ブロアモーター|HVAC送風モーターの基礎知識

ブロアモーター

ブロアモーターは、空調や換気などの送風系でファンを回転させ、所定の風量と静圧を供給する電動機である。自動車のHVAC(暖房・換気・空調)や産業用エアハンドリングユニット、クリーンルーム機器、電子機器の筐体冷却まで適用範囲は広い。小型の直流ブラシ付き/ブラシレス(BLDC)から、中〜大型の誘導電動機まで構成は多様で、騒音(NVH)、効率、制御性、耐環境性のバランスが設計の要となる。本体はモーター部とファン(多くはシロッコや遠心)を直結またはハウジング内で組み合わせ、ダクト系の圧力損失に合わせた運転点を実現する。

構造と作動原理

ブロアモーターの基本はステータとロータである。直流ブラシ付きは整流子とブラシで電流を切替え、BLDCはホールセンサやバックEMF検出によりインバータで通電位相を制御する。産業用の交流型は誘導電動機が主流で、簡潔な構造と堅牢性が特徴である。ファンは多翼(シロッコ)や後ろ向き羽根の遠心形が多く、限られた設置スペースで高静圧を得やすい。ハブには動釣り合いが施され、ベアリングは寿命・静粛性の観点からボールや高性能スリーブが選択される。

種類と用途

  • 車載用:12Vまたは24VのBLDC/ブラシ付き。HVACユニットでの送風、デフロスト、後席エアアウトレットに使用。
  • ビル空調:三相誘導電動機+遠心ファン。AHU、VAV、外気処理機などで大風量・中静圧を供給。
  • 機器冷却:小径BLDC+シロッコ。医療・計測・通信機器で低騒音と長寿命を両立。
  • 防爆・耐環境:粉じんや水濡れ環境向けにIP規格や防爆仕様を採用。

性能指標と評価

主要指標は風量(m³/h)、静圧(Pa)、入力電力(W)、効率(%)、回転数(rpm)、騒音(dB(A))、振動、寿命(L10)である。電装品としては絶縁クラス、温度上昇、サーマルプロテクタ、IP等級が重視される。ファン曲線とシステム曲線の交点が運転点となり、ダクトの曲がり・フィルタ差圧・グリル損失が静圧を規定する。最適点(BEP)近傍で運転させることが効率・騒音・寿命に有利である。

制御方式

ブロアモーターの速度制御は、車載では段抵抗(レジスタ)からPWM制御、BLDCのベクトル制御(FOC)へと高度化している。ECUとLIN/CANで連携し、室温・日射・除霜要求に応じて目標風量を決定する。ビル空調ではインバータ(VFD)による可変速が一般的で、省エネ法への適合や夜間低騒音運転に有効である。ソフトスタート、アンチサージ、失速回避、故障診断(過電流・過熱)も重要である。

設計の要点

  • 空力:ダクト圧損の見積り、入口整流、ケーシング形状、フィルタ目詰まり時の運転点移動の評価。
  • 機械:バランス等級、軸受選定、ハウジング剛性、共振回避(モード解析、NVH対策)。
  • 電気:EMI/EMC、絶縁距離・沿面距離、過熱対策(巻線温度、コイルエンド冷却)。
  • 信頼性:塵埃・湿気・結露・薬品ミストへの耐性、サーマルサイクル、塩水噴霧、耐久試験。

騒音・振動(NVH)対策

空力騒音は翼通過周波数(BPF)とその高調波が支配的で、翼形状・ケーシング隙間・渦発生の最適化で低減する。電磁騒音はトルク脈動やコギングに起因し、スキュー、分布巻、通電位相制御で抑える。構造伝達は防振マウントやフローティング固定で遮断する。実機ではFFT解析、風洞評価、音響カメラによる寄与度解析が有効である。

保守と故障診断

  • 症状:風量低下、異音(ベアリング摩耗・羽根干渉)、断続運転、焦げ臭。
  • 要因:フィルタ目詰まり、段抵抗(レジスタ)焼損、ブラシ摩耗、コネクタ接触不良、リレー不良、インバータ故障。
  • 診断:ヒューズ・電源電圧確認、PWM指令/LIN応答、電流波形、回転数フィードバック、軸受ガタ、羽根汚れ。
  • 対処:清掃とフィルタ交換、配線修理、ベアリング打替え、レジスタや制御基板の交換。

安全・規格と環境

ブロアモーターは感電・発熱・回転体による巻込のリスクに留意する。保護等級(例:IP5X/IPX4相当)や絶縁クラス(B/F)を遵守し、火災負荷や難燃材の採用も検討する。省エネの観点では高効率BLDC化とVFD制御が有効で、CO₂削減と静粛化を同時に達成できる。ライフサイクルでは清掃性やリサイクル性、フィルタ交換周期の最適化が運用コストを左右する。

車載HVACとの関連部品

車載空調ではブロアモーターがエバポレータとヒータコアを通過させる風を作り、デフロスト・車内温調・除湿を担う。風量制御には段抵抗(ブロアレジスタ)やトランジスタ制御、BLDCのFOCが用いられる。ダクト・レジスタ・消音材の設計と併せ、着霜や水滴飛散、花粉・粉じん捕集といった実使用の課題も評価対象である。適切なフィルタ管理と異物混入防止が信頼性と快適性の鍵となる。