フロントフェンダー|泥はね防止と空力で安定性向上

フロントフェンダー

フロントフェンダーは前輪まわりを覆う外板であり、路面の砂利・水・泥はねから車体と歩行者を保護し、空力・外観・法規適合を同時に満たす部位である。前バンパー、ボンネット、ヘッドランプ、Aピラー基部との隙間や面差を統一することで品質感を生み、製造ではプレス成形や塗装工程の出来栄えが商品性を左右する。一般に外板は着脱式のボルト固定で、内側には樹脂製フェンダーライナーを備え、耐チッピング・耐腐食・耐候の各性能を総合的に確保する。

役割と機能

  • 飛び石・泥はねの遮蔽:タイヤの遠心力で跳ね上がる異物を遮り、車体・歩行者・後続車へのダメージを低減する。

  • 空力整流:開口形状やエッジの立て方で渦の発生と乱流を抑え、Cd・Cl・前輪周りの乱流騒音を低減する。

  • 意匠形成:プレスキャラクターラインやフェンダーフレアの張り出しで車格感とワイド感を演出する。

  • 法規適合:タイヤ露出率、最外縁角の曲率、歩行者保護面の硬さなど地域法規に適合させる。

構造と構成部品

フロントフェンダーは外板(スチール/アルミ/FRP/CFRP)と、タイヤハウス内を覆うフェンダーライナー(PP/PE等)、取付ブラケット、クリップ、シール材で構成される。外板は前バンパー側でジョイントし、上端はフード(ボンネット)とガッペン、後端はフロントドア/ピラー根元に合わせる。フランジ部にはヘム折りやシーラントを用いて防錆・遮水を図る。

材料と製造プロセス

  • 鋼板:深絞り・張出し成形に適し、コストと修復性に優れる。成形後はリン酸亜鉛処理→電着塗装→中塗り→上塗りの順で塗装。

  • アルミ:軽量化と耐食性に優れるが、スプリングバック補正やヘム工程管理が難しい。

  • FRP/CFRP:小ロットや高性能車向け。意匠自由度が高く、チッピング対策塗膜が重要。

  • 品質管理:三次元測定でガップ&フラッシュ、R寸法、面品位(オレンジピール/ダレ)を監視する。

車両設計との関係

設計ではタイヤ切れ角、サスペンションのジャウンス/リバウンド、チェーン装着時の干渉、ハーネス・ウォッシャーホースの取り回しを同時に成立させる。歩行者保護要件により最外板の曲率や支持剛性を調整し、過度な硬さや鋭縁を避ける。さらにサービス性(バルブ交換、ヘッドランプ脱着アクセス)も確保する。

空力・NVHの工夫

  • ホイールアーチリップ:エッジに微小な立ち上げを設け、境界層を制御してスプラッシュ拡散を抑える。

  • エアスパッツ/ディフレクタ:タイヤ前方で流れを整え、前輪周りの渦を弱める。

  • ライナー表面:微細凹凸で流れを減衰し、小石衝突の打音を低減。吸音基材でロードノイズも抑える。

取付と調整

フロントフェンダーは基本的にボルト/クリップでボディに装着され、位置決め孔と長孔で微調整する。組付けではフード・バンパー・ドアとの隙間均一化(例:3.0±0.5 mm)や面差管理、シールの連続性、ウォーターマネジメント(排水経路)を確認する。再現性のため、治具とトルク管理(例:M6で5~7 N·m程度)を徹底する。

損傷と補修

  • 軽度:小凹み/スクラッチはパテ成形と再塗装で対応。鋼板は板金修正しやすい。

  • 中度:取付部の歪みはブラケット交換・面合わせを実施。防錆再処理を忘れない。

  • 重度:折れ/裂けはアッセンブリ交換が現実的。エアバッグ・センサ付近の作業はサービスマニュアルに従う。

バリエーションと周辺部品

オーバーフェンダーやフェンダーフレアでタイヤ外被覆を拡大し、オフロード車では未塗装樹脂のクラッディングでチッピング耐性を高める。高性能車ではフェンダーベントでホイールハウス内圧を抜き、ブレーキ冷却やリフト低減に寄与する。近年のEVでは給電ポートをフェンダー部に配置する例もあり、内外装・電装の取り合いが増えている。

設計時のチェックリスト

  1. タイヤ最大外径・偏摩耗時、±ジャウンス・フルステアでのクリアランス確保(最低5~10 mm目安)。

  2. チェーン装着・石跳ね条件での干渉と塗膜損傷の評価。

  3. 歩行者保護衝撃条件での変形モード・エッジRの適合。

  4. 排水/防水の連続性と錆溜まりの回避(シームシールとドレイン計画)。

  5. ガップ&フラッシュ標準の量産再現性、治具・長孔ストロークの妥当性。

  6. 塗装前処理から上塗りまでの膜厚・耐チッピング・光沢の安定化。

  7. サービスアクセス(ランプ、ウォッシャータンク、センサ)の確保。