バーストモード|軽負荷時の効率向上とEMI低減

バーストモード

バーストモードとは、スイッチング電源やインバータが軽負荷時にスイッチングパルスを束(バースト)として発生させ、その合間を停止(アイドル)することで平均スイッチング周波数と損失を下げる制御方式である。一般にPWMの周期スキップ(skip-cycle)やPFM(Pulse Frequency Modulation)の一形態として実装され、出力電圧やインダクタ電流にヒステリシスを設けて「動作区間」と「休止区間」を往復する。軽負荷効率の改善、待機電力の低減に有効である一方、リップル増加、可聴ノイズ、低周波側にエネルギが寄るEMIなどの副作用を持つ。主な適用はAC-DCフライバック、DC-DC降圧/昇降圧、LEDドライバ、低負荷時のPFCなどである。

基本動作とヒステリシス制御

制御は通常、出力電圧の上下しきい値(VH/VL)またはインダクタ電流の上限/下限を用いる。VがVLを下回るとアクティブ期間が開始しPWM/QR等でエネルギを補給、VがVHに達するとスイッチングを停止してアイドル期間に入る。これを周期Tburstで繰り返す。簡易には、アイドル中の出力リップルは ΔVout ≈ (Iload/Cout)·Tidle + Istep·ESR で見積もれる。DCM領域で用いられることが多く、平均スイッチング損失Psw,avgがバーストデューティDb=tactive/Tburstに比例して低減する。

適用例と利点

  • AC-DCフライバック:テレビや充電器の待機電力削減。ErPなどの省エネ規制対応。
  • DC-DC降圧/昇降圧:IoT/バッテリ機器での軽負荷効率改善、発熱低減。
  • PFC:数W以下の負荷でのスイッチング損失抑制(ライン整流後の補助電源と協調)。
  • LEDドライバ:待機や微小調光域の消費低減(ただしフリッカ配慮が必須)。

利点は主にスイッチング回数の削減によるPswとゲートドライブ損の減少、制御ICのIbias削減と相まる総合効率の向上である。特にPoutが小さい領域では定常損の寄与が支配的となるため、バーストモードの効果が大きい。

設計パラメータと目安

  1. ヒステリシス幅:ΔV=VH−VLはVoutの0.5〜2%程度を目安。広いほどスイッチ回数は減るがリップルと可聴ノイズが増える。
  2. バースト周波数:fburst=1/Tburst。20 kHz未満は可聴域に入りやすい。データシートの「audible noise free burst」機能の有無を確認。
  3. 最小負荷/プリロード:補助巻線供給のICがアイドル中にUVLOへ落ちないようIminを確保。必要に応じ数mAのプリロードを設ける。
  4. 遷移応答:バースト終了→連続PWMへの復帰遅延texitが負荷ステップ仕様を満たすこと。
  5. 効率モデル:η≈Pout/(Pout+Db·Psw,full+Pcond+Pbias)。Ibias低減は重要。

EMIと可聴ノイズの抑制

バーストモードでは低周波のエンベロープ成分が生じ、CISPR系のQP測定でピークが強調される場合がある。対策として、(1)バースト周波数の拡散(周波数ディザリング)、(2)アクティブ期間の占有率制限でエネルギ集中を回避、(3)スナバやRCダンパでdv/dt低減、(4)コモン/ディファレンシャル両方のフィルタ最適化、(5)レイアウトでスイッチング電流ループの最小化、(6)磁性体固定や含浸で音響振動を抑える、などがある。LEDや表示用負荷ではフリッカ指数・Pstを評価し、fburstとリップルの相乗影響を確認する。

制御方式のバリエーション

代表的実装は、(a)FBコンパレータでヒステリシスを持たせるPWMスキップ、(b)一定オン時間/オフ時間のPFM、(c)QRフライバックのバレー検出と組み合わせたグリーンモード、(d)デジタル制御ICによる状態機械化などである。さらに、音域回避のためfburstを温度/負荷でシフトさせるダイナミックバースト、アイドル中に間欠的に短パルスを入れて補助電源電圧を維持する方式もある。

保護・安全動作

OVP/UVLO/OCP/OTPはバーストモードの休止中にも安定に機能する必要がある。特にOVPはVHより十分高く、かつ再起動時のオーバーシュートに耐える設定とする。アイドルが長いと補助巻線の電圧が下がりICがリセット→発振に陥るため、供給コンデンサとリーク経路を見直す。短絡時はバーストを禁止し、周期的ソフトスタートや打ち切りタイマで熱ストレスを避ける。

評価手順の実務要点

  • オシロで出力電圧とスイッチ波形を同時観測し、バーストのエンベロープとfburstを確認。
  • 可聴ノイズはA特性、0.5 m基準で主観・客観の両面評価。
  • EMIは伝導/放射とも軽負荷条件で再確認。QPとAVGの乖離に注意。
  • 温度ドリフトでヒステリシスが変化しないか、基準抵抗の温度係数を吟味。
  • システム側の最小負荷条件(待機時のマイコンやセンサ電流)を設計初期に確定。

以上のように、バーストモードは軽負荷効率と待機電力の両立に強力である一方、可聴域・低周波EMI・補助電源安定度といった実装課題を伴う。ヒステリシス幅、fburst、Ibias、レイアウト/フィルタ最適化を総合的に設計し、規格試験は軽負荷条件でも網羅的に行うことが肝要である。