ヒューズ|過電流で溶断し回路を安全保護

ヒューズ

ヒューズは、過電流時に溶断して回路を開放し、配線や機器を守る一次性の過電流保護デバイスである。溶断体が発熱で溶け、アークを消弧して電流を止める単純な仕組みを持ち、電源装置や自動車、産業機器で用いられる。

定義と役割

ヒューズは正常電流は通し、異常過電流だけを確実に遮断するよう設計される。過負荷では一定時間後に、短絡では瞬時に動作する時間‐電流特性が規定され、火災や機器破損を防ぐ。選択協調が要点。

構造と材料

構造は端子と溶断体から成る。溶断体には錫・銅・銀合金などが使われ、断面やネックで発熱を制御する。ガラス管・セラミック管は砂を充填して急冷し、性能を高める。

定格と主要パラメータ

  • 定格電流:周囲温度でディレーティングが必要。
  • 遮断容量:短絡電流を安全に開路できる上限。
  • 時間‐電流特性:速断(F)/時間遅れ(T)。
  • I²t:発熱エネルギー指標(プレアーク/クリアリング)。

種類

  • ヒューズ:ガラス管・セラミック管のカートリッジ型。
  • チップヒューズ:SMD対応の小型品。
  • ブレードヒューズ:自動車用。色で容量表記。
  • 高速ヒューズ:パワー半導体保護(aR/gR等)。
  • リセッタブルヒューズ(PPTC):自動復帰。

時間‐電流特性とI²t

突入・始動電流を伴う負荷には時間遅れ形、半導体の保護には速断形が適する。I²tは負荷の許容エネルギー以下に収めるよう協調し、記法例は「T2A 250V」。

選定手順

  1. 連続電流の1.25〜1.5倍を目安で定格電流を仮決め(温度で補正)。
  2. 突入・サージから速断/遅れを選ぶ。
  3. 短絡電流と遮断容量、電圧条件の整合を確認。
  4. 実装方式・サイズ・規格承認(UL、IEC、JIS)を確認し、温度上昇を評価。

ブレーカとの違い

ヒューズは交換が必要だが構造が単純で応答が速く、低インピーダンス・低コストである。ブレーカは再投入可能だが、接点機構ゆえにサイズや遮断条件の制約がある。

実装と安全

ホルダ・クリップは定格と温度上昇・耐振動で選び、放熱と可燃物から距離を確保。交換は同一定格・同特性で行い、上げ代やバイパスは厳禁。機械分野では剪断ピン等の“メカニカル・フューズ”としてボルトのくびれ破断を利用する例がある。

関連規格と表示

枠組みにUL 248系、IEC小形ヒューズ規格、JISの電気用品基準がある。ラベルに定格電流・電圧、動作クラス、遮断容量、承認マークが示される。

用語のメモ

ヒューズリンク、速断形(F)、時間遅れ形(T)、遮断容量、I²t、ディレーティングはメーカー資料で厳密に定義される。温度ヒューズは過熱時に開路する素子で、過電流保護のヒューズとは用途も試験法も異なる。