることで、再現性の高い穴径・スロット・タブの量産も可能である。
CNC化と自動化機能
CNC一体型では、ネスティング最適化、共通辺切断、マイクロジョイント、自動THC、プローブによる板反り追従、消耗品摩耗の自己診断などが実装される。CAD/CAMのポストではリード長、リード角、ピアス遅延、コーナー速度制御、穴径別マクロなどを持ち、熟練者のノウハウを数値化できる。
導入設計と電源・空気条件
設置にあたっては主幹容量、三相電源の品質、圧縮空気の乾燥度(露点)、フィルタ段数、配管内径・長さを算定する。電源の力率改善や漏電保護、EMI対策、アースの低抵抗化は誤動作防止に有効である。空気式ではオイルミストや水分は消耗品寿命と品質を損なうため、ドライヤとオートドレンを併用する。
品質管理と検査
切断面検査では、溝幅、テーパー、面粗さ、ドロス量、ピアス痕、熱影響部の幅を計測する。工程能力を維持するには、試験片の定期的なカットチャート化と条件表の更新が有効で、材料ロットや板厚の変更時には再同定を行う。記録の標準化により、再発防止と立上げ時間短縮が期待できる。
技術展開
近年は高周波インバータ電源の高速制御、アーク電圧フィードバックの高精度化、微小穴特化の精密ノズル、ウォーターテーブルの最適流制御などが進む。デジタル化により切断条件のレシピ管理、稼働・消耗品の可視化、遠隔保守が容易になり、現場差の小さい品質の実現に寄与している。