プラスチックハンマー
「plastic hammer」とも呼ばれるプラスチックハンマーは、樹脂製の打撃面で被加工物の打痕・バリを抑える手工具である。機械組立、治具の微調整、樹脂筐体のはめ合いなど、表面品質を損ねずに力を伝えたい場面で用いられる。打撃音が低く、弾性により手への衝撃も和らぐ。
構造と材料
プラスチックハンマーのヘッドにはナイロン、ポリエチレン、ポリウレタン、POM(ポリアセタール)などの熱可塑性樹脂が用いられる。硬さはショアAまたはショアDで表示され、柔らかいほど痕が残りにくい。フェイスはねじ込み等で交換でき、片面ごとに硬さを変える製品もある。芯材はスチールや真鍮、柄は木・スチール・FRPが一般的で、緩み防止構造を備えるものもある。環境に適合する材質選定が必要である。
- ヘッド:交換式の両口が主流。面径20〜40mmが扱いやすい。
- 柄:木柄は手当たりが柔らかく、FRP柄は絶縁・減衝に優れる。
- 固定:座金やカシメで緩みを抑える。
特長と利点
最大の特長は非金属面による非マリングである。鋼やアルミ、真鍮に対し、打痕や光沢乱れを最小化しつつ圧入・位置合わせができる。反発が小さく手首や肘の負担が軽く、金属音も小さい。電気絶縁性・非磁性が期待できる点も利点である。
- 表面を傷付けにくい:仕上げ面の保護。
- 騒音が小さい:屋内や夜間で有利。
- 反発が小さい:連続打撃で疲れにくい。
- 電気・磁気の影響が小さい:ESD管理に適する。
用途
精密機器ハウジングのはめ合い、軸とハブの圧入補助、板金フランジの微調整、治具の位置決め、木工の組手合わせなどに広く使われる。ダイヤルゲージを見ながら微小量ずつ位置を追い込む用途にも適する。
選定指針
選定では、被加工物の材質と許容打痕、必要な打撃エネルギー、作業空間、環境(温度・薬品・清浄度)を総合評価する。柔らかいほど痕は出にくいが、エネルギー伝達は穏やかになる。質量は300〜700gが汎用で、繊細な作業は軽め、大きな押し込みには重めが扱いやすい。面径は当てやすさと視認性のバランスで決め、交換部品の入手性も確認する。
- 被加工物:仕上げと硬さ(アルミ・銅合金・樹脂・木材)。
- 許容打痕:ショア硬さ(A/D)とフェイス材の対応。
- 環境条件:油・溶剤・熱、帯電防止や絶縁。
- 作業性:ヘッド質量、柄長、バランス。
保守と安全
樹脂フェイスの摩耗・欠け・フレア(きのこ状変形)が進んだら交換する。芯材の露出や柄の緩みは事故要因であり、始業点検でネジ・カシメ・座金を確認する。硬い角部への斜め打ちは欠けの原因となる。適切な当て面で打撃する。保管は直射日光・高温・溶剤蒸気を避け、保護メガネ・手袋を着用する。
よくある不具合と対策
フェイスのフレアは切除せず交換する。切除は割れの起点となる。白化・ひびは樹脂脆化のサインで、薬品や紫外線の影響を疑う。柄のガタは締め増しより部品交換を優先し、ねじ込み式は清掃と適正トルクを守る。
近縁の工具・バリエーション
フェイス材にナイロンやPOMを用いたタイプ、柔軟なポリウレタンで衝撃を和らげるタイプ、片面ごとに硬さを変えた両口、帯電防止やクリーンルーム向けなど多様な仕様がある。内部にショットを封入して反発を抑える無反動構造の製品も市販されており、目的に応じて選択できる。