ヒートエクスチェンジャ|流体間の熱交換で省エネ・高効率化

ヒートエクスチェンジャ

ヒートエクスチェンジャは、異なる温度の流体間で熱を受け渡す装置である。「熱交換器」とも呼ばれ、化学プラント、空調、発電まで広く用いられる。伝熱量、許容圧力損失、腐食環境、設置スペース、保守性の制約下で、総括伝熱係数 U と伝熱面積 A を最適化して熱収支を達成するのが要点である。

原理と熱計算

基礎式は Q = U・A・ΔTm。ΔTm には対数平均温度差(LMTD)を用いる。有効度–NTU 法(ε–NTU)は、入口条件と容量流量比から効率 ε を算出し、複雑な配列や相変化でも有効である。

主要形式

  • シェル&チューブ:高圧・高温に対応し汎用。バッフルで乱流化して U を高める。
  • プレート式(ガスケット/ろう付):高い U とコンパクト性。CIP による洗浄が容易。
  • 二重管式:小容量・大温度差に適し、製作が容易。
  • フィン付空冷式:空気側の低伝熱をフィンで補い、屋外設置に適する。

流れ配置と温度効率

並流より向流が有利で、同じ A でも ΔTm を大きく取れる。交差流は配管自由度に優れるが効率は中庸。ε–NTU 法では Cr と NTU = U・A/Cmin から性能を評価する。

伝熱係数と相関式

単相流では Nu を Re(レイノルズ数)と Pr(プラントル数)の関数とする経験式(例:Dittus–Boelter)を用いる。沸騰・凝縮は別の相関式を適用する。U は各側の膜抵抗、壁導熱、ファウリング抵抗の逆数和で決まる。

材料と製造

材質は腐食性・温度・コストで選ぶ。炭素鋼、SUS、Cu–Ni、Ti を用いる。プレート式はガスケット(NBR、EPDM、FKM)やろう材も要素。溶接はリーク経路を減らすが清掃性とトレードオフ。

汚れ(ファウリング)と保守

汚れは付着・析出・腐食生成物・バイオフィルムなど多様で、U を低下させる。対策は前処理(濾過/水処理)、CIP、流速確保、材料選択、運転温度最適化。プレート式は開放清掃しやすく、シェル&チューブはブラシ・高圧洗浄を併用する。

設計手順の要点

  1. 熱務(温度・流量・比熱・相変化)を定義し Q を決める。
  2. 物性・許容圧損・汚れ係数を設定する。
  3. 形式を仮決めし、LMTD または ε–NTU で A を試算。
  4. 圧力損失、振動、熱応力、据付/保守性を検証して最適化。

適用分野

空調のチラー/凝縮器、化学プラントのジャケット、発電の復水器、自動車のラジエータなど、ヒートエクスチェンジャは熱管理の中核である。省エネでは排熱回収とヒートポンプ統合が有効。

故障モードとリスク

エロージョン、孔食、応力腐食割れ、ガスケット劣化、流体励起振動による管損傷が典型。材料選択、非破壊検査(UT、PT)、差圧監視、漏えい検知を組み合わせて低減する。

規格と設計指針

実務では TEMA、ASME、JIS、ISO の規格を参照する。設計圧力・温度、腐食代、熱応力評価、リーク試験の要件を明確にし、据付・運転・保守の文書化を徹底することが、高信頼なヒートエクスチェンジャ導入の前提である。