パイプライン型A-D変換器
パイプライン型A-D変換器は、段階的なサブ変換と増幅を繰り返すことで高速動作と高分解能を両立するアナログ-デジタル変換器である。一般的な逐次比較型に比べて変換時間を短縮でき、フラッシュ型ほど素子数を増やさずに高精度化が期待できる。映像処理や通信機器などの高速信号を扱う分野で広く用いられ、近年では高周波アプリケーションの需要拡大とともに重要性を増している。
基本構造
複数のステージを直列に配置し、それぞれがサブA-D変換と残差信号の増幅を行う構成がパイプライン型A-D変換器の特徴である。各ステージでは入力信号を粗く量子化した後に誤差成分を残差信号として抽出し、次段へ送り出す。これを繰り返すことで最終的なデジタル値を得る仕組みである。段階的に精度を上げる設計により、1ステージあたりの分解能を低く抑えつつ全体として高精度化を実現できるメリットがある。
TechON: 第3回:【A-D変換器】高分解能で低消費電力のパイプライン型が登場へ : 超音波診断装置やX線CT装置といった医療機器で,多用されているA-D変換器IC。ここへきて,診断の精度を高めるなどの目的から,より分解… http://bit.ly/mUMJcN
— uneune_IT (@uneune777) May 12, 2011
動作原理
最初のステージでは入力アナログ信号を部分的にデジタル化し、対応するアナログ値との差分を増幅して次段に渡す。続くステージはその残差信号を新たな入力とみなし、さらに細かいビット精度で量子化と誤差補正を行う。こうしたパイプライン処理を並列的に進行させることで、各ステージが同時に異なる入力サンプルを処理できるため、単一入力からの変換スループットを高められるのである。
高速化の要因
一般的な逐次比較型A-D変換器では、複数ビットの比較を連続して行うため総合的な変換時間が長くなる傾向がある。一方、パイプライン型A-D変換器はステージごとにビット分解能を割り当て、同時に複数のサンプルを処理するため、高いスループットを獲得しやすいとされている。さらにフラッシュ型のように大量のコンパレータを用意しなくても済むため、回路規模や消費電力を抑えつつ高速変換を実現できる点が注目される。
注意点と補正技術
各ステージの誤差やオフセット、ゲイン誤差などを抑えるためには精密な設計が求められる。パイプライン型A-D変換器はサンプリングごとに残差信号を高ゲインで増幅するため、増幅器の線形性やノイズ特性が全体の分解能に影響を与える。これを補うためにデジタル補正技術が用いられ、各ステージで生じた量子化誤差を最終出力で統合的に補正する方式が一般的である。近年は細線化によるアナログ特性の変動にも対応するため、キャリブレーション機能を実装する事例が増えている。
応用分野
パイプライン型A-D変換器は、高速かつ高精度が必要な用途で活躍の場を広げている。たとえば映像処理分野では高速サンプリングが必要なHDMI受信や画像センサ読み出しに利用され、また通信機器ではRF信号のIF帯域をデジタル化するフロントエンドとして用いられる。さらに計測器やレーダシステム、医学用イメージング装置など、高解像度と高速性を両立させたいあらゆる分野で使用されている。
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