バッテリーモジュール|セル構成・熱管理・保護の要

バッテリーモジュール

バッテリーモジュールとは、複数のセルを直列・並列に組み合わせ、機械的保護、熱マネジメント、計測・保護回路を一体化した中間ユニットである。EVやハイブリッド車、定置型蓄電池では、セル→バッテリーモジュール→パックの階層で構成され、エネルギー密度・出力密度・安全性・保守性の最適点を取りながらスケールアップする。筐体(ケース)、バスバー、ヒューズ、温度センサ、セル監視回路、熱伝導材などを備え、輸送・整備・リサイクルの単位としても扱いやすい。

構成要素と役割

バッテリーモジュールは、選別済みセル群、集電・保護部品、監視基板、機械構造で成る。セルは容量・内部抵抗のばらつきを抑えて組み、バスバーやフレキで直並列接続する。過電流保護のためのヒューズや電流センサ、温度センサはBMS連携で監視される。筐体は絶縁・耐振・放熱を担い、発熱源であるセルと周囲の熱抵抗を下げるためにギャップフィラーやサーマルパッドを配置する。

セル構成と直並列設計

  • 直列(S):モジュール出力電圧を規定。例:3.7Vセルを12Sで約44V。
  • 並列(P):電流容量と出力を増強。2Pなら実効容量は2倍。
  • 組合せ例:12S2Pは電圧・容量のバランスが取りやすく、複数モジュール直列で400V/800V系に拡張する。
  • ばらつき対策:セルのグレーディング、初期バランス充電、接続抵抗の均一化が重要。

熱設計と安全

熱暴走(サーマルランアウェイ)拡大を抑えるには、セル間の熱伝導パス設計と放熱経路が要となる。空冷は構造が簡易で保守性が高い。液冷は高負荷時の温度上昇を抑えやすい。相変化材(PCM)や高熱伝導パッドで温度勾配を低減し、ベントガスを逃がすリリーフや難燃仕切りで隣接セルへの伝播を遅延させる。筐体は火炎・ガス圧対策、IP等級、絶縁クリアランス確保を考慮する。

監視・制御(BMS連携)

バッテリーモジュールにはセル監視ユニット(CMU/BMU)を実装し、各セル電圧・温度を計測する。BMSはSOC(充電率)・SOH(健全度)推定、過充電・過放電・過温の保護、受入れ可能電流(充放電リミット)の演算を行う。バランシングは受動(抵抗放熱)または能動(電荷移送)を用い、CAN/LIN/Ethernetで上位ECUに状態を通知、機能安全はISO 26262に沿ってASIL水準を設計する。

電気性能と評価指標

主要指標は公称電圧、定格容量、出力密度、エネルギー密度、内部抵抗(DCIR)、温度依存性、サイクル寿命・カレンダー寿命である。充放電レート(Cレート)に応じて電圧降下と発熱が増すため、試験はIEC/JISに準拠した温度・SOC条件で行う。許容リップル、自己放電、効率(クーロン効率・エネルギー効率)もパワートレインや蓄電用途の適合性を左右する。

製造と品質管理

製造ではセル受入検査、グレーディング、レーザー溶接や超音波溶接による接続、ギャップ充填、リーク試験、絶縁耐力試験、通電・EOLテストを行う。トレーサビリティのためセル・バスバー・基板・筐体のロット情報を一貫管理し、X線/CTによる内部欠陥検査や熱画像によるホットスポット検出で不良を早期に排除する。輸送前にはUN 38.3に適合する試験合格が前提となる。

設計要件と機械構造

バッテリーモジュール筐体はアルミ押出・鋼板・樹脂複合などを用い、NVH、耐振動、落下・衝突荷重に耐えるようCAEで最適化する。絶縁クリアランス/沿面距離を確保し、サービス性のためにコネクタ位置、ケーブル取り回し、メンテナンスアクセスを確保する。高圧インタフェースは色別(オレンジ)で誤接続防止、誤挿入防止形状、着脱サイクル耐久も評価する。

用途とシステムアーキテクチャ

EV/HEV/PHEVでは複数モジュールを直列接続してシステム電圧を決定し、パック内で冷却プレートやハーネス、メインBMS、コンタクタ群と統合する。定置型蓄電池(ESS)やUPSでは冗長性・保守性を重視し、ラッキングで増設可能な設計とする。スケーラブルなバッテリーモジュールは製品ラインナップ共通化と在庫最適化にも寄与する。

セル化学の選択

代表的な化学系はNMC、NCA、LFP、LMFPなどである。要求出力・エネルギー密度、熱安定性、コスト、低温性能、充電受入性、寿命、資源調達性を指標化し、用途ごとに最適点を設計する。セル寸法(円筒/角形/ラミネート)に応じて熱設計と固定方法が変わり、モジュールの体積効率や整備性に影響する。

安全規格と認証

輸送はUN 38.3、車載はUL 2580やIEC 62660、定置はUL 1973などが参照される。機能安全はISO 26262、充電連携は規格インタフェースとの互換性が前提となる。設計段階でFMEA/FTAを実施し、単一故障時のフェイルセーフ、熱暴走抑制、過電流・短絡保護、誤組付け防止を織り込み、量産後はフィールドデータを活用して継続的に信頼性を改善する。

保守・リサイクルとライフサイクル

保守ではモジュール単位の交換性、診断データの読出し、均等化充電の運用が重要である。ライフエンドではセルの二次利用(ストレージ転用)と材料リサイクル(Ni、Co、Li、Cu、Alの回収)を見据え、解体容易性やラベル・緊急時手順を設計初期から定義する。これによりバッテリーモジュールの全ライフサイクルで安全・環境・コストの均衡を保てる。