フロートスイッチ
フロートスイッチは液面の上下動を浮子の浮力により機械的または磁気的に検出し、接点の開閉信号として取り出す液面検出器である。タンクやピットの上限・下限レベル監視、ポンプの自動運転、オーバーフロー警報、乾転防止などに広く用いられる。構造が簡潔で耐環境性に優れ、電源を必要としない受動素子として扱える点が産業用途で重宝される。検出は主として浮子内蔵磁石とリードスイッチの組合せ、またはレバーとマイクロスイッチの機械式で実現される。取り付け方向により動作論理が反転するため据付時の姿勢と配線仕様を明確にしておく必要がある。
原理と構造
基本原理はアルキメデスの原理である。液体に浮く浮子が液面の上下に追従し、ガイドパイプやアーム機構を介してスイッチング要素を作動させる。磁気式では浮子内の永久磁石が移動し、管内に封入したリードスイッチを吸引して接点を開閉する。機械式では浮子のモーメントがレバーを介してマイクロスイッチを押圧する。材質は樹脂ではPP、PVDF、PTFE、金属ではSUS304/316が多く、耐薬品・耐熱・飲用水適合など要求に応じて選定する。防水・防塵はIP67~IP68が一般的である。
リードスイッチ方式
密閉ガラス管内の磁性薄片を磁力で接離させる方式である。接点構成は常開(NO)・常閉(NC)を選べ、取り付け反転で論理を切り替えられる。接点定格は5~50 VA程度が多く、誘導性負荷では突入電流とアークによる溶着に注意する。対策としてリレー介在、RCスナバ、ダイオードフライバックを併用する。微小電流用途では接点酸化とチャタリングを避けるため金メッキ接点やデバウンス(100~300 ms)を設けると良い。
レバー・マイクロスイッチ方式
大型浮子の荷重をレバーで増幅してマイクロスイッチを作動させる。ポンプ制御や粗レベル管理に適し、ヒステリシス(作動と復帰の差)を機械寸法で確保しやすい。堆積物付着や波立ちによる誤動作を避けるためフロート径、ストッパ位置、可動範囲を余裕設計とする。
設置と配線
取り付けは上面垂直挿入型と側面水平挿入型に大別される。ねじ規格はR1/2、NPT1/2などが一般的で、ガスケット材は液性と温度で選ぶ。ケーブルグランドで引込部を防水し、ケーブルは屈曲・浸水リスクの少ないルートで支持する。シールド線はノイズ低減に有効だが、長距離では接点信号の誤検出回避にプルアップ/プルダウンと入力フィルタを併用する。
- 上面取り付け: タンク天板から挿入し、ガイドパイプで摺動を安定化する
- 側面取り付け: 側壁から挿入し、水平を保持して作動点を確実化する
- 屋外配線: 紫外線と水侵入に配慮し、結線箱を上向き開口にしない
動作点とヒステリシス
波立ちやスロッシング環境では頻繁なON/OFFを避けるため、作動点と復帰点の差(ヒステリシス)を確保する。リード式はフロートの移動量と磁界勾配で5~20 mm程度、レバー式はアーム比で広く取れる。高粘度流体では浮子追従が遅れ、比重の低い液体では浮力が不足するため、浮子体積や材質を変更するかスティリングウェルで流体擾乱を抑える。
選定条件
- 液性: 比重、粘度、腐食性、固形物の有無
- 温度・圧力: -20~120℃、0~0.6 MPaの想定範囲
- 材質: PP/PVDF/PTFEまたはSUS316の適合
- 接点: NO/NC、定格VA、最大開閉頻度
- 端子: リード線、端子台、M12コネクタ
- 規格: UL、CE、RoHS、飲用水認証など
以上を総合し、設置姿勢、配管インターフェース、保全性を含めて機種を確定する。必要であれば冗長化し二重系で検出の信頼度を高める。
制御回路例
ポンプ制御ではリレーもしくはPLC入力に接続し、ラッチ・遅延・警報を組み合わせる。安全側に倒れる論理(故障時に停止)を採る目的でNC接点を常用する設計が一般的である。感水ケーブルや過電流保護と連携した多重リミットも実務的である。
- 高水位ON/低水位OFFの二点制御
- 高高水位で警報回路駆動
- 低低水位で乾転防止停止
信頼性と故障モード
代表的故障は浮子の固着、汚泥付着、リード接点の溶着・疲労、ケーブル浸水である。定期点検では手動リフトによる作動試験、導通確認、摺動部清掃、ケーブル外観検査を行う。誘導性負荷を直結している場合はスナバの劣化も点検対象とする。設計段階でダイアグノスティクス入力や二重検出を組み込み、フェールセーフ性と可用性の両立を図る。
衛生・防爆・安全
食品・飲料分野では衛生設計と洗浄(CIP/SIP)への対応が必要で、接液部材質と表面粗さを管理する。可燃性雰囲気では本質安全防爆や安全バリアを用いて入力回路のエネルギーを制限する。屋外貯槽では落雷・サージから入出力を保護し、ケーブルシースの劣化に備える。
応用とシステム化
産業用では雨水貯留槽、冷却水タンク、薬液槽、潤滑油槽など用途が広い。複数個のフロートスイッチを組み合わせ、段階制御やシーケンス遮断、非常時の独立硬配線によるバックアップ系を構成できる。信号はPLCで監視し、ログ化と保全予知に活用する。長距離伝送ではアイソレーションリレーやデジタル入力モジュールを介し、ノイズ・雷サージを抑制する。
代替検出手段の位置づけ
液面検出には静電容量式、圧力式、超音波式、光学式など多様な方式がある。フロートスイッチは機構が簡素で電源不要の接点出力を特徴とし、他方式はアナログ量や非接触検出などの特性を持つ。プロセス要件、設計思想、保全体制に応じて方式を選び、必要に応じて併用する。
実務上の注意
据付時は作動点の検査記録を残し、流体条件の変化(比重・粘度・温度)で再評価する。配線は水密・耐候を担保し、誘導負荷は中継リレーやソリッドステートリレーで分離する。予備品は浮子、ガスケット、スイッチモジュール、ケーブルを常備し、停止時間の最小化を図る。これらの配慮により、フロートスイッチは多様な産業プロセスで安定した液面管理を実現できる。