ピコアンペア|10^-12Aの極微小電流単位

ピコアンペア

ピコアンペアは電流の極小単位であり、1 pA = 10^-12 A(アンペア)である。電流は1秒あたりの電荷量(クーロン/秒)で定義されるため、1 ピコアンペアは1×10^-12 C/sに等しい。電子の電荷は約1.602×10^-19 Cであるから、1 ピコアンペアはおよそ6.24×10^6個/秒の電子が移動していることに対応する。微小信号計測、半導体のリーク評価、放射線検出器やフォトダイオードの暗電流測定、電気化学の微小電流実験などで頻繁に現れる量である。

定義とSI単位系における位置づけ

ピコアンペアはSI組立単位の一つで、記号は“pA”を用いる。電流の基本単位Aに対して“pico”は10^-12の接頭語である。したがってピコアンペアはナノアンペア(nA, 10^-9 A)やフェムトアンペア(fA, 10^-15 A)と並ぶ超微小領域を示し、材料中のトンネル電流、絶縁体の表面漏れ、センサのオフセット電流などの記述に適する。電子流としてみると、1 ピコアンペア ≈ 6.24×10^6 e⁻/sであり、直感的な目安として有用である。

接頭語と記号

  • 接頭語:p(pico)= 10^-12、記号はpA。
  • 換算:1 ピコアンペア = 1000 fA = 0.001 nA。
  • 電力との関係:P = I×V。1 ピコアンペアに1 Vを印加すると1×10^-12 W(1 pW)となる。

どこで現れるか

  • 半導体:pn接合やMOSのオフ電流、ゲートリークの定量。
  • 光検出:フォトダイオードの暗電流や微弱光の光電流。
  • 電気化学:微小酸化還元反応のカレント測定やナノポア計測。
  • 材料評価:高抵抗材料の体積抵抗・表面抵抗の測定。
  • 放射線・粒子検出:チャージコレクタに生じる微小電流の読み出し。

関連項目

  • ボルト:機械分野の基礎要素。計測・設計の基盤理解に役立つ。

測定技術(ピコアンメータ/エレクトロメータ)

ピコアンペア領域の測定には、超低入力バイアス電流の増幅器を備えたピコアンメータやエレクトロメータを用いる。入力端子はテフロンや石英など高絶縁材料で構成され、ガード(ガードリング・ガードトレース)によって表面漏れを排除する。ケーブルはトライアキシャル(triax)を用い、内側シールドをガード電位に保持して容量結合やリークを抑える。高抵抗測定では一定電圧を印加し、流れる電流からR = V/Iで抵抗値を求める。

主なノイズ源と対策

  • ショット雑音:in ≈ √(2qIΔf)。Iが小さくても帯域(Δf)が広いと増えるため、必要最小限の帯域に絞る。
  • 熱雑音:vn ≈ √(4kTRΔf)。高抵抗のフィードバックではRに比例して増えるため、温度管理と帯域制限が有効。
  • 容量・誘導結合:シールド、ツイストペア、トライアキシャル、配線短縮で低減。
  • 表面漏れ:清浄(IPA洗浄後に乾燥)、乾燥雰囲気(低湿度)、絶縁支持物の選定。
  • 熱起電力・接触電位差:金属接触の温度勾配を減らし、均温化する。

設計・解析に役立つ換算と目安

  • 電子数換算:1 ピコアンペア ≈ 6.24×10^6 e⁻/s。
  • 電圧換算(オームの法則):R=1 MΩなら1 pA→1 μV、R=1 GΩなら1 pA→1 mV。
  • コンデンサの充電速度:dV/dt = I/C。1 ピコアンペアでC=1 nFなら1 mV/s。
  • RC時定数:τ = R×C。R=1 GΩ, C=100 pFならτ=100 sで、出力安定まで時間を要する。
  • フィードバック換算:トランスインピーダンス増幅(TIA)でVout ≈ I×Rf。1 ピコアンペア×100 MΩ=0.1 mV。

数値例(フォトダイオードの暗電流)

暗電流10 ピコアンペアのフォトダイオードをRf=1 GΩのTIAで受けると、直流出力は約10 mVとなる。Cf=100 pFを並列に入れた場合の時定数はおよそ100 sで、測定にはウォームアップと安定化時間が必要である。帯域を狭め、遮光・シールドを徹底し、ガード配線で表面漏れを抑えることが高S/Nの鍵である。

実験セットアップの要点

  1. 清浄と乾燥:プローブ、ソケット、基板表面を無水IPAで洗浄し、低湿度下で乾燥させる。
  2. 配線:トライアキシャルで最短配線。ガード端子を有効にし、不要な浮遊容量を避ける。
  3. 接地:一点接地とシールドを徹底し、ループ面積を最小化する。
  4. 帯域制御:必要最小限の測定帯域に制限し、ローパスでノイズ密度を下げる。
  5. 温度管理:温度ドリフトを抑え、接点の熱起電力を最小化する。

校正とトレーサビリティ

ピコアンペアの校正は、精密電圧源と高精度抵抗(例:10 GΩ)によるI=V/R生成、または既知電荷パルス法(ΔQ= C×ΔV, I=ΔQ/Δt)で行う。標準抵抗は温度係数や吸湿の影響を受けるため、恒温・乾燥環境での保管と使用が望ましい。測定系全体の寄生漏れ・オフセットを“ゼロチェック→ゼロ補正→スパン確認”の順で評価し、SIへのトレーサビリティを確保する。

関連単位・比較の目安

  • 1 nA = 1000 ピコアンペア、1 fA = 0.001 ピコアンペア
  • 半導体デバイスのオフ電流は数pA〜数nAが典型で、研究用途ではfA領域も珍しくない。
  • 高純度絶縁体の表面漏れは清浄・乾燥条件でpA以下に抑えられる。

使用上の注意

ピコアンペア領域では、指紋・フラックス残渣・湿気といった微小な汚染が“導体”として振る舞い、結果を大きく歪める。測定治具は清潔・乾燥を維持し、テフロンやガラス等の高絶縁材を用いる。配線は短く、ガードとシールドを適切に配置し、温度・帯域・接地を管理することで、再現性の高いデータが得られる。