ヒーターユニット|温風生成と除霜を司るHVAC中核

ヒーターユニット

ヒーターユニットは、自動車の暖房・除霜(デフロスト)・湿度調整を担うHVACの中核である。インストルメントパネル内部のケースに収められ、ヒーターコアやPTCヒータ、ブロワモータ、各種ドア(エアミックス・モード・外気/内気)とアクチュエータ、配風ダクト、温度/日射/車内温センサなどで構成される。熱源はエンジン冷却水の廃熱、もしくは電動車でのPTCやヒートポンプであり、乗員の快適性、視界確保、エネルギー効率、NVH低減を総合的に満たすよう設計される。

構成要素と配置

  • ヒーターコア:冷却水の顕熱を空気へ移す熱交換器
  • PTCヒータ:電気抵抗体で即応加熱(主にEV/HEV)
  • ブロワモータ:送風量を決めるDCモータ+ファン
  • エアミックスドア:温風と冷風の混合比を調整
  • モードドア:足元・面風・デフロストの配風経路を選択
  • 内外気ドア:外気導入/内気循環を切替
  • アクチュエータ:LIN/CAN制御のサーボ/ステッパ
  • ケース/ダクト:樹脂成形体で流路と遮音を両立

作動原理

ヒーターユニットはブロワで吸い込んだ空気を熱交換部へ導き、ヒーターコアやPTCで加熱する。エアミックスドアで目標吹出温度に合うよう温冷空気の混合比を決め、モードドアで足元、面風、デフロストへ配分する。デフロスト時は高温・高風量・低湿度の空気をフロントガラスへ優先配風し、曇りを速やかに除去する。

制御方式(マニュアル/オートエアコン)

マニュアル式は操作つまみで温度・風量・モードを直接指定する。フルオート式ではECUが車内温、外気温、日射、蒸発器温度等を入力に、目標温度へ到達するようフィードバック+フィードフォワード制御を行う。ドア位置はサーボの位置検出で高精度に保持し、風量はPWMで連続可変とする。近年は曇り予兆検知やにおい低減のための外気導入制御も組み込む。

冷却系・熱源との関係

内燃機関車ではサーモスタットと3Wayバルブで冷却水流路を制御し、暖機後にヒーターコアへ流す。電動車では廃熱が乏しいためPTCで即応加熱し、消費電力低減のためヒートポンプを併用する。熱マネジメントではバッテリーやインバータの熱源/熱シンクと統合し、配管・バルブ群を最適化して暖房性能と効率を両立する。

性能指標と設計要点

  1. 熱出力:定常暖房kW、立上がり時間、デフロスト到達時間
  2. 風量/圧損:m³/hとPaのバランス、静圧効率
  3. 温度分布:乗員ゾーン均一性、足元優先の快適性
  4. 騒音:ブロワ/流体騒音、風切り音の低減
  5. サイズ/重量:IP内のパッケージ制約への適合
  6. 結露対策:流路形状とドレン設計、防臭材
  7. 耐腐食:コアの材質/表面処理、クーラント管理

耐久性・信頼性

ヒーターユニットは温度サイクルや振動に晒されるため、ドアの発泡シール摩耗、サーボギヤ摩耗、コアの電食やスラッジ詰まり、ケースの歪みに起因するチリ音などが故障要因となる。設計段階で耐候・耐食評価、粉塵耐久、ソルトスプレー、熱衝撃、S&R評価を実施し、品質工学的に最適化する。

整備と典型故障例

暖房が効かない場合は冷却水不足、エア噛み、サーモスタット不良、ヒーターバルブ固着、コア目詰まりを点検する。風向が変わらない場合はドアアクチュエータやリンク破損を疑う。甘い匂いと曇りはコア漏れの兆候である。PTC無効はヒューズ/リレー/制御信号を確認する。ブロワ異音はベアリング摩耗や落葉侵入が多い。

EV/HEVにおける特徴

電動車では走行可能距離を損なわない暖房が重要で、ヒートポンプ採用、除霜優先制御、プレコンディショニングが鍵となる。低温時はヒートポンプの効率低下をPTCの併用で補い、霜取りモード時も視界確保を途切れさせない配慮が要る。熱源・熱需要の統合により、小型軽量化と高効率化を同時に達成する設計が求められる。

材料・製造と環境配慮

ケースはPP/ABSやガラス繊維強化樹脂を用い、流路面粗さと剛性を確保する。コアはアルミろう付けで薄肉・大表面積化し、腐食対策のコーティングを施す。揮発性有機化合物の低減、リサイクル材の活用、組立後の気密・水密検査の自動化が環境・品質面での要件である。これらを満たすことでヒーターユニットの性能と信頼性を長期に維持できる。