ビジョンセンサ|高速高精度で外観検査を自動化

ビジョンセンサ

ビジョンセンサは、カメラと画像処理機能を一体化し、位置決め・欠陥検出・計数・寸法測定などを自動で行う産業用センサである。従来の近接・光電センサが単一閾値で「有無」を判別するのに対し、ビジョンは画素ごとの情報を扱い、複数特徴の同時評価や外乱へのロバスト化が可能である。近年は演算コアの高性能化と照明デバイスの進化により、ライン上での全数検査や高速ロボットの視覚としての利用が一般化している。用途は電子部品から食品・医薬、金属加工、樹脂成形、物流まで広範で、トレーサビリティと品質保証の要素技術である。

構成要素

基本構成はレンズ・イメージセンサ・照明・演算処理・I/Oである。レンズは視野と分解能を規定し、イメージセンサはCCDまたはCMOSが主流である。照明は対象のコントラストを決めるため最重要で、リング・同軸落射・バー・ドーム・背面などを使い分ける。処理部は組込みCPU/FPGA/GPUを内蔵したスマートカメラ型か、GigE/USB3でPCへ伝送するカメラ+コントローラ型がある。I/OはEthernet、Fieldbus、離散入出力、シリアル、カメラトリガ等に対応する。

検出原理とアルゴリズム

代表的な処理は二値化、エッジ検出、幾何パターンマッチング、テンプレート相関、Hough変換、特徴量ベースの位置合わせ、OCR/バーコード・QR読取である。外観検査ではフィルタでノイズを抑え、差分や適応しきいで欠陥を抽出する。近年はCNNなどのAI分類・セグメンテーションを組み合わせ、ばらつきの大きい外観にも対応する。重要なのは学習データの網羅性と過学習の抑制であり、閾値系とAI系を併用して安定化を図る設計が実務的である。

産業用途

  • 位置決め・ガイダンス:ピック&プレース、ロボットハンドの補正、印刷基準合わせ
  • 外観検査:キズ・打痕・汚れ・欠け・バリ・ショートショットの検出
  • 寸法・計測:内外径、ピッチ、角度、同心度、真円度の画像測定
  • 識別:バーコード/QR、OCR、外観類別、ロット管理
  • 組立検証:部品の有無・向き・品種混入検知、コネクタ端子の浮き検出
  • 包装・充填:ラベル位置、印字品質、液面高さ、シール不良検出

性能指標と設計の要点

分解能は「必要最小検出サイズに対する画素数」で見積もる。一般に対象特徴に対し最低でも3〜5画素、輪郭測定ならさらに多く確保する。視野・作業距離・レンズ焦点距離・センササイズの幾何関係、被写界深度(DoF)、フレームレート、露光時間、SNR、量子効率、レンズ歪みが画質を支配する。動体はモーションブラー抑制のため短露光+高照度が有効である。テレセントリックレンズは倍率変動やパララックスを抑え、高精度寸法測定に適する。

選定手順

  1. 要求定義:検査目的、タクト、搬送条件、目標合格率、NGの定義を明確化
  2. 光学設計:視野・分解能・DoFからレンズとセンササイズを決定
  3. 照明設計:反射/拡散/指向性を評価し、リング・同軸・背面等を試作比較
  4. 撮像条件:露光、ゲイン、シャッタ方式、トリガ同期、画像保存仕様を確定
  5. アルゴリズム:閾値系+幾何マッチ+AIのハイブリッドで頑健化
  6. 実機評価:ワースト品・境界品を含むサンプルでROCを確認し閾値を固定

ハードウェア構成の比較軸

スマートカメラは省配線・省スペースで保全性に優れる一方、演算資源は限定される。PCベースは拡張性と多カメラ同期に強く、リアルタイム要件はFPGA/RTOSで補う。レンズはCマウントが一般的で、Sマウント・Fマウント等もある。通信はGigE Vision/USB3 Vision/Camera Linkが代表で、制御系とはEtherCAT/PROFINET/CC-Link IE等で接続する。

照明・表面状態の取り扱い

金属鏡面や樹脂光沢では正反射が支配的で、同軸や偏光を活用する。微小凹凸の強調には斜光、エンボスや刻印には斜めリング、透過検査には背面照明が有効である。拡散ドームは多方向光でハイライトを均す。LEDは輝度・波長・チラツキの管理が必要で、電源リップルとシャッタ同期に注意する。波長は対象とコントラストの相性で決め、赤外・UVも検討する。

キャリブレーションと幾何補正

寸法測定ではピクセル当たりの実寸換算と歪曲補正が必須である。チェッカボードによる内部/外部パラメータ推定、レンズ歪みモデル、サブピクセルエッジ検出で再現性を高める。温度・振動・レンズフォーカスのドリフトに対し、定期的な再標定とリファレンス片でのオフセット監視を行う。

ソフトウェアと運用

GUIベースのフローチャート開発環境は立上げが速く、スクリプト言語は柔軟性が高い。運用ではレシピ管理、バージョン管理、画像ログの保存ポリシー、監査証跡が重要である。判定の説明可能性を担保し、しきい見直しやAI再学習の手順を標準化する。PLCとのハンドシェイクやNG分岐のフェイルセーフ設計も不可欠である。

信頼性・保全

埃・油ミスト・温度変動は画質を劣化させるため、筐体防塵・エアパージ・レンズ保護ガラスの定期清掃を行う。照明は光量劣化に備え、初期値に対する相対補正と予防交換を計画する。MTBFや部品ライフを把握し、予備機を確保する。画像ログは不具合解析と再学習の資産であり、保存期間と匿名化を定める。

規格・インタフェース

カメラ側はGigE Vision、USB3 Vision、GenICamが事実上の標準である。安全・環境ではCE、RoHS等への適合が求められる。コード読取はISO/IEC規格に準拠した検証が望ましく、印字品質の評価指標も運用に組み込む。サイバー面ではネットワーク分離、ホワイトリスト、署名付きアップデートで保護する。

よくある失敗と対策

「アルゴリズムを盛れば解決する」という誤解が多いが、撮像が不十分なら限界がある。まず反射と影を制御する照明・姿勢設計を優先し、次に分解能とDoFを満たす光学と露光を詰める。AI適用時は境界サンプルの収集、データ拡張、推論時間とタクトの整合、誤検知コストの設計を行う。最後にしきいと運用ルールを固定し、変更管理でドリフトを抑える。

関連技術との連携

2Dのビジョンセンサに加え、ステレオ・ToF・レーザプロファイル等の3Dセンサを併用すれば体積・高さ・反りも見える。ロボットでは手先カメラと固定カメラのハイブリッドでタクトと精度を両立する。製造実行システム(MES)や品質データプラットフォームと接続し、画像特徴と工程条件を相関解析することで、予防保全や歩留まり改善に展開できる。